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第一章
対価と口付け
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「………」
黙りこくっているベルに、ユキヤが焦ったように言葉を続ける。
「い、一応だからな!お前、仮契約とは言え守ってやるとか言って、結局直ぐに手を貸してくなかったけど!で、でも王子をあれ以上傷つけないでくれたしっ!」
ベルの顔を見れなくて、ユキヤは俯きシーツをキュッと握りしめる。言っててどんどん頬が熱くなっていくのがわかった。
何だよ、これってまんまツンデレのセリフじゃん!と自分にツッコミを入れ、ユキヤは気恥ずかしさを誤魔化していた。
そんなユキヤを眺めていたベルは、心底可笑しそうに喉を鳴らし目を細めた。俯いている為、長めの前髪が目元を隠してしまってるが、赤くなった頬は隠しようもない。
普段のツンケンした態度も懐かない猫の様で愛いが、この様な態度も蠱惑的な表情もそそられる。
「くく...。殊勝な態度は悪くない。だが、礼なら言葉ではなく別なものを寄越せ」
「?別なものって…何だよ?」
顔を上げると、思ったより近くにベルの顔があってちょっと動揺してしまう。あ、ニヤリと笑った。すごく嫌な予感がするんだけど…。
「お前から俺に口付けろ。もしくは俺がする許可を寄越せ」
ベルの要求を聞いて一瞬呆けたユキヤだったが、次いで顔が瞬時に真っ赤になってしまう。
「く、口…?!」
「血でも良いが、お前の唾液も味わってみたい」
更に続いたとんでもない発言に、ユキヤは一気に首まで赤くなった。このセクハラ悪魔!なんて事を起き抜けに言ってくれやがる!
「だ、だ、唾液って…!ヤに決まってんだろ、この変態っ!!」
「随分な言い草だなぁ、ユキヤ。お前の傷を塞ぎ、尚且つ回復の為に魔力も大分消費した俺に対して」
「うぅ…っ!」
「等価交換としてはやや足りんが、それでも契約者の体液は充分な対価になる」
そもそも、俺から不埒な事が出来ないように、制約で縛ってるのは何処のどいつだ?と言われれば、ユキヤに反論は難しい。顔色を赤くしたり青くしたりして、葛藤しているユキヤにベルは更にとんでもない発言をかました。
「唾液が嫌なら、別の体液でもかまわんぞ。例えば精液とか....」
「わー!!分かった!やるよ、やりゃー良いんだろ?!」
ベルのトンデモ発言を遮り、半ばヤケクソでユキヤは承諾を口にしてしまった。言ってから怒涛の後悔が押し寄せるが、心の準備など待ってくれる悪魔ではない。
「では頂こうか。それで?お前からしてくれるのか、俺がするか、どっちだ?」
ニィッと凶暴な笑みを浮かべ、あえて自分に選択を委ねるベルに、ユキヤは心で悪態をつく。そして途方に暮れた。
(俺からなんて、ムリ!!前世でも今世でも(女子と)付き合った経験もないし、口付け…キスだって、ファーストキスをこいつに奪われるまで誰とも…)
「ふん。お前の返事を待ってたら、いつまで経っても何も始まらんな」
「ひ、ぇっ!」
グルグル思考を回していたユキヤは、唐突に顎をしゃくり上げられてしまう。
そしてベルがいつの間にかベットの上で、自分の身体を挟むように跨ってる。所謂馬乗りだ。
コトン、と後頭部がヘッドボードに当たった。
「べ....」
後退りも身動きも取れない中、凶悪な美貌がアップで自分に迫ってきて、息を呑む間もなく唇に湿った何か…ベルの唇が重なった。
蛇は低体温だから冷たかったけど、悪魔って体温あったんだな……。
現実逃避に近い、よく分からない感想が真っ白になった頭の中を過ぎ去っていった。
無意識に引き結んだ唇を、柔やわと食むように自分より大きなそれらが動いて。そのくすぐったさに、きつく閉じた目蓋が震えてしまう。
(ウソ……だろ……?!)
大悪魔で人外で、れっきとした男(もしかしたら女になれる?)であるベルと唇を重ねてる。自分は異性愛者で、男にこんな事されたら嫌悪感が沸く筈なのに……!
「……おい、息止めてんじゃねぇよ。窒息するぞ。ってか口開けろ」
一向に解けないユキヤの唇に焦れ、ベルは僅かに唇を離す。そして鼻で息をする、という発想も抜けているらしい仮契約者に、呼吸をしろと促した。
「ふぁ、?」
熱い吐息がかかり、息苦しさを自覚した事で必死に食い縛っていたユキヤの歯列に隙間が出来る。と、それを逃すまいとベルの舌がするりと滑り込んできた。そして縮こまり、逃げようとする舌に容赦なく絡まってしまう。
「ン!……ンーーーッ!!」
うぅう嘘!!ベロチューだよねコレ?!おれ、男にっ、男とベロチューしてるーーー!!
黙りこくっているベルに、ユキヤが焦ったように言葉を続ける。
「い、一応だからな!お前、仮契約とは言え守ってやるとか言って、結局直ぐに手を貸してくなかったけど!で、でも王子をあれ以上傷つけないでくれたしっ!」
ベルの顔を見れなくて、ユキヤは俯きシーツをキュッと握りしめる。言っててどんどん頬が熱くなっていくのがわかった。
何だよ、これってまんまツンデレのセリフじゃん!と自分にツッコミを入れ、ユキヤは気恥ずかしさを誤魔化していた。
そんなユキヤを眺めていたベルは、心底可笑しそうに喉を鳴らし目を細めた。俯いている為、長めの前髪が目元を隠してしまってるが、赤くなった頬は隠しようもない。
普段のツンケンした態度も懐かない猫の様で愛いが、この様な態度も蠱惑的な表情もそそられる。
「くく...。殊勝な態度は悪くない。だが、礼なら言葉ではなく別なものを寄越せ」
「?別なものって…何だよ?」
顔を上げると、思ったより近くにベルの顔があってちょっと動揺してしまう。あ、ニヤリと笑った。すごく嫌な予感がするんだけど…。
「お前から俺に口付けろ。もしくは俺がする許可を寄越せ」
ベルの要求を聞いて一瞬呆けたユキヤだったが、次いで顔が瞬時に真っ赤になってしまう。
「く、口…?!」
「血でも良いが、お前の唾液も味わってみたい」
更に続いたとんでもない発言に、ユキヤは一気に首まで赤くなった。このセクハラ悪魔!なんて事を起き抜けに言ってくれやがる!
「だ、だ、唾液って…!ヤに決まってんだろ、この変態っ!!」
「随分な言い草だなぁ、ユキヤ。お前の傷を塞ぎ、尚且つ回復の為に魔力も大分消費した俺に対して」
「うぅ…っ!」
「等価交換としてはやや足りんが、それでも契約者の体液は充分な対価になる」
そもそも、俺から不埒な事が出来ないように、制約で縛ってるのは何処のどいつだ?と言われれば、ユキヤに反論は難しい。顔色を赤くしたり青くしたりして、葛藤しているユキヤにベルは更にとんでもない発言をかました。
「唾液が嫌なら、別の体液でもかまわんぞ。例えば精液とか....」
「わー!!分かった!やるよ、やりゃー良いんだろ?!」
ベルのトンデモ発言を遮り、半ばヤケクソでユキヤは承諾を口にしてしまった。言ってから怒涛の後悔が押し寄せるが、心の準備など待ってくれる悪魔ではない。
「では頂こうか。それで?お前からしてくれるのか、俺がするか、どっちだ?」
ニィッと凶暴な笑みを浮かべ、あえて自分に選択を委ねるベルに、ユキヤは心で悪態をつく。そして途方に暮れた。
(俺からなんて、ムリ!!前世でも今世でも(女子と)付き合った経験もないし、口付け…キスだって、ファーストキスをこいつに奪われるまで誰とも…)
「ふん。お前の返事を待ってたら、いつまで経っても何も始まらんな」
「ひ、ぇっ!」
グルグル思考を回していたユキヤは、唐突に顎をしゃくり上げられてしまう。
そしてベルがいつの間にかベットの上で、自分の身体を挟むように跨ってる。所謂馬乗りだ。
コトン、と後頭部がヘッドボードに当たった。
「べ....」
後退りも身動きも取れない中、凶悪な美貌がアップで自分に迫ってきて、息を呑む間もなく唇に湿った何か…ベルの唇が重なった。
蛇は低体温だから冷たかったけど、悪魔って体温あったんだな……。
現実逃避に近い、よく分からない感想が真っ白になった頭の中を過ぎ去っていった。
無意識に引き結んだ唇を、柔やわと食むように自分より大きなそれらが動いて。そのくすぐったさに、きつく閉じた目蓋が震えてしまう。
(ウソ……だろ……?!)
大悪魔で人外で、れっきとした男(もしかしたら女になれる?)であるベルと唇を重ねてる。自分は異性愛者で、男にこんな事されたら嫌悪感が沸く筈なのに……!
「……おい、息止めてんじゃねぇよ。窒息するぞ。ってか口開けろ」
一向に解けないユキヤの唇に焦れ、ベルは僅かに唇を離す。そして鼻で息をする、という発想も抜けているらしい仮契約者に、呼吸をしろと促した。
「ふぁ、?」
熱い吐息がかかり、息苦しさを自覚した事で必死に食い縛っていたユキヤの歯列に隙間が出来る。と、それを逃すまいとベルの舌がするりと滑り込んできた。そして縮こまり、逃げようとする舌に容赦なく絡まってしまう。
「ン!……ンーーーッ!!」
うぅう嘘!!ベロチューだよねコレ?!おれ、男にっ、男とベロチューしてるーーー!!
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