15 / 16
アリス・フローゲンハイトの憂鬱その2
しおりを挟む
翌日、アリスが学園へと登校すると違和感を感じた。
公爵家の天才お嬢様という看板もあってか、アリスに声掛けることもなく遠巻きに眺めるだけの人が多い。
シャロやリリスといった少数派の上級貴族ならともかく、ほとんどが下級貴族の子女たちで占められるこの学園においてはアリスは雲の上の存在なのだ。
今日も同じく遠巻きにアリスを眺めているだけなのだが……なぜだかアリスが感じる視線はいつものものと違っていた。
(何よ……なんだか嫌な気分だわ)
遠くからヒソヒソとウワサする生徒たち。
いつもと同じ構図なのにいつもよりもドロッとした陰湿な雰囲気を感じる。
むろん、天気のせいではない。陰湿な雰囲気とは異なり、空は晴れやかだ。
(気のせいかしら)
あまり周囲を気にしないアリスはそう受け流すと教室へと向かい、ようやく今日の違和感の正体を知る。
教室には座学用の黒板が置かれている。
普段は教師しか使わないソレには大きな文字でラクガキが書かれていた。
『アリス・フローゲンハイトのレベルは1』
「ウソよ――」
あまりにも直接的な文章にアリスは思わずギョッとした。
自分がこれまでひた隠しにしてきたその秘密が大きく目立つように書かれている。
一瞬、思考が凍ってしまうもすぐに昨日アリスの秘密が従妹のリリスに知られたことを思い出した。
こんなことができるのは秘密を知っているリリス以外考えられない。
昔から仲が良かったリリス。たしかに最近は疎遠になっていたが、リリスがそんなことをするはずがないとアリスは思っていた。
だから、自分の秘密がここまで大々的に発表されるなんて思ってもみなかった。
教室は静かだ。
件のアリスが教室に入ってきたことによって少女たちはウワサ話をピシャリと止め息を潜めるかのようにアリスの一挙手一投足を見逃すまいと視線を送っている。
ほどなくして、アリスが動いた。
身体を翻《ひるがえ》して、教室から逃れようとする。
トンッ。
とアリスは背後にいた人物に軽くぶつかった。
「……キャロ」
そこにいたのはアリスの親友でありクラスで最も弱いとされていたキャロである。
キャロの表情は硬く、アリスを見る瞳はいつもと違って黒く濁っていた。
キャロはアリスのことを自分には持っていない特別な才能を持つ友達だと思っていた。
それでいて、自分にも周囲にも平等で言葉ではいつもツンケンしているけど、本当は心優しい。
だから、キャロはアリスのことが好きだった。
自分のレベルがクラスで一番低くて、いじわるなクラスメイトにいじめられていてもアリスがいたお陰で救われた。
レベルが低くても、平等に扱ってくれるアリスに感謝した。
鈍くさくて容量が悪くて頭も悪くて学園の提出物に遅れそうになった時も、自分のためにさりげなく手伝ってくれたアリスが本当に好きだった。
でも、そんなアリスはキャロに隠し事をしていた。
それもキャロにとってはあってはならないほどの衝撃な隠し事。
『アリス・フローゲンハイトのレベルは1』
この学園いや、この世界ではレベルが全てである。
老若男女どころか動物でさえもレベルによって優劣が決まる。
クラスで一番レベルが低いキャロにとって、自分を救ってきた友達が自分よりもレベルが低いなんて許せなかった。
本当なら自分がいるポジションにはアリスがいるべきだ。
だというのにアリスは格上であると騙《だま》し、あまつさえそんな自分を上から目線で救っていたのだ。
キャロにはアリスの本当の気持ちがわからない……いや、わからなくなった。
言葉は汚いけど、心優しい友達だと思っていたのに本当は違ったのだ――そして、キャロは口を小さくゆがめた。
「アリスさん、レベル1だったんですね」
「キャロ……」
その表情《かお》を見てアリスは察した。
アリスはキャロにとっての友達ではなくなってしまったのだと。
アリスは何も言わずそのまま教室を後にする。
何も言えない。
ずっと悩んでいたとはいえ、友達と思っていたキャロにレベルのことを秘密にしてきたのは事実なのだから。
アリスはわき目も振らずただただ廊下を走り抜けていった。
行くアテはないが行く道は決めていた。
玄関口を飛び出しアリスは学園から消えていく。
そんな何処か向かって走るアリスをリリスが静かに見つめていた。
門をを出てその姿が小さくなるまでずっと見ていた。
「……はぁ」
アリスの姿が消えてからリリスは小さくため息をついた。
そして両隣にいる何かしらを話しかけてくる取り巻き達をあしらいながら今度は空を見上げた。
今日の空は綺麗な青空だった。
公爵家の天才お嬢様という看板もあってか、アリスに声掛けることもなく遠巻きに眺めるだけの人が多い。
シャロやリリスといった少数派の上級貴族ならともかく、ほとんどが下級貴族の子女たちで占められるこの学園においてはアリスは雲の上の存在なのだ。
今日も同じく遠巻きにアリスを眺めているだけなのだが……なぜだかアリスが感じる視線はいつものものと違っていた。
(何よ……なんだか嫌な気分だわ)
遠くからヒソヒソとウワサする生徒たち。
いつもと同じ構図なのにいつもよりもドロッとした陰湿な雰囲気を感じる。
むろん、天気のせいではない。陰湿な雰囲気とは異なり、空は晴れやかだ。
(気のせいかしら)
あまり周囲を気にしないアリスはそう受け流すと教室へと向かい、ようやく今日の違和感の正体を知る。
教室には座学用の黒板が置かれている。
普段は教師しか使わないソレには大きな文字でラクガキが書かれていた。
『アリス・フローゲンハイトのレベルは1』
「ウソよ――」
あまりにも直接的な文章にアリスは思わずギョッとした。
自分がこれまでひた隠しにしてきたその秘密が大きく目立つように書かれている。
一瞬、思考が凍ってしまうもすぐに昨日アリスの秘密が従妹のリリスに知られたことを思い出した。
こんなことができるのは秘密を知っているリリス以外考えられない。
昔から仲が良かったリリス。たしかに最近は疎遠になっていたが、リリスがそんなことをするはずがないとアリスは思っていた。
だから、自分の秘密がここまで大々的に発表されるなんて思ってもみなかった。
教室は静かだ。
件のアリスが教室に入ってきたことによって少女たちはウワサ話をピシャリと止め息を潜めるかのようにアリスの一挙手一投足を見逃すまいと視線を送っている。
ほどなくして、アリスが動いた。
身体を翻《ひるがえ》して、教室から逃れようとする。
トンッ。
とアリスは背後にいた人物に軽くぶつかった。
「……キャロ」
そこにいたのはアリスの親友でありクラスで最も弱いとされていたキャロである。
キャロの表情は硬く、アリスを見る瞳はいつもと違って黒く濁っていた。
キャロはアリスのことを自分には持っていない特別な才能を持つ友達だと思っていた。
それでいて、自分にも周囲にも平等で言葉ではいつもツンケンしているけど、本当は心優しい。
だから、キャロはアリスのことが好きだった。
自分のレベルがクラスで一番低くて、いじわるなクラスメイトにいじめられていてもアリスがいたお陰で救われた。
レベルが低くても、平等に扱ってくれるアリスに感謝した。
鈍くさくて容量が悪くて頭も悪くて学園の提出物に遅れそうになった時も、自分のためにさりげなく手伝ってくれたアリスが本当に好きだった。
でも、そんなアリスはキャロに隠し事をしていた。
それもキャロにとってはあってはならないほどの衝撃な隠し事。
『アリス・フローゲンハイトのレベルは1』
この学園いや、この世界ではレベルが全てである。
老若男女どころか動物でさえもレベルによって優劣が決まる。
クラスで一番レベルが低いキャロにとって、自分を救ってきた友達が自分よりもレベルが低いなんて許せなかった。
本当なら自分がいるポジションにはアリスがいるべきだ。
だというのにアリスは格上であると騙《だま》し、あまつさえそんな自分を上から目線で救っていたのだ。
キャロにはアリスの本当の気持ちがわからない……いや、わからなくなった。
言葉は汚いけど、心優しい友達だと思っていたのに本当は違ったのだ――そして、キャロは口を小さくゆがめた。
「アリスさん、レベル1だったんですね」
「キャロ……」
その表情《かお》を見てアリスは察した。
アリスはキャロにとっての友達ではなくなってしまったのだと。
アリスは何も言わずそのまま教室を後にする。
何も言えない。
ずっと悩んでいたとはいえ、友達と思っていたキャロにレベルのことを秘密にしてきたのは事実なのだから。
アリスはわき目も振らずただただ廊下を走り抜けていった。
行くアテはないが行く道は決めていた。
玄関口を飛び出しアリスは学園から消えていく。
そんな何処か向かって走るアリスをリリスが静かに見つめていた。
門をを出てその姿が小さくなるまでずっと見ていた。
「……はぁ」
アリスの姿が消えてからリリスは小さくため息をついた。
そして両隣にいる何かしらを話しかけてくる取り巻き達をあしらいながら今度は空を見上げた。
今日の空は綺麗な青空だった。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる