ドラマのような恋を

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Infinity編

13話

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 皆、それぞれ音楽関係以外の仕事がある。例えば基希で言うと、情報番組に出ることが多い。とある朝の情報番組には曜日コメンテーターとして出演しているので仕事がある時にはメイクなどをする時間も必要なため午前三時から四時前には現場入りしている。そこから打ち合わせや確認作業に入り、その後生放送が始まるらしい。約二時間ほど放送された後、翌日や次のスケジュール確認などをしてからようやく終了となる。
 それで終わればまだ休む時間もあるが、その後も他の番組の出演やインタビュー、撮影などがある。結局仕事が終わるのは夜になることも多々で、ほぼ一日起きていることになる。
 他のメンバーとて似たようなものだ。凜太はバラエティー番組に出ることが多く、大阪と東京を往復してテレビ収録することもたまにある。新幹線を利用しているようだが、ほぼ睡眠に費やしているらしい。
 葵や貫士は俳優の仕事もよく受けているのもあり、時期によればあまり会わないこともある。一クールの撮影中、拘束されるのは早朝から深夜に及ぶこともある。
 この間、貫士が死にそうな勢いで眠そうだったのもそういった理由があるのは寛人にもわかる。
 皆、過酷なスケジュールの合間にダンスレッスンや発声レッスンなど受けたり、音楽だけではなく顔でも売っている自覚はあるので美容にも気をつけ自己管理やコントロールをしっかりしなければならない。
 メンバーが全員集まっている時などに好き勝手だれているのもあって気楽そうに見えるかもしれないが、芸能人としての仕事は楽ではない。
 寛人としては音楽だけをやっていられればよかった。葵などはミュージシャンというよりは本当に芸能人としての自覚があり、俳優業にも手を抜かずがんばっているが、寛人は元々音楽ができればそれでよかった。
 だが社長に「バンドオンリーは駄目」とかわいく言われ、容赦なくこきつかわれている。嫌だと抵抗するほど子どもでもないため、仕方ないながらも根は真面目なので日々しっかりこなしていた。
 寛人は無口で愛想もあまりない性格だが、それを売りにしてもらっているのもあり、そのままでいられてはいる。ついでに他のメンバーが他の芸能人と親しくつき合ったりもする中、ありがたくぼっちでいさせてもらえる。一般人だった頃の友人とは今でも一応つき合いはあるが、芸能界は面倒なので、できればここではぼっちでいたい。そんな性格なのもあってバラエティー番組に単体で出ることはないが、代わりにCM出演をやたらさせられる。
 ちなみに社長は年齢不詳の男だ。本人自体芸能界でやっていけそうな容姿をしているが「そういう才能はないんだよね」と表に出ることはない。
 とにかく基本的に皆それぞれ忙しい。葵が仕事の合間に基希によって勉強をさせられ、それでいてなお、つき合っている奏真に会おうとする気力は寛人にとって信じられないほどの行為だと思う。ある意味称賛に値する。
 だが本人に「よくそんな気力あるな」と微妙な顔を向ければ鼻で笑われた。

「は。童貞にはわかんねぇよ」
「は? 何でそこでそれが出てくんだよ」
「少しでも会いてぇ気持ち、わかんねーんだろ」
「……結局は性欲かよ」
「ちげぇわ。つかんなもん、奏真だから性欲も馬鹿みてぇに湧くんだっつーの。だからそーゆーことがわかんねーんだろっつってんだよ」

 一つ年下の男に馬鹿にされたが、言い返す術はなかった。ただ、童貞云々はやはり関係ないように思う。
 後日何となく思い出して考えていたが、少なくとも貫士を見ていたらわかる。童貞は関係ない。貫士は多分十二分に経験豊富だろうが、誰かに会いたくて仕方ないと思っているところなど想像もつかない。

「つかカンジは人の気持ちとかまずどーでもよさそうだろ絶た、っふぐ」
「俺が何だって?」

 ぼそりと独り言呟いているところに何かを口に突っ込まれた。

「っあっつ! あっつ……!」

 味わう前にあまりの熱さに口から勢いよく出す。手のひらには未だに湯気の立つ肉まんが寛人の歯形がついた状態で乗っていた。

「てめ、この俺が入れてやったってのに何口から出してんだよ、きったねぇな」
「その前に火傷する……! つか俺に食い物突っ込むのやめろよクソ野郎……!」
「ああ? てめ、俺の親切無下にしてんじゃねーよ。だいたい渡しても食わねぇじゃねーか」
「は? 親切? 太らせようとしてるクソ野郎が何言ってんだ」
「太らせようとしてんじゃねーよ。触り心地よくしよーとしてるだけだろが」
「……死ね」
「語彙力ねーな。まぁとにかくあれだな、俺のこと考えてるんは仕方ねぇけど、ボーッとしてんじゃねぇ」

 てめぇのことなんぞ考えてねぇ、と言い返そうとして、意味は全く違うが考えていたことには違いないことに気づく。

「……っく」
「……ぶは。真面目かよ」
「うるせぇ……っつか何でお前がいるんだよ」
「はぁ? 事務所にいちゃわりーかよ」

 確かにここは事務所だった、と寛人はまた言葉を詰まらせた。それを見て貫士がまた馬鹿にしたように笑ってきた。
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