転生少女は憧れの騎士として生きたい

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14話

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 イーディスとて結婚は他人事ではないのだが、とりあえず両親は跡継ぎのテイマーと長女のエレンの結婚相手が決まっていることが心の支えとなっているのだろう。ランスやイーディスについてはとやかく言ってこない。理解のある両親でよかったと思う。
 とはいえこれでも十六歳を既に迎えているので実は、というかあえて言わなくともわかるようにイーディスも成人している。前世の感覚から言えばまだまだ女子高生、と浮かれ気味になりそうだが残念ながらいつ結婚してもおかしくない年齢ではある。
 自分でも未だに嘘みたいな話だと思うが、デビュタントも無事終了していたりする。もちろんエレンのように誰かとの婚約発表などないためイーディスにとっては最良なことに普通のデビュタントを迎えた。特に主役にもならず、目立たずさらりと終了したということだ。

「そんなことなかったわ。あなた、目立っていたもの」

 リーゼロッテからすればイーディスは目立っていたようだ。

「私が? まさか何かやらかしたっけ……家族の誰からも、特にエレンお姉さまから何もお叱りを受けなかったからてっきり無難、じゃなかった、えっと無事終えられたと思っていたのに」
「……何故目立っていたと聞いてすぐに何かやらかした方へ繋がるんでしょうね。そういう意味で目立ってたんじゃなくて。だってディー、あなたとても綺麗でしょ」

 ああ、なるほど、綺麗で目立っていたのかとイーディスは把握した。確かに自分は可愛いと我ながら思っている。デビュタントの時も初めて長いドレスを着て髪をアップにした。それまではずっと普段は下ろしていたからすごく新鮮だったし我ながら可愛い上に大人っぽいなと鏡に見入ったりもしていた。ただ高く結い上げたカールだらけの盛り髪に沢山の羽や花、宝石を飾るスタイルは正直二度としたくないとは思った。重いしふりふりした感じが性に合わない。だが髪を上げること自体はとても気に入ったイーディスは、それ以来高めの位置で結った髪を巻かずにそのまま垂らすスタイルを通している。これなら変に大人っぽくもならず畏まった様子でもない上にすっきりする。要は前世で言う「ポニーテール」だ。とても自分に似合っている気がする。学園でもイーディスの髪型を真似る令嬢を何人か見かけたので間違いなく似合っているはずだ。そうでないと真似をしようなどと思わないだろう。自分でもとても元気そうで可愛いとしみじみ思う。
 こうして自己採点が高いのは仕方がないだろう。だって前の自分を覚えているのだから。前の自分は多分至って平凡な男で、何より病魔に侵されて生き生きとはしていなかった。手足もガリガリだった。自分でも情けないなと思っていたし、せめて気持ちは明るくいたいとは思っていたが、見た目だけはどうしようもなかった。それに比べて今の、ただでさえ女の子という状態にプラス、自分の生き生きとした元気はつらつな健康美を見れば長らく鏡を見入りたいのも仕方がないと思う。
 卑下するタイプではないのでただうんうんと頷いていたらリーゼロッテに苦笑された。とはいえリーゼロッテはこんなイーディスの性格を百も承知だからだろう、何も言わず続けてきた。

「それだけじゃなくてレナード殿下がそれはもう、あなたに夢中だったから。それで目立たない訳ないでしょう」
「それはちょっと……嫌な目立ち方だな……」

 確かにそういえばレナードがそれこそ懐いている犬のようにまとわりついていた気がする。イーディスが微妙な顔をするとリーゼロッテがまた苦笑してきた。
 あの日のレナードは下手をするとイーディスよりテンションは高めだったかもしれない。一応第二王子として外見を取り繕うくらいの判断力はあったようで周りからは多分称賛の目で見られていただろうが、イーディスの前ではいつものことだが隠そうともしない。ナッツなどの苦手なものを隠すくらいならそういうところを隠せと言いたい。
 ダンスも真っ先に手を差し出してきていた。デビュタントでは大抵の令嬢やその親は最初に踊る人に拘るらしい。だがイーディスは別に拘りがないというかお付き合いそのものを遠慮したいだけに、むしろレナードは受け入れやすい。何故なら散々今までも婚約して欲しいと言われるたびに断っているからだが、あえてそれを告げてレナードのテンションを無理に下げることもないだろうと黙っていた。

「嬉しいな、イーディスが最初のダンスに僕を選んでくれて」
「選んだのではなく、あなたしか手を差し出してくれる人がいなかっただけだよ」
「何を言ってるの。君は自分をわかってないよ」
「大丈夫。私が可愛いことくらいわかってるから」
「うーん」

 レナードは少し困惑したように唸ると、静かな曲に合わせて寄り添ったイーディスの首元に顔を埋めてきた。

「……今、キスしたね?」
「……しましたね」
「私、許可したかな?」
「ごめんなさい……でもほら、首筋だし」

 お互い静かに言い合う。

「それの何が私の許可なくあなたが勝手にそんなことをした理由になるのかしら?」
「だって唇じゃないし、何よりイーディスは僕のだから。他の誰にも取られたくない」
「私は物じゃなくってよ」
「知ってるよ、僕の可愛い人だ」
「……はぁ。ほんとにあなたは。いい? 次勝手にそんなことしたら私、あなたと口利かないから」
「……もうしない」

 ダンス時のそんなやり取りを思い出し、イーディスは微妙な顔になってため息をついた。

「踊っている時のやり取りとかで注目を浴びたんではないよね、ロッテ?」
「踊っている時? 一体どんなダンスをなさったの?」
「ちょっとね……。何にせよ、レナードが目立ってたんであって私が目立ってたわけじゃないでしょ、それだと」
「そんなことないわ」
「あと確かにレナードは最近ますます目立っているようだし、他の令嬢たちが放っておかない感じなら私でもわかるよ」
「レナード殿下、とても華やかだものね。ディー、あなたそれは気にならないの?」
「だからそういう関係じゃないって言ってるでしょ。あの人は一つ年上だけど、それでも昔から変わらないよ、私の弟みたいな幼馴染、かな」

 昔はキスなんてしてこなかったけれどもね、と内心思いながらイーディスはニッコリ笑った。

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