転生少女は憧れの騎士として生きたい

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15話

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「私の名前でちゃんとお祝い、贈れていたかな」

 フォルに聞くと「ええ、イーディス様のお名前でのお祝いの品もちゃんとございました」と微笑んでくれた。ちなみにフォルは執事長であるボルの息子で、今はボルの跡を継ぐべく執事としてがんばってくれている。とはいえ確かもう三十一歳だっただろうか。完璧な執事となるには本人や父親曰くまだまだだそうだ。イーディスが小さな頃から既に執事としての貫禄しかなかったボルはずいぶん白髪が増えてきた。長兄のテイマーに聞いたことがあるが、ボルは王宮魔導騎士団に昔所属していたらしい。だが負傷して引退し、ディーン家の執事となったようだ。
 ところでどこへのお祝いかというと王宮だ。もちろん第一王子ジュードとイーディスの姉、エレンの結婚祝いではない。婚約してもう何年もなるというのにこの二人はちっとも進まないようだ。以前レナードが言っていた。

「兄上にさ、女性を上手くデートに誘うにはどうしたらいいですか? って聞いたんだ」
「あら、デートに誘いたい女性でもできたの?」
「君のことだよ……! もう……。でね、聞いたら『それを俺に聞くのか』って兄上がとても微妙な顔で言ってきてね」
「あー……」

 エレンをデートに誘っても度々断られるのだそうだ。ただ、何故かはイーディスも知っている。エレンが自分の妹、要はイーディスを何よりも優先するからだ。

「一部は私のせいでもあるよね……ごめんなさい」
「君が謝る必要なんてないよ。結局レディー・エレンを妹よりも夢中にできない兄上のせいだし、ずっと大好きなのに振り向いてもらえない僕のせいなのだから」
「……そこにあなたを入れてくる必要あったかしら」
「一応言っておこうかなと。王子揃って駄目だよねえ」

 実際のところ駄目どころか兄も弟も王子揃ってあまりの人気に、恋焦がれて涙を流したり策略を謀ったり、イーディスに妬かなくていいヤキモチを妬いたりする令嬢が列をなす勢いだ。エレンはジュードの正式な婚約者でありおまけに完璧な淑女でもあるためだろう、誰一人不満を言う者はさすがにいないようだが、イーディスはこの通りあまり淑女とも言い難いので仕方がないのだろう。それにイーディスとしては令嬢たちのどうやらやっかみらしい言動も、前世で読んだ小説みたいで楽しいし可愛いと思っている。
 ということでジュードとエレンの結婚祝いはまだ先になりそうだ。今回祝っているのは第三王子誕生の祝いだった。
 上の二人は母親が同じであり王の正妻である后の息子だが、第三王子は別の妃から産まれた。それでもめでたいことに違いはないため、今は国をあげてのお祝いムードのようだ。城下町でもどうやら楽しそうな祭りが行われているらしい。もちろん兄姉に「行きたい」と言っても「危険だ」と返ってくるのは百も承知なのでイーディスはレナードに声をかけている。レナードも初めは「君を危ない目に合わせたくない」的なことを言っていたが「あなたと一緒なら危ないわけないでしょう」と言えばだんだんその気になってくれた。
 王子こそ危ない目に合わせてはいけないので、レナードを誘ったとバレても結局親や兄姉に叱られそうだが、町の住民に溶け込めば人の大勢集まるお祭りであっても危険なことはまずないだろう。あとはレナードの側近であるイーディスの兄、ランスの目をくらませるだけだが、普段から剣や乗馬の稽古を二人で一緒にしているためこれはわりと難なくできそうだ。

「よかった! フォル、よろしくね。ではサラ、部屋に戻っていつものように稽古着に着替えるの手伝って」
「は、はい、お嬢様」

 侍女のサラは少し落ち着きがない様子でついてきた。それも仕方がないのかもしれない。サラにだけは「レナードと二人で庶民の恰好をしてお祭りに行くんだ」と打ち明けているからだ。

「お嬢様、やはり危ないのでは」
「大丈夫だよサラ。弟みたいな子だけどレナードはあれでもかなり優秀な剣士でもあるし魔法だって得意みたいだし。それにサラがちゃんと整えてくれたら絶対私、庶民の中に溶け込めるよ」
「お嬢様の輝きがそんなことくらいで薄まるとは思えませんが……がんばります」

 小さな頃から絶対にイーディスの味方をしてくれるサラはもう二十四歳になっている。ランスの従者であるダリーは確か二十一歳だっただろうか。相変わらずサラのことが好きで、最近ようやくサラもまんざらではない様子なのでエレンよりも先に結婚のお祝いを贈ることになるかもしれない。ついでに今日はサリーに言われ、ダリーはランスをひたすら引き留めてくれるようだ。きっとうまくやってくれるだろうしレナードといつものように会った後は上手く屋敷を抜けられるだろう。
 サラに手伝ってもらい、イーディスはまず膝上までの靴下を履いた。膝の下で細いリボンを結ぶ。結んでもらいながら(これっていわゆるガーターベルトの代わりなのかな)などと想像してニヤニヤしてしまった。そしてシフトドレスというウエストを絞らないリネンで作られた緩やかな白いワンピースに着替えた。多分前世でなら可愛らしいネグリジェになったのではないだろうか。その上からステイズを付ける。コルセットなのだが、イーディスたちが普段付けるようなウエストを殺してやろうかといった勢いで締め付けるものと違ってどちらかといえば胸を守るような感じがする。編み上げるようにたくさんの穴に紐を通してくれているサラに「胸当てみたいじゃない? このまま戦えそう」などと言って「絶対にやめてください」と返された。
 その後ペティコートを上から被って腰に巻き付けるようにして固定していく。この時点ですでに何となく可愛い。前世でのドイツかどこかの民族衣装ディアンドルを思い出させてくる。前開きで襟ぐりの深い短い袖なしのボディスに同じく襟を深くくったブラウス、踝までを覆うスカート、エプロンといった恰好をネットやテレビで見たことのある圭吾としてはその格好をとても可愛いと思っていた。特に胸元が。

「……残念ながらこれは胸の空いたボディスじゃないけど」
「何をおっしゃってるんですっ? お嬢様にそんな下品な恰好は絶対にさせませんからね。夜会じゃあるまいし」
「あ、ち、違うの。ちょっとした思い出だから気にしないで」
「何の思い出だというんです……」
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