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第一章
悪魔公の実力
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生々しい感触に現実逃避も出来ず、ユキヤは脳内で絶叫するしかなかった。
思い出したくもない、腐れた姉貴が描いていた男同士のキスシーンがフラッシュバックして己を苛んでいく。
助けを求めようにも、此処にはベルと自分しか居ない。ああ本当に、なんで俺は勢いとはいえ承諾してしまったんだ!
「ッ?!」
ビクリ、とユキヤの肩が小さく跳ねた。絶妙な強さで絡まった舌を吸われ、弱く歯を立てられたからだ。その刺激で下顎に甘い痺れが走って、じわりと熱が奥に灯るような……変な感覚が生まれる。
「……っ、う……ン」
角度を変え、どんどん深くなっていく口付けに目尻に涙が滲む。流石は悪魔というか、ベルの口技は巧みで容赦がない。しかも、上手く呼吸が出来るように誘導すらしている。
自分の舌と絡まるだけではなく、歯の裏や口腔内を縦横無尽に侵していく悪魔のそれ。溢れそうな唾液は余さず摂取されて、ベルの喉を鳴らした。
絶妙な加減で、吸い上げられた舌を甘噛みされたら、ゾクゾクと悪寒にも似た感覚が背筋を這い上がってきた。
ヤバイ、なんだ、これ……?!
ぴちゃり、くちゅ、と卑猥な水音が鼓膜に直接響いて、羞恥でどうにかなりそうになる。
何とか隙を見てベルの唇から逃れ、手加減を訴えようとした。けれど口から漏れたのは、自分でも驚く位に弱い掠れ声だった。
「や……っ、も…….!!」
もう止めろと、ユキヤは涙で潤んだ目でベルを懸命に睨みつけた。
だが、目と鼻の先にあるベルの双眼は、マグマのごとくに灼熱を孕んで自分を見つめていて、逆に心臓が激しく跳ね上がってしまう。
「ああ……お前の魔力は美味だ。もっとだ……もっと寄越せ」
ベルはペロリと、互いの唾液で濡れた唇を舐める。熱に浮かされた表情は、欲情に塗れた『雄』のそれで。ユキヤの痺れかけた思考に危険信号を点した。
(ダメだ、これ以上は……!!)
「す、ストップ!!限界!もうダメだからっ!!」
「?!、チッ!」
なけなしの気力を振り絞って叫んだ瞬間、バチィ!と静電気みたいな衝撃がベルを弾いた。
出現していた漆黒の翼を羽ばたかせ、絨毯に降り立ち盛大に舌打ちする不埒な悪魔に、ユキヤはようやく深い息を付いた。
「もう、っ、充分だろ……!これ以上は、許さないから、なっ!」
欠乏していた酸素を取り込むべく、はぁはぁと肩で息を吐きながら、ユキヤは痺れて呂律が回らない舌に喝を入れる。
そして「超絶不満だ」とデカデカ顔に貼っているセクハラ悪魔にダメ出し宣言すると、熱った顔を両手で覆った。
あ…‥危なかった!!このまま流されていたら、まじめに貞操の危機だった!!
はぁーー…と深く深?い溜息を吐いてから、ユキヤは心中慄き滂沱の汗を流した。
流石は悪魔公。人間を堕落させる手管に長けた悪魔の中でも、群を抜いて悪質極まりない。
女の子しか受け付けない!と豪語していた自分が、こんな……いとも簡単に……。
「これから良いところだったと言うのに、止めるとは無粋だなユキヤ」
まるで俺がオイタをした、みたいなベルの言い草にカチンと来て、思いっきりセクハラ悪魔を睨み付けた。
「良いところなんて無かったから!!嘘つくなこの猥褻悪魔っ!!」
「そうか?その割には、随分と気持ち良さそうだったじゃねぇか。俺に舌を吸われて、甘噛みされた時浮かべたお前の表情なんて……」
「わーわー!!止めろっ!それ以上言うなぁ!!」
ユキヤは有らん限りの声で必死にベルの言葉を遮った。盛ってるに違いない内容であっても、誰が自分の痴態など聞きたいものか!
酸欠状態に加え興奮したのが悪かった。
ユキヤは急激な目眩に襲われ、ずるずるとヘッドボードからずり落ち枕へと撃沈する。疲れた…思いっきり疲れた。主に精神的に。
「全くさぁ...。学院で意識を失って、気づいたら第一王子の宮殿にいて…」
って!そうだった、俺なんで王子の宮殿にいんの?ベルに無理矢理覚醒させられて、そして第二王子の安否を確かめたから有耶無耶になってたけど。
がばりと起き上がり、動揺と疑問に塗れた双眼を向けたユキヤに、ベルはふんと鼻を鳴らす。そして腕を組み、続き部屋にある扉の方を流し見た。
「さぁな。本人が来るから、直接聞け」
「へ?」
ベルの言葉が終ると同時に、誰かが続き部屋へ入ってくる気配がした。
思い出したくもない、腐れた姉貴が描いていた男同士のキスシーンがフラッシュバックして己を苛んでいく。
助けを求めようにも、此処にはベルと自分しか居ない。ああ本当に、なんで俺は勢いとはいえ承諾してしまったんだ!
「ッ?!」
ビクリ、とユキヤの肩が小さく跳ねた。絶妙な強さで絡まった舌を吸われ、弱く歯を立てられたからだ。その刺激で下顎に甘い痺れが走って、じわりと熱が奥に灯るような……変な感覚が生まれる。
「……っ、う……ン」
角度を変え、どんどん深くなっていく口付けに目尻に涙が滲む。流石は悪魔というか、ベルの口技は巧みで容赦がない。しかも、上手く呼吸が出来るように誘導すらしている。
自分の舌と絡まるだけではなく、歯の裏や口腔内を縦横無尽に侵していく悪魔のそれ。溢れそうな唾液は余さず摂取されて、ベルの喉を鳴らした。
絶妙な加減で、吸い上げられた舌を甘噛みされたら、ゾクゾクと悪寒にも似た感覚が背筋を這い上がってきた。
ヤバイ、なんだ、これ……?!
ぴちゃり、くちゅ、と卑猥な水音が鼓膜に直接響いて、羞恥でどうにかなりそうになる。
何とか隙を見てベルの唇から逃れ、手加減を訴えようとした。けれど口から漏れたのは、自分でも驚く位に弱い掠れ声だった。
「や……っ、も…….!!」
もう止めろと、ユキヤは涙で潤んだ目でベルを懸命に睨みつけた。
だが、目と鼻の先にあるベルの双眼は、マグマのごとくに灼熱を孕んで自分を見つめていて、逆に心臓が激しく跳ね上がってしまう。
「ああ……お前の魔力は美味だ。もっとだ……もっと寄越せ」
ベルはペロリと、互いの唾液で濡れた唇を舐める。熱に浮かされた表情は、欲情に塗れた『雄』のそれで。ユキヤの痺れかけた思考に危険信号を点した。
(ダメだ、これ以上は……!!)
「す、ストップ!!限界!もうダメだからっ!!」
「?!、チッ!」
なけなしの気力を振り絞って叫んだ瞬間、バチィ!と静電気みたいな衝撃がベルを弾いた。
出現していた漆黒の翼を羽ばたかせ、絨毯に降り立ち盛大に舌打ちする不埒な悪魔に、ユキヤはようやく深い息を付いた。
「もう、っ、充分だろ……!これ以上は、許さないから、なっ!」
欠乏していた酸素を取り込むべく、はぁはぁと肩で息を吐きながら、ユキヤは痺れて呂律が回らない舌に喝を入れる。
そして「超絶不満だ」とデカデカ顔に貼っているセクハラ悪魔にダメ出し宣言すると、熱った顔を両手で覆った。
あ…‥危なかった!!このまま流されていたら、まじめに貞操の危機だった!!
はぁーー…と深く深?い溜息を吐いてから、ユキヤは心中慄き滂沱の汗を流した。
流石は悪魔公。人間を堕落させる手管に長けた悪魔の中でも、群を抜いて悪質極まりない。
女の子しか受け付けない!と豪語していた自分が、こんな……いとも簡単に……。
「これから良いところだったと言うのに、止めるとは無粋だなユキヤ」
まるで俺がオイタをした、みたいなベルの言い草にカチンと来て、思いっきりセクハラ悪魔を睨み付けた。
「良いところなんて無かったから!!嘘つくなこの猥褻悪魔っ!!」
「そうか?その割には、随分と気持ち良さそうだったじゃねぇか。俺に舌を吸われて、甘噛みされた時浮かべたお前の表情なんて……」
「わーわー!!止めろっ!それ以上言うなぁ!!」
ユキヤは有らん限りの声で必死にベルの言葉を遮った。盛ってるに違いない内容であっても、誰が自分の痴態など聞きたいものか!
酸欠状態に加え興奮したのが悪かった。
ユキヤは急激な目眩に襲われ、ずるずるとヘッドボードからずり落ち枕へと撃沈する。疲れた…思いっきり疲れた。主に精神的に。
「全くさぁ...。学院で意識を失って、気づいたら第一王子の宮殿にいて…」
って!そうだった、俺なんで王子の宮殿にいんの?ベルに無理矢理覚醒させられて、そして第二王子の安否を確かめたから有耶無耶になってたけど。
がばりと起き上がり、動揺と疑問に塗れた双眼を向けたユキヤに、ベルはふんと鼻を鳴らす。そして腕を組み、続き部屋にある扉の方を流し見た。
「さぁな。本人が来るから、直接聞け」
「へ?」
ベルの言葉が終ると同時に、誰かが続き部屋へ入ってくる気配がした。
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