吾等文学ニテ事件ヲ解決ス

序章

1話 百田再度

～『百田』サイド～

私は、実父母の最期を看取って、ショックと外傷からなるダメージで失神した。
何時間も経過してから、警察が到着したらしく、私は担架で乱暴に運び出されながら目を覚めた。
しかし、喉は相変わらず潰れているらしく、おまけに口の中を切っている所為で上手く喋れない。
あのときは、まだ鬱血で腫れてはおらず、喉に力を入れていればギリギリ喋れていた状態だったことを再確認した。

その二日後、私は白い天井を見ていた。
また気絶したらしく、何とか目を覚まして、一応は生き残れたようだった。
私が目を覚ましたことを確認すると、警察さんらしい人が、私に喋れるか確認してきた。
私は、殴られている所為か、頭がボーっとして殆ど言葉が理解できなかった。
ただ、喋れるかの確認ということだけは分かった。
しかし、私は声を出そうにも、どんなに頑張っても声が出せなかった。

「ァッ……ッ……。」
「うん……うん……。」

しかし、警察さんは聞こえているふりをしているのか、聞き取れている素振りを見せた。
私は、頭が上手く回らなかったせいで、その素振りに嬉しくなって、一生懸命に喋ろうとして、声にならないえづき音を出し続けた。
警察さんは、それに合わせて紙にペンを走らせている。
私を安心させようとしているのか、ほんのり笑顔だった。
しかし、そんな私の安心は束の間の、悪魔の幻想だった。
次の瞬間に言われた声で、私は我に返った。

「成程……つまり、御両親を殺したのは、君ということで良いね？」
「ェッ……。」

絶望した。
そして、何故か私に態とらしく、警察手帳を見せてきた。
そこには、『赤塚』という名字が記載されていた。
私は、実父と同じ警官に、しかも信頼していたはずの同僚に裏切られたと悟った。