2 / 11
1章
始まり
しおりを挟む
昨日の少し痛い文章の日記を書いたことを、翌朝となる今日に強く恥じ、後悔していた。
だからこそ、あの中に出てきた言葉は本音だ。
それ故に、記述しているものが、世の中に漏洩すれば大問題となり得る。
謂わば、軽犯罪を犯したようなものだ。
法律上は、個人的にそういったものを表沙汰にさえ出さなければ、お咎めは無い。
流石の政府も、憲法による言論の自由が、未だに確保されている中で、取り締まるのは難しいのだろう。
だが今現在は、中国などの社会主義国が、日本への内政に侵食し始めていて、言論の自由を求めてヨーロッパ各国やアメリカ、同社会主義国であるロシアと、その他の社会主義国が日本を板挟みにして争っている状況だ。
それでも、世界政府による平和宣言によって、言い争いや明ら様な抗議は出来なくなり、実に陰湿で狡猾な実力行使へと、主義を通す際の政治的戦略が目立っている。
そういった点では、中国は有利だろう。
今まで、やってきたことを、更に実行しやすくなったのだから。
しかし、内政には中国と韓国は侵略して欲しくはない。
儒教の考え方では、『私たち』の存在は御法度なので、きっと差別を正当化するような、巧妙な圧力を掛けられるに違いないからだ。
私はニュースを見ながら、そんなことを考えて朝食を摂っていた。
「あんた……遅刻は無いからと言って、のんびりしてたら抗議始まっちゃうわよ?」
母親が、自分のコーヒーを運びながら話しかけた。
「うん……え…もう、そんな時間?」
「ほら…もう9時よ!」
「ヤバッ……部屋に戻りまーす!」
『遅刻は無い』というのは、今2087年現在では、令和でのパンデミックを機に、講義のリモート化が進んで、通学とリモートを選択できたりして、場所を自由に講義が受けられるようになった。
お陰で、インフルエンザなどの通学停止の状態でも、関係なく講義が受けられるようになって、多くの生徒が単位や知識を取得できるようになった。
中には、平成までとは逆に、通学は無くリモートのみの学校も過半数近く存在している。
「仕事の方は?」
「一応、明日が〆切だから、今日は昼ご飯食べたら、その後はお風呂以外では、リビングにはいないよ。」
「晩御飯は?」
「あー……一応、今日は夕方に打ち合わせもあるから、晩御飯はそっちで済ますよ。」
「わかった……あんたも大学生なのに忙しいわね?」
「……だって、上手くいけば、今のフリーランスから専属になって、事務所構えられる手筈が揃いかけてるんだもん。」
因みに、学校のリモート化が進み、高校生以上でフリーランスの仕事に就く学生が増えていて、現在はトレンドとなっている。
東大生などの高学歴な学生でなくても、現在では中学生でも起業しているのは当たり前になってきていて、特に学生の企業に対する支援が、国家ぐるみで推し勧められて充実している。
「本当に大事な時期なのね……頑張れ!」
「ん……じゃ、時間なんで‼」
「はーい。」
意気揚々と部屋へ戻り、日記を机の引き出しの奥にしまって、私はいつもと同じく講義を受ける。
「えー…次の問題は誰がレポートを提出してくれるかな?」
「はーい……。」
レポート課題は面倒臭い質である。
私は、目を付けられない様に早々と課題を貰って、さっさと提出してしまうのが、自分のスタイルだ。
特に、この教授は早期であればあるほど、課題が易しい傾向にある。
「えーと……お、大栄さんは今日もカワイイね!」
「え……何がですか…急に?」
何を思っているのか、毎回似たようなおべんちゃらを言うのだ。
生徒全員も、「あー、またか」と思ってはいるが、相手は若そうに見えて、まあまあな御歳を召したオジサンである。
一応、対応して会話を成り立たせる。
「いや、服装がね……いいなー、と思っただけ。」
「揶揄わないでください!」
「はいはい……じゃあ、今回の課題を板書しまーす。」
普段は言わないであろう、変な台詞を吐いたものだから、顔を少し赤らめて、急に会話を自ら断った。
そんな答え方をされたら、周りから在らぬ誤解を受けてしまう。
いやだ……こんなジジィと、空想上でもくっ付くのは真っ平御免だ。
頼むから、毎度の様にジョークでお道化てほしい。
しかし、無情にも板書の音だけが虚しく響き渡り、変な空気が講堂とモニターに漂ってしまった。
「……スゥ…はい、今回の課題はこれです。」
「……⁉」
「先生……これはかなりセンシティブだと思います!」
「ちょっと……下手したら、先生のクビが飛びますよ⁉」
私が驚いて声を失って、他の生徒が阿鼻叫喚に近い悲鳴を上げた。
そんな中でも、先生は平然としている。
今の時代で、このタブー極まりない課題を、先生は飄々と出して除けた。
「先生のクビはどうなっても構わない……だが、この課題に当事者が答えを見出すことこそ、これからの君たちの未来に大きな影響が、必ずいい形で出ると期待している。」
そう言うと、板書を堂々と、手甲でコツコツと叩いて示した。
そこに書いている課題……それは、
『性別の定義と存在意義の必要性と重要性、または差別意識やハラスメントの意義と捉え方を見直す、これからの時代の方向性』
私は、これを見て、改めてこの世界は『平和』という仮面を被った悪意に、世界は壊されてしまったんだと確信した。
こんな、在り来たりで当たり前なことを、改めて見つめ直さなければならない世の中になってしまったのだ。
私は今日も、この荒廃した世界で生きていく。
だからこそ、あの中に出てきた言葉は本音だ。
それ故に、記述しているものが、世の中に漏洩すれば大問題となり得る。
謂わば、軽犯罪を犯したようなものだ。
法律上は、個人的にそういったものを表沙汰にさえ出さなければ、お咎めは無い。
流石の政府も、憲法による言論の自由が、未だに確保されている中で、取り締まるのは難しいのだろう。
だが今現在は、中国などの社会主義国が、日本への内政に侵食し始めていて、言論の自由を求めてヨーロッパ各国やアメリカ、同社会主義国であるロシアと、その他の社会主義国が日本を板挟みにして争っている状況だ。
それでも、世界政府による平和宣言によって、言い争いや明ら様な抗議は出来なくなり、実に陰湿で狡猾な実力行使へと、主義を通す際の政治的戦略が目立っている。
そういった点では、中国は有利だろう。
今まで、やってきたことを、更に実行しやすくなったのだから。
しかし、内政には中国と韓国は侵略して欲しくはない。
儒教の考え方では、『私たち』の存在は御法度なので、きっと差別を正当化するような、巧妙な圧力を掛けられるに違いないからだ。
私はニュースを見ながら、そんなことを考えて朝食を摂っていた。
「あんた……遅刻は無いからと言って、のんびりしてたら抗議始まっちゃうわよ?」
母親が、自分のコーヒーを運びながら話しかけた。
「うん……え…もう、そんな時間?」
「ほら…もう9時よ!」
「ヤバッ……部屋に戻りまーす!」
『遅刻は無い』というのは、今2087年現在では、令和でのパンデミックを機に、講義のリモート化が進んで、通学とリモートを選択できたりして、場所を自由に講義が受けられるようになった。
お陰で、インフルエンザなどの通学停止の状態でも、関係なく講義が受けられるようになって、多くの生徒が単位や知識を取得できるようになった。
中には、平成までとは逆に、通学は無くリモートのみの学校も過半数近く存在している。
「仕事の方は?」
「一応、明日が〆切だから、今日は昼ご飯食べたら、その後はお風呂以外では、リビングにはいないよ。」
「晩御飯は?」
「あー……一応、今日は夕方に打ち合わせもあるから、晩御飯はそっちで済ますよ。」
「わかった……あんたも大学生なのに忙しいわね?」
「……だって、上手くいけば、今のフリーランスから専属になって、事務所構えられる手筈が揃いかけてるんだもん。」
因みに、学校のリモート化が進み、高校生以上でフリーランスの仕事に就く学生が増えていて、現在はトレンドとなっている。
東大生などの高学歴な学生でなくても、現在では中学生でも起業しているのは当たり前になってきていて、特に学生の企業に対する支援が、国家ぐるみで推し勧められて充実している。
「本当に大事な時期なのね……頑張れ!」
「ん……じゃ、時間なんで‼」
「はーい。」
意気揚々と部屋へ戻り、日記を机の引き出しの奥にしまって、私はいつもと同じく講義を受ける。
「えー…次の問題は誰がレポートを提出してくれるかな?」
「はーい……。」
レポート課題は面倒臭い質である。
私は、目を付けられない様に早々と課題を貰って、さっさと提出してしまうのが、自分のスタイルだ。
特に、この教授は早期であればあるほど、課題が易しい傾向にある。
「えーと……お、大栄さんは今日もカワイイね!」
「え……何がですか…急に?」
何を思っているのか、毎回似たようなおべんちゃらを言うのだ。
生徒全員も、「あー、またか」と思ってはいるが、相手は若そうに見えて、まあまあな御歳を召したオジサンである。
一応、対応して会話を成り立たせる。
「いや、服装がね……いいなー、と思っただけ。」
「揶揄わないでください!」
「はいはい……じゃあ、今回の課題を板書しまーす。」
普段は言わないであろう、変な台詞を吐いたものだから、顔を少し赤らめて、急に会話を自ら断った。
そんな答え方をされたら、周りから在らぬ誤解を受けてしまう。
いやだ……こんなジジィと、空想上でもくっ付くのは真っ平御免だ。
頼むから、毎度の様にジョークでお道化てほしい。
しかし、無情にも板書の音だけが虚しく響き渡り、変な空気が講堂とモニターに漂ってしまった。
「……スゥ…はい、今回の課題はこれです。」
「……⁉」
「先生……これはかなりセンシティブだと思います!」
「ちょっと……下手したら、先生のクビが飛びますよ⁉」
私が驚いて声を失って、他の生徒が阿鼻叫喚に近い悲鳴を上げた。
そんな中でも、先生は平然としている。
今の時代で、このタブー極まりない課題を、先生は飄々と出して除けた。
「先生のクビはどうなっても構わない……だが、この課題に当事者が答えを見出すことこそ、これからの君たちの未来に大きな影響が、必ずいい形で出ると期待している。」
そう言うと、板書を堂々と、手甲でコツコツと叩いて示した。
そこに書いている課題……それは、
『性別の定義と存在意義の必要性と重要性、または差別意識やハラスメントの意義と捉え方を見直す、これからの時代の方向性』
私は、これを見て、改めてこの世界は『平和』という仮面を被った悪意に、世界は壊されてしまったんだと確信した。
こんな、在り来たりで当たり前なことを、改めて見つめ直さなければならない世の中になってしまったのだ。
私は今日も、この荒廃した世界で生きていく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる