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ガブリエルのヒント
しおりを挟む「うーむ」
屋敷へと戻り、アリスから解放された俺は自分の部屋で腕を組み天井を見つめていた。
時刻はもう深夜。お嬢様はともかくとして、メイドたちもぐっすり寝静まっている時間帯だ。
そんな時間になぜ、天井を見つめているかというとズバリ、考え事をしているからである。
アリスが日課として行っている大鬼の討伐で得られる経験値は11700。これがナントカクエストみたいなRPGだったらレベルアップするのに十分すぎる経験値だ。
それなのにアリスがレベルアップする気配は一切ない。
ガブリエルの言葉を鵜呑みにするのはしゃくだがアリスは毎日、11700以上の経験値を手に入れているはずだ。
レベルが上がらないのは何かおかしい気がする。
「悩み事かな」
「うわっ……急に現れんなよ」
天井からにゅっとガブリエルが現れた。
考え事をしている時に急に現れるなんてこいつは俺をもう一度殺すつもりなのか……心臓が止まるかと思ったぜ。
「アリスちゃんのことが気になるのかい?」
「ん、ああ。今日、洞窟でアリスが得た経験値を計算してたんだけど、どう考えてもレベルアップしていないとおかしいくらい稼いでいるんだよな。俺ですら今日だけでレベル13だよ」
「やっぱり、そのことだね」
「そのこと?」
なんだよ。その含みのある言い方は。
まるで何かしらの秘密があるような感じじゃないか。
「うーん、秘密っていえば秘密だね。ボクにもタマちゃん様から口止めされていることがいっぱいあるからね」
おいおいってことはアリスに関する秘密がまだあるってことか?
それとナチュラルに俺の心を読むなよ。
「ノーコメントだよ。世界一心が広くて優しいタマちゃん様にだって言えないことが一つは二つあるんだよ」
俺の問いに対する答えが「言えない」つまりはアリスにはまだ何らかの秘密が隠されているってことなんだろう。
例えば、能力が封印されているとか、呪いが掛けられているとか……エトセトラ。
「ガブリエルは俺のサポートでここに来ているんだよな」
「うん、そうだよー」
「だったら、何かもうちょいアドバイスとかないか。それこそ、アリスがレベルアップするような案とか」
「言っておくけど、アリスちゃんの問題を解決することがキミの試練なんだよ。いくらボクが賢くてかわいいタマちゃん様の天使だからって答えを教えるようなマネはできないよ」
腕組みをしながらウンウンと頷く。
試練にしては高難易度すぎなんだよな。初めて来た異世界でレベルだとか経験値だとかスキルだとかいくらゲームっぽい世界観でもそうすぐには覚えられないしな。
少なくともゆとり世代にも易しい難易度にしてほしい。
「うーん、まぁそうだよね……じゃあ、ヒント上げちゃおっかな」
「お、そういうの欲しかったぜ」
例のごとく俺の脳内をのぞき込んだ変態天使は股間のあたりからゴソゴソと何かを取り出した。
それは透明なガラスの球体だ。
本物かどうかはわからないけど、おそらく占い師とかが使う水晶玉のようなものだろう。
というか、どこから取り出しているんだソレ。どう見てもガブリエルの股間部分に収まっていたとは思えない。
いろいろ突っ込みだらけだ。
「これは遠見の水晶だよ。離れたところから特定の映像を見ることができるんだ。それとボクは天使だからなんでもアリだよ」
何がなんでもアリなのかはわからないが、とりあえずその水晶玉で何かを見るんだろう。
机の上に置いてガブリエルが何かつぶやくと水晶玉に映像が浮かび上がった。
「これは……なんだこのオッサン」
「アリスのお父さんだね。シアン・フローゲンハイトって人」
アリスの父親? つまりはフローゲンハイト家の当主様ってことか。
俺もといセバスチャンの雇い主でもある。
彼はパーティにも出ているのだろうきらびやかな服装を着て豪華な食事や人に囲まれている。
金持ち貴族のイメージからかけ離れたような痩せっぽちな身体に無精ひげ、研究者っぽい丸眼鏡。
ガブリエルに言われなければこの人がアリスの父親……シアンだなんて気づかなかっただろう。
ここで顔を覚えておかねば。
「気づかなくて当然だよ。アリスのお父さんにはね……ほら、いろいろな事情があるからね」
とガブリエルは歯切れの悪い言い方をする。
おそらくそれこそが核心に迫るから言えないのだろう。
「一応、セバスチャンとは面識あるからちゃんと顔を覚えておくんだよ。他にもパーティには出席してなさそうだけどアリスのお母さんとか、執事長だとかもね」
アリスの母親か……きっとアリスに似て美人なんだろう。どこかの機会に顔を拝んでおくとしよう。
あと、執事長もか。
執事長というからにはセバスチャンにとっては直属の上司にあたるのだろう。多分、これから会ったり命令されたりすることがあるはずだ。
こちらも事前に顔を覚えておこう。
「あ、執事長のトーマスなら。パーティに来ているみたいだよ。ほら、お父さんの後ろ側にひっそりといるよ」
言われてみれば俺と同じ執事服を着た初老の男性がシアンの後ろで背後霊のように付き従っている。
精悍な顔つきでまるで兵隊のように背がまっすぐだ。
よし、執事長も顔を覚えた。
白髪でキリッとしたオジサン。執事服さえ着ていなければシアンよりも貴族っぽく見えるほどに完璧な執事。執事の中の執事といったところか。
「移動するみたいだね」
この水晶は特定の場所をリアルタイムで中継しているようでシアンが会場内を歩くたびにカメラも追従するようだ。
「それでお嬢様の父親が何か関係あるのか?」
「うーん、これ以上は何も言えないよ。けど、ボクはつまらない嘘なんて決してつかないから、大きなヒントであることは保障するよ」
「なるほどな……」
ガブリエルの歯切れが悪いのはそこに秘密が隠されているからだ。
シアンが関係しているのは間違いないだろう。
「にしても今は深夜だよな。こんな時間になんのパーティをやっているんだ?」
「ん-貴族の秘密のパーティだろうね。ほら、出てくる人も大物ばかり」
そう言われてもピンとこない。
いかにも悪徳貴族ですといわんばかりな太っちょなオッサンやら使用人くらいしか見えない。
「あ、この国の王族も来ているみたいだね。なんのパーティかはボクもわからないけど、大きなパーティみたいだね」
王族と言われてもなぁ……一人だけ金色の服を着て偉そうにしている奴がそうなのかなぁ。
これ以上、見ていても収穫はなさそうだ。
ガブリエルに言って水晶玉を止めると俺はゴロンとベッドに寝転がった。
早いうちにシアンと接触してアリスの秘密について探らねば。
そう思案していると水晶玉を股間の収納(?)に収めたガブリエルが視界に入ってきた。
股間云々についてはもう突っ込まんぞ。
「どうかな。攻略の糸口はつかめたかな?」
「バッチしって言いたいとこだけどアリスの父親に会ってみないとなんともな」
「なら良かったよ……ふわぁあ、ボクも眠たいし今日はそろそろお暇するよ」
そう言ってガブリエルは天井の奥へと消えていった。
さて、俺も寝るかな。
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