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第四章
やっぱビギナーズラックでしょ
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やはり気を張っていた上に魔力の消費で疲弊していたからか。朝日が差し込んでも気づかずぐっすりと寝てしまっていたらしい。
フゥの張っている結界は、敵意のない者を弾かない。ザビア将軍の「失礼します」という声とノックの音で慌てて飛び起き、リビングのテーブルに置いてあった仮面を急いでつけて間一髪、素顔を見せずに済んだ。
「起こしてしまったようで、申し訳ありません」
いかにも寝起きといった俺のボサボサ頭、そして軽い息切れに恐縮しつつ、将軍自ら運んでくれた朝食と洗い立ての服を渡して早々に立ち去ってくれた。実に申し訳ない。
とにかく、寝室の扉を閉めてベッドにまだいるベルにみられぬよう、急いで着替えて御飯を食べ終えた今現在。
『…おいユキヤてめぇ、しっかり『力』込めてんだろーな?」
「うっ…。や、やってる…と思うんだけど…」
俺は、両手の上でトグロを巻いてるベル蛇を必死に凝視している。もうかれこれ十分…いや十五分は経過してるんじゃないだろうか。
別に意味なく見つめ合ってる訳ではない。昨夜、一時的とはいえ無自覚無意識に師匠(予定)が掛けた術を破ってベルを元に戻せたもんだから、「あの要領で術を解け!」と強制されてるのだ。
いや、最初は抵抗したよ?だって万が一解けたとしたら、また襲われる可能性大だし。誓約が有効だと信じたいけど、昨晩の事があるからイマイチ安心できないというか…。
『だったら、今後は本物の蛇みたく振る舞う。金輪際助けがあると思うなよ』
だけど、ベルの絶対零度な脅し文句に俺は屈した。力を封印されてても、俺のフリして交渉したり知恵を貸してくれるのは、正直とっても助かるからだ。
くそぅ、蛇の姿でのディープキスでは誤魔化されなかったか…。
しかし、昨夜はビギナーズラックだったと言うべきなのか…。一応頑張って「元に戻れ?」と念を送りながらベルを見つめてるのだが、全く何も変化なしな訳で…。
顔と顔を限界まで近づけ、それこそ眉間に縦皺何本も作って頑張ってるんだけど、術の発動どころかうんともすんとも反応なしだ。
当然ベルの機嫌も悪くなる一方で、目が限界まで細くなりチロチロと舌の出し入れも早くなる。流石に疲れてしまい、見開きすぎてドライアイ気味の目を閉じため息を吐いた。
「なぁベル。やっぱり昨夜のアレって偶々?だったんだよ。俺にはまだ無理…」
『嘘つけ!絶対手ェ抜いてんだろ!真剣にやれこの愚図が!!』
「いてぇ!!」
間髪入れずにビシッと痛恨の尻尾ビンタが飛んできた。地味どころかめっちゃ痛いっ!やっぱ昨日からの怒りは継続中か。思わず両手を離してしまったが、ベルは素早く腕からスルスル上がって首に巻きつきシャーと牙を剥く。
『心配せんでもまだ襲わねぇってんだろが!つーか、テメェのクソッタレな誓約でどの道襲えねぇよ!』
「だからぁ、本当にダメなんだって!…ってちょっと待て!お前『まだ』って何だよ?!」
俺はヒリヒリする頬を摩りながらジト目でベルを見下ろすが、ツッコミは綺麗にスルーして「さっさと続けろ!」と尻尾の先端でペチペチ叩いて促してくる。
因みに、いつもなら頭の上かに居るフゥだけど。昨夜のベル(本体)の膨大な魔力に恐れをなして、ちょっとビクビクしながら距離をとって浮いていた。どうやらベルが低級魔族じゃなく、ヒエラルキーの頂点レベルって分かったらしい。
結局、俺は将軍がお昼ご飯と王宮からの報告を持って来てくれるまで、ベルのスパルタ特訓に付き合わされる羽目になったのだった。
フゥの張っている結界は、敵意のない者を弾かない。ザビア将軍の「失礼します」という声とノックの音で慌てて飛び起き、リビングのテーブルに置いてあった仮面を急いでつけて間一髪、素顔を見せずに済んだ。
「起こしてしまったようで、申し訳ありません」
いかにも寝起きといった俺のボサボサ頭、そして軽い息切れに恐縮しつつ、将軍自ら運んでくれた朝食と洗い立ての服を渡して早々に立ち去ってくれた。実に申し訳ない。
とにかく、寝室の扉を閉めてベッドにまだいるベルにみられぬよう、急いで着替えて御飯を食べ終えた今現在。
『…おいユキヤてめぇ、しっかり『力』込めてんだろーな?」
「うっ…。や、やってる…と思うんだけど…」
俺は、両手の上でトグロを巻いてるベル蛇を必死に凝視している。もうかれこれ十分…いや十五分は経過してるんじゃないだろうか。
別に意味なく見つめ合ってる訳ではない。昨夜、一時的とはいえ無自覚無意識に師匠(予定)が掛けた術を破ってベルを元に戻せたもんだから、「あの要領で術を解け!」と強制されてるのだ。
いや、最初は抵抗したよ?だって万が一解けたとしたら、また襲われる可能性大だし。誓約が有効だと信じたいけど、昨晩の事があるからイマイチ安心できないというか…。
『だったら、今後は本物の蛇みたく振る舞う。金輪際助けがあると思うなよ』
だけど、ベルの絶対零度な脅し文句に俺は屈した。力を封印されてても、俺のフリして交渉したり知恵を貸してくれるのは、正直とっても助かるからだ。
くそぅ、蛇の姿でのディープキスでは誤魔化されなかったか…。
しかし、昨夜はビギナーズラックだったと言うべきなのか…。一応頑張って「元に戻れ?」と念を送りながらベルを見つめてるのだが、全く何も変化なしな訳で…。
顔と顔を限界まで近づけ、それこそ眉間に縦皺何本も作って頑張ってるんだけど、術の発動どころかうんともすんとも反応なしだ。
当然ベルの機嫌も悪くなる一方で、目が限界まで細くなりチロチロと舌の出し入れも早くなる。流石に疲れてしまい、見開きすぎてドライアイ気味の目を閉じため息を吐いた。
「なぁベル。やっぱり昨夜のアレって偶々?だったんだよ。俺にはまだ無理…」
『嘘つけ!絶対手ェ抜いてんだろ!真剣にやれこの愚図が!!』
「いてぇ!!」
間髪入れずにビシッと痛恨の尻尾ビンタが飛んできた。地味どころかめっちゃ痛いっ!やっぱ昨日からの怒りは継続中か。思わず両手を離してしまったが、ベルは素早く腕からスルスル上がって首に巻きつきシャーと牙を剥く。
『心配せんでもまだ襲わねぇってんだろが!つーか、テメェのクソッタレな誓約でどの道襲えねぇよ!』
「だからぁ、本当にダメなんだって!…ってちょっと待て!お前『まだ』って何だよ?!」
俺はヒリヒリする頬を摩りながらジト目でベルを見下ろすが、ツッコミは綺麗にスルーして「さっさと続けろ!」と尻尾の先端でペチペチ叩いて促してくる。
因みに、いつもなら頭の上かに居るフゥだけど。昨夜のベル(本体)の膨大な魔力に恐れをなして、ちょっとビクビクしながら距離をとって浮いていた。どうやらベルが低級魔族じゃなく、ヒエラルキーの頂点レベルって分かったらしい。
結局、俺は将軍がお昼ご飯と王宮からの報告を持って来てくれるまで、ベルのスパルタ特訓に付き合わされる羽目になったのだった。
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