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Infinity編
10話 ※
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ついでに昨日のことも聞こうと思っていたが、どうせ聞いても偉そうなことしか返ってこないだろう。
ため息つくと、寛人はここから出ようと思った。菓子のことは一応わかった。何故バレたのかはわからないが、納得いかないものの自分がわかりやすいからという貫士の言葉を受け入れるしかない。どのみちもう貫士から食べ物は受け取るつもりない。食べない。
「待てよ」
だが出て行こうとする前に腕をつかまれてしまった。
「離せ」
「やだね。まぁお前も次の仕事夜だろ? この楽屋はまだいても確か問題ねぇんだからゆっくりしてけや」
「嫌に決まってんだろ……」
「何で。つか触り心地確かめさせろよ」
「はぁっ? もっと嫌だわ! つかお前何考えてんの? 俺とか触って何が楽しいわけ」
本気で嫌がりつつも腕はまだ振りほどけていない。苛立たしく貫士を見るも、相変わらず飄々とした様子がさらに寛人のイライラ感を募らせた。
「それにお前、彼女いんだろが……。彼女いるくせに男に妙なことやらかしてんじゃねぇよ!」
「あ? 何の話だ」
寛人の言葉に貫士はポカンとした顔になった。演技ではなく素、といった風にしか見えない。
この馬鹿は昨夜のことまた忘れてんのか?
寛人はますます苛つく気持ちを少しでも和らげるため、一度深く深呼吸をした。
「昨日の夜、お前のベッドにいた女のことだよ」
「は? あー……、あいつとはもうつき合ってねぇ」
「なおさら悪いわ! つき合ってもねぇ女連れ込んでんじゃねぇよ。しかも何で俺引っ張ってった上に女追い返してんだよ」
思わず、実は聞きたかったことが口に出ていた。しまった、とは思ったものの多少すっきりした。
「だいぶ前に円満に別れてんだよ。なのにあの女、カードキーだってのに合鍵持ってやがった。俺が疲れて帰ったら、そこにいやがったんだよ。ムカついてあいつが持ってたカードキーは折ってやったけどな。追い返そうとしたけど出てくどころか勝手にベッド入りやがってよ」
よくそういう女とつき合うよなと、とりあえず寛人は引いたように思った。というか相手が未練しかない様子に、どこが円満だよと突っ込みたい。
「めちゃくちゃ俺は疲れてたんだよ。もううぜぇし面倒だからこのままそいつ無視して寝るかと思ってたらお前が来たんだよな」
「……上半身裸だったけど」
「俺は元々ベッドで寝るとき服着ねえ。お前引っ張ってったらさすがにあいつもギョッとなったんだろ。出てってくれてマジよかったわ。さすがに女に暴力ふるえねぇしな。キッチンに俺のカードキー置いたままなのが気になったけどあの後お前が使ったってことはもうあいつ、鍵持ってねぇし来ねえだろ」
何だそれ……。
寛人はとてつもなく微妙な気持ちになった。色々意味わからなさすぎて仕事中にまでぼんやりしてしまったというのに、実際はとてつもなくしょうもない内容だった。
「馬鹿馬鹿しい……」
「なら何で笑ってんだよ」
「は? 笑ってねぇけど?」
「嘘ついてんじゃねぇよ、顔が崩れてんだろが」
「笑ってねぇし、崩れてるとか言ってんじゃねぇよ」
「笑ってんだろが」
「ああもう、うざいな! だったらてめぇの馬鹿馬鹿しさに勝手に苦笑でもしてたんだろ」
「は。まぁいいけどよ」
まあいい、と言いながら貫士は寛人の腕をつかんだまま強引に引っ張ってきた。
「ってぇな、何すんだよ……!」
「俺、今ローション持ってんだよ」
「……はぁ?」
こいつ何言ってんだと寛人は微妙な顔を貫士に向けた。だが気にした様子もなく貫士はニヤリと笑い、引っ張った寛人をソファーへ押し倒してきた。
「おい……おま、ちょ、何……」
「肉ついたか触んのとこないだの続き、一度に済ませられんだろ?」
「済ませる必要ねぇもんばかりだろうが……っ」
思い切り蹴り上げようとしたが無駄だった。その前にのし掛かられ、また抵抗らしい抵抗できない。
見た目は厳ついらしいが、基本的に寛人は無関心な性格のため喧嘩慣れは全くしていない。だが喧嘩の一つや二つ、三つや四つしておくのだったと今ほど力一杯思ったことはない。慣れていたら貫士に対してもあしらえただろう。決して力で負けているとは思わないが、どうにも貫士のように上手く体を使えない。
「まぁ、気を楽にしとけよ。っつっても俺、男は初めてだけどよ」
「今の言葉聞いて楽になるやついんのかよっ?」
「濡らしゃどうとでもなんだろ」
「何をだよ……っ?」
思わず声が裏返った。貫士が何考えているのか本当にわからない、がわかりたくもない。とにかく今は貞操の危機から逃れたかった。
つか貞操の危機って何だよ……何で俺がそんな危機に陥る羽目になってんだよそれこそ意味わかんねぇよ……!
あっという間に尻を丸出しにされ、冷たいローションをぶっかけられた。
「何だよ勃ってねぇな」
「当たり前だろうが……! むしろ何で勃つと思えんだよっ?」
「でもぬるぬるして、これよくねぇ?」
貫士が濡らした状態の寛人のものに触れてきた。ぬるりと滑る感触に、思わず変な声が漏れそうになった。
「触んな……!」
「あ? 触んねぇままだとキツいのお前じゃね?」
「何の話だよ……だいたい勃ってねぇんだ、触んな……」
「別にいいけどよ。どのみちここじゃゆっくりできねぇしな」
馬鹿にしたように笑いながら、貫士はあろうことか今度は尻の穴に触れてきた。思わぬことにビクリと体が揺れた。
「びびってんの?」
「煩い、どこ触ろうとしてんだよ変態野郎……」
「前触んなっつっただろが」
「だからって何でケツなんだよっ? 触んな退けよ……!」
「こっちは言うこと聞いてやんねぇなぁ。触らねぇと入んねぇだろがよ」
何をっ?
何がっ?
ドン引きしながら貫士を睨む寛人の頭から血の気も引いていくのがわかった。
ため息つくと、寛人はここから出ようと思った。菓子のことは一応わかった。何故バレたのかはわからないが、納得いかないものの自分がわかりやすいからという貫士の言葉を受け入れるしかない。どのみちもう貫士から食べ物は受け取るつもりない。食べない。
「待てよ」
だが出て行こうとする前に腕をつかまれてしまった。
「離せ」
「やだね。まぁお前も次の仕事夜だろ? この楽屋はまだいても確か問題ねぇんだからゆっくりしてけや」
「嫌に決まってんだろ……」
「何で。つか触り心地確かめさせろよ」
「はぁっ? もっと嫌だわ! つかお前何考えてんの? 俺とか触って何が楽しいわけ」
本気で嫌がりつつも腕はまだ振りほどけていない。苛立たしく貫士を見るも、相変わらず飄々とした様子がさらに寛人のイライラ感を募らせた。
「それにお前、彼女いんだろが……。彼女いるくせに男に妙なことやらかしてんじゃねぇよ!」
「あ? 何の話だ」
寛人の言葉に貫士はポカンとした顔になった。演技ではなく素、といった風にしか見えない。
この馬鹿は昨夜のことまた忘れてんのか?
寛人はますます苛つく気持ちを少しでも和らげるため、一度深く深呼吸をした。
「昨日の夜、お前のベッドにいた女のことだよ」
「は? あー……、あいつとはもうつき合ってねぇ」
「なおさら悪いわ! つき合ってもねぇ女連れ込んでんじゃねぇよ。しかも何で俺引っ張ってった上に女追い返してんだよ」
思わず、実は聞きたかったことが口に出ていた。しまった、とは思ったものの多少すっきりした。
「だいぶ前に円満に別れてんだよ。なのにあの女、カードキーだってのに合鍵持ってやがった。俺が疲れて帰ったら、そこにいやがったんだよ。ムカついてあいつが持ってたカードキーは折ってやったけどな。追い返そうとしたけど出てくどころか勝手にベッド入りやがってよ」
よくそういう女とつき合うよなと、とりあえず寛人は引いたように思った。というか相手が未練しかない様子に、どこが円満だよと突っ込みたい。
「めちゃくちゃ俺は疲れてたんだよ。もううぜぇし面倒だからこのままそいつ無視して寝るかと思ってたらお前が来たんだよな」
「……上半身裸だったけど」
「俺は元々ベッドで寝るとき服着ねえ。お前引っ張ってったらさすがにあいつもギョッとなったんだろ。出てってくれてマジよかったわ。さすがに女に暴力ふるえねぇしな。キッチンに俺のカードキー置いたままなのが気になったけどあの後お前が使ったってことはもうあいつ、鍵持ってねぇし来ねえだろ」
何だそれ……。
寛人はとてつもなく微妙な気持ちになった。色々意味わからなさすぎて仕事中にまでぼんやりしてしまったというのに、実際はとてつもなくしょうもない内容だった。
「馬鹿馬鹿しい……」
「なら何で笑ってんだよ」
「は? 笑ってねぇけど?」
「嘘ついてんじゃねぇよ、顔が崩れてんだろが」
「笑ってねぇし、崩れてるとか言ってんじゃねぇよ」
「笑ってんだろが」
「ああもう、うざいな! だったらてめぇの馬鹿馬鹿しさに勝手に苦笑でもしてたんだろ」
「は。まぁいいけどよ」
まあいい、と言いながら貫士は寛人の腕をつかんだまま強引に引っ張ってきた。
「ってぇな、何すんだよ……!」
「俺、今ローション持ってんだよ」
「……はぁ?」
こいつ何言ってんだと寛人は微妙な顔を貫士に向けた。だが気にした様子もなく貫士はニヤリと笑い、引っ張った寛人をソファーへ押し倒してきた。
「おい……おま、ちょ、何……」
「肉ついたか触んのとこないだの続き、一度に済ませられんだろ?」
「済ませる必要ねぇもんばかりだろうが……っ」
思い切り蹴り上げようとしたが無駄だった。その前にのし掛かられ、また抵抗らしい抵抗できない。
見た目は厳ついらしいが、基本的に寛人は無関心な性格のため喧嘩慣れは全くしていない。だが喧嘩の一つや二つ、三つや四つしておくのだったと今ほど力一杯思ったことはない。慣れていたら貫士に対してもあしらえただろう。決して力で負けているとは思わないが、どうにも貫士のように上手く体を使えない。
「まぁ、気を楽にしとけよ。っつっても俺、男は初めてだけどよ」
「今の言葉聞いて楽になるやついんのかよっ?」
「濡らしゃどうとでもなんだろ」
「何をだよ……っ?」
思わず声が裏返った。貫士が何考えているのか本当にわからない、がわかりたくもない。とにかく今は貞操の危機から逃れたかった。
つか貞操の危機って何だよ……何で俺がそんな危機に陥る羽目になってんだよそれこそ意味わかんねぇよ……!
あっという間に尻を丸出しにされ、冷たいローションをぶっかけられた。
「何だよ勃ってねぇな」
「当たり前だろうが……! むしろ何で勃つと思えんだよっ?」
「でもぬるぬるして、これよくねぇ?」
貫士が濡らした状態の寛人のものに触れてきた。ぬるりと滑る感触に、思わず変な声が漏れそうになった。
「触んな……!」
「あ? 触んねぇままだとキツいのお前じゃね?」
「何の話だよ……だいたい勃ってねぇんだ、触んな……」
「別にいいけどよ。どのみちここじゃゆっくりできねぇしな」
馬鹿にしたように笑いながら、貫士はあろうことか今度は尻の穴に触れてきた。思わぬことにビクリと体が揺れた。
「びびってんの?」
「煩い、どこ触ろうとしてんだよ変態野郎……」
「前触んなっつっただろが」
「だからって何でケツなんだよっ? 触んな退けよ……!」
「こっちは言うこと聞いてやんねぇなぁ。触らねぇと入んねぇだろがよ」
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