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第二章

自分のやりたい事

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「ユキヤ、飯」

「はいはい、今作るよ」

なんか熟年夫婦の様な会話だな~…なんて思いながら、昨夜余った肉や野菜、そして採れたての卵をふんだんに使って、具沢山ふわふわオムレツを作る。それと簡易スープ。今日はコンソメ味だ。

昨夜のベルの食べっぷりを考慮し、食材全てを使い切る勢いで作った山のような料理。流石に食べきれないだろうと思ってたそれらを、ベルは残さず完食した。

「美味かった」

「そりゃ良かった。それにしても良い食欲だなお前。腹壊すぞ?」

「喰った食物は自動的に魔力に変換される。それに俺は人間じゃないから、腹は壊さん」

成程、そういやそうかと納得し、俺は自分の分の料理を口に含んだ。…うん、流石は新鮮な卵。味が濃厚で美味い。

「で?これからお前はどうするつもりだ?」

ベルの質問に、俺は咀嚼していた固いパンを飲み込んだ。

「う~ん…そうだなぁ。家族以外に知り合いは殆どいないし、いたとしても迷惑がかかるから頼れないし、それにほら…。俺、割と一般庶民の生活は一通りできるんだけど、顔がこれだからさ。人前に出ると否応なしに目立っちまうから…正直、どうしたら良いのかまだよく分からないんだ」

「何か、やりたい事とかはないのか?」

「ん~…。小さい頃は、冒険者になって世界中を旅したいって思っていたけど、現実的じゃないし、すぐ諦めた」

高すぎる身分、それと一応家督を継ぐってなってたからな。

けど悪魔に連れ去られ、死んだことにされている今なら公爵家とかの縛りは何もない。
冒険者にだってなれるだろうが、やっぱり自分の容貌が障害になってしまうのだ。この唯一にして最大の問題点美貌を何とかしないとなぁ…。

魔法をもっと使えるようになれば、顔認識阻害も可能になるかもしれないけど…。
それに、ベルのお陰で当面衣食住の心配はなさそうだが、いつまでもここに居るわけにはいかない。

現実問題、このまま外国で生活するにしても冒険者になって世界を旅するにしても、その為にはまず、それなりに力をつけなくてはいけない。

そう、俺の最終目的である「堂々と故郷に帰る」為にも、どんな思惑にも対抗する事が出来る程の力と実績を手に入れなくてはならないのだ。

「…だとするとやっぱ、誰かに教えを請うのが一番だよな」

なにせ俺はまだ、武術も剣術も中途半端な実力しかない。実父と実母が指南してくれていたけど、実践経験なんてほぼ皆無だし、所詮井の中の蛙って奴だ。

ましてや、魔法に至っては魔力コントロールが(ベルのお陰で)出来るようになったは最近だし。初心者レベルの上、それに関しての知識は皆無に等しい。折角『魅了』なんていう珍しいスキルを持っているのだから、あのランスロット王子みたいに有効活用してみたい。

ベルに魔法のアレやこれを教えて貰う..となると、対価が必要になるよなぁ。

毎回ご飯で済ます訳にはいかないし、物資を取り寄せてくれたのも「飯だけで等価交換になるか阿呆」と、後でナニか請求する気満々なんだから、指導なんてどれ程の対価を支払わなきゃ…!

「だったら、お前の母親を頼ればいいだろ」

「は?母親って…ベハティ母さん?」

苦悩する俺を見飽きたのか、ベルはなんて事ないだろと鷹揚に頷いた。
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