転生少女は憧れの騎士として生きたい

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2話

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「っぁ……」

 何か叫びかけてイーディスはその前に目を覚ました。変に心臓がどきどきしている。

「……う?」

 高熱による体力低下のせいか、それとも夢のせいだろうか。心臓だけでなく、頭がくらくらとして激しい混乱をきたしている。

「わ、たし……」
「お嬢様! お、お嬢様がお気づきになられました! 奥様! 旦那様! お嬢様が! お嬢様が!」

 ベッドのそばにいた若い女性が血相を変えて叫んでいる。これは誰だったか。

 看護師の──いや、違う、そう、ちがう。わたしなに言って──そう、わたしの侍女のサラじゃない。サラ・リアモルドでしょ、カンゴシってなに……。
 というか、わたしは、だれ?

 くらくらとする。

「お嬢様、よかった、目を覚まされて」

 叫んでいた女性が、いや、サラが涙目になりながら覗き込んでくる。

「あの」
「はい」
「わたしは、だれ?」
「……はい?」
「わたし……けいご? それともイーディス?」
「イ、イーディスお嬢様ですよ! あああああお嬢様が! お嬢様がぁぁ、高熱のせいでご記憶が! ああああ」

 目の前の女性の剣幕にぎょっとして、むしろ少し混乱が覚めた気がした。
 そう、イーディスは夢を見ていた。
 だが普通の夢ではない。多分、多分──
 あれは──前世、というものなのだろうか。
 全く知らない世界だった。おまけにイーディスはその中では大人の男性だった。状況的にあまり世間に溶け込めず本の世界に夢を見て、だがそれなりに現実を把握して自分の中で調整をとれる、十歳とは到底異なる大人だった。

 あの世界は、何?
 何、じゃない。あれは自分が生きていた世界。
 いや、あんな世界知らない。
 違う、あっちのほうが現実でこの世界のほうが本のような世界で──

 だが覚めた気でいた混乱がまた押し寄せてくる。多分まだ十歳のイーディスには過分な知識や経験だったのかもしれない。結局、せっかく目を覚ましたはずのイーディスは両親以上に多いに嘆き悲しむサラが見守る中、熱がぶり返してさらに二日ほど寝込んだ。
 その後ようやくイーディスは冷静になれた。

(やばい。おれ、知らない世界で幼女になってる……)

 前世が大人だった上に現世ではまだ十年しか生きていないからだろうか。わりと圭吾だった時の記憶に引きずられ気味ではある。とはいえ、実際にこの世界で生きているのはイーディスであることも把握している。
 鏡で自分の姿を改めて目の当たりにすると、イーディスは体を震わせた。なんだったら踊ってもいい。いや、というかもう走ればいいかもしれない。
 いきなり部屋の中で走り出したイーディスを、サラは驚いたように見てきた。しかし「病気が治って嬉しいんですね、お嬢様。私も嬉しいです」とすぐに涙目になって抱きしめてくる。ついどきどきしてしまい、一瞬病気まで持ち越しか? と焦ったが、どうやら単に女性に抱きつかれて嬉しかっただけのようだ。安心しつつも、今の自分は幼女なのだぞとイーディスは自分に言い聞かせる。
 サラはこげ茶色の髪に茶色い目をした綺麗な人で、十八歳くらいだろうか。前世では二十四歳で誰とも恋愛をしたことがなく死んでしまったのもあり、ついどきどきしてしまう。

(いやいや、めちゃくちゃ年上の女性にどきどきする幼女って駄目でしょ)

 おまけにとても可愛らしい顔をした幼女だ。前世では多分普通の容姿だったはずなので、よくやったこの世界の自分とイーディスは嬉しく思う。しかしせっかく可愛くても女性にどきどきしては台無しだろう。とはいえ男性相手に自分が恋心を抱けるとも思えない。見た目が上等なのはいいが、残念ながら現世でも恋愛を楽しむことは中々に難しそうだなと若干十歳で悟った。
 気を取り直してイーディスは図書室へ向かった。前世ではほぼ寝たきりだったというのに今はどこも悪くない健康な体であり、好きに走り回れるのだ。こうして好きに移動しながら好きな本を読み、ついでに今の世界を改めて把握したいと考えていた。
 分厚い本をなんとか自分で抱え持ち、図書室にある椅子に座って本をめくった。この世界の文字はどうやら読めるようだ。ただ、前世の記憶のおかげで難しい内容を理解することはできても、現実では十歳であるせいで読めない字のほうが多い。仕方なく辞書を片手に必死になって読み解いていった。どうしても調べられない字は侍女のサラに聞きに行く。勉強は前世で趣味の一つだったおかげで苦ではないが、聞きに行くたびにサラが「私のお嬢様がこんな難しい字を知りたがるなんてなんと素晴らしい」などといちいち絶賛してくるのには少々辟易とした。
 ある程度読むと、今度は自分の力を試したくなる。
 ここは剣も魔法もある世界だ。そして前世で読んでわくわくしていた話の中には異世界転生ものの話もあった。その話では主人公は大抵チート能力が備わっており、大活躍する。ハーレムを味わう主人公さえたくさんいた。

(ハーレムか……いいな)

 だが現在自分は幼女であり、その後例えいくら成長しても女から脱することはない。ということはハーレムはまず絶対味わえないということだ。女なら逆ハーレムというものが確かあったが、それこそ死んでも嫌だ。何が悲しくてたくさんの男にモテたりはべらせたりしなければならないのか。とてつもなくごめんこうむりたい。
 ということは確認すべきはチート能力だろう。
 イーディスは庭に出ると日差しを楽しみつつ、ころんと芝生に寝転がった。そして自分に可能そうな能力について考えてみた。
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