転生少女は憧れの騎士として生きたい

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18話

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 あの時に何が不審だったのかと誰かに聞かれても、これといって明確な理由は説明できなかったと思う。ただ、そこにその馬車があることに何となく違和感を覚えたと言うのだろうか。とはいえ実際に何か怪しいことをしているのを目の当たりにした訳ではない。イーディスとレナードにできたことは、近くにいた警備の者に「念のため警戒しておいて欲しい」と伝えることくらいだった。
 イーディスは町まで迎えの馬車に来てもらうことになっていたため、レナードとはそのまま町で別れた。レナードとしてはわざわざディーン家の馬車を呼ばなくとも家まで送るのに、だそうだがそこまでしてもらうのも悪い。ただ、そう言えば「悪いどころか僕がそうしたかったのに!」とため息をつかれた。
 ディーン家の馬車に乗り、走行中外を見ていると気になる店を見つけて、イーディスはとめて欲しいと従者に頼んだ。

「ごめんね。ちょっとあの店を見てきたいの。少しだけ待っててもらってもいい?」
「もちろんです、お嬢様。よろしければ私が店まで付き添いますが」
「あなたにそんな仕事までさせられないよ。大丈夫。すぐそこだし危なくないよ。ここで待ってて。それにもし買いたいものが見つかってもそんなに荷物にはならないだろうしね」

 普通ならば誰も付き添わせずに外を歩くなんて由緒正しい令嬢としてもってのほかなのだろうが、目と鼻の先という距離でわざわざ誰かを呼びつけるほうがどうなのかとイーディスとしてはつい思ってしまう。それもこれもなまじ前世の記憶があるからなのだろうが、一人でうろうろしていたとバレたらまたエレンに優しくではあるが、叱られそうだ。
 苦笑しながら店へ向かい、店内を満喫した。自分の屋敷にいくらでもあるだろうが、とても綺麗な細工がされたケーキサーバーを見つけたのでとりあえずそれだけ買う。
 お気に入りのマイ道具がまた一つ増えた、とホクホクとしながらまた今度ゆっくりと見に来ようと考えた。待ってもらっている馬車へ戻る途中、ふと先ほど気になっていた馬車をまた見かけた気がした。先ほどの場所から移動していることになるが多分間違いない。
 どうしても気になり、イーディスはそっとその馬車に近づいた。そしてこっそり様子を窺っていると、どこからか赤子を抱えた女性がやってきた。そして馬車の中の男性に見せている。女性は貴族に仕える侍女のような感じに見えるし男性もどこかの貴族風なのでおそらくは赤子の父親といったところだろうか。普通に考えると母親から預かってきた赤子を父親に預ける使用人といった感じなのかもしれない。
 だがどうにもしっくりいかない。女のどこかおどおどとした表情や、慈しむような雰囲気が感じられない男──やはり絶対に何かおかしい。
 確信がある訳ではないし、ここで自分一人が突っ込むのはあまりに無鉄砲過ぎる。とりあえずこの町の衛兵に伝えたほうがいいかもしれない、とイーディスはこの場からこっそり立ち去ろうとした。
 だが背後から誰かに襲われた。強く殴られるような衝撃を受けた後、イーディスは意識を手放した。



 一方、王宮内では密かに騒ぎになっていた。
 レナードが戻った時点でバタバタとして落ち着きのない雰囲気がそこら中に漂っている。

「何かあったのか」

 側近であるランスはイーディスとの買い物の間も近くに控えていたためにレナードと同じく事情を知らない。とりあえず部屋に戻り、手などを洗うための水を持ってきたメイドにレナードは聞いた。

「それが……先ほどからレリアード殿下とその侍女の姿が見当たらなくて……」
「えっ?」

 ある程度の年齢になると同性の側近がつくが、赤子の時は面倒が見やすいであろう女性を側につけている。その侍女ともに見当たらないらしい。

「散歩をしているとかでもなくて?」
「はい。もちろんご存じでしょうが、レリアード殿下の身の回りでもスケジュール通りに動きます。そんな予定はございませんでしたし、それでも一応念のため庭園なども今くまなく探しているようではあるのですが……」
「それはちょっと深刻だね……」

 メイドが去った後、レナードはランスを連れて王の元へ向かった。だがやはり何も新しい情報は入ってきていないようだ。

「……そういえば」

 ふと、レナードは先ほどイーディスと共に見かけた、これといって何かあったわけではないが気になる馬車があったのを思い出す。少しでも不審なものは調べるに限るだろう。レリアードは王位継承権第一位であるだけでなく、レナードの大切な弟でもある。
 現王である父親やその側近、兄であるジュードにもその話を告げ、不審な馬車の捜索が即開始された。だがとりあえずの報告は早かった。その馬車は既に離れた後のようだった。
 そちらの馬車についても念のため調べを続けさせながら、レリアードの捜索は続けられた。ただし事が事だけに大っぴらにはできない。外に漏れないよう緘口令を敷いて秘密裏に捜索された。

「レリアード……一体」
「レナード、お前はどう思う?」

 項垂れるレナードにジュードが静かな声で問いかけてきた。顔を上げ、レナードは少しジュードを見る。

「……、……申し上げにくいですが……多分兄上を支持している派の貴族が仕掛けたことではないかと僕は何となく思っています」
「奇遇だな、俺もそう思う。こんな王宮で簡単に王子が行方不明になるはずがない。いくら平和でもそこまで警備も緩くない。多分綿密な計画が立てられていたんじゃないかと思うんだ。不審な馬車はかなり怪しいが、たまたま君たちが馬車を見かけて覚えていただけで普通町の住民ならば貴族の馬車なんてどれも同じだろうし見かけても近寄らないに越したことはないくらいにしか思わないだろうしな」
「……でも、もし本当にそうなら……レリアードの命が危ない」

 レナードは絞り出すように口にした。
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