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第五章
ラシャド
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「そうですか。でしたら、北の大陸に行かれるのは余りお勧めしません。まあ、魅了師殿でしたら危険はご自身で回避されるとは思いますが…」
――え?!北の大陸って人族にとって危険なの?
そういえば、北の大陸には人間がほぼいないって言っていたっけ。成る程、南大陸と逆で人族が亜人族に差別されるって事か!
「まあ…それもありますが、色々な意味で危険ですね。ですからあの大陸には百戦錬磨の大商人か、友好国の実力者しか訪れません」
俺の言葉に、ザビア将軍は少し困ったような表情で答えてくれたけど。差別もだけど他に何が危険なんだろう。ベルは興味ないぞとばかりに目を瞑ってるし。
「色々って、例えばどんな?」
「それは…」
ザビア将軍が言葉を続けようとした矢先、周囲がざわめき出す。
兵士達の視線の先を見れば、小さく砂煙が立ち昇っている。そしてその砂煙の中に、複数の人影がうっすらと確認する事が出来た。
「…どうやら迎えが来たようですね」
ザビア将軍の表情が険しくなった。
そうこうしている内に、目の前に高位そうな軍服を着た一群が 火竜に乗って到着する。すると、シェンナ姫や俺達と共にいた一般兵達全てが一斉に膝を折り、彼らに首を垂れた。
『あれが火竜かー!』
名前の通り、紅い色をしたコモドドラゴンのような姿を想像していたのだが、砂色に近い色合いの固そうな鱗を身に纏ったその姿形は、どちらかというとイグアナに近い。
ただ、イグアナと違って、デカい。
尻尾の長さを合わせれば、5mはありそうだ。
そんな火竜の中でも、一際デカい一頭に乗った軍人の元に、ゲイルガが転がる様に駆け寄った。
「ラ、ラシャド様!お待ちしておりました!!」
ラシャドと呼ばれたその男は、ゲイルガを一瞥すると俺達の方へとゆっくり視線を向けた。
あのゲイルガが平身低頭で挨拶をしている所を見ると、かなり身分の高い奴なのだろう。軍服に身を包んだ身体は細身だが、がっしりとしている。所謂細マッチョだ。
短めに切られた髪はアッシュグレー。瞳はシルバーに近く、吊り上がり気味という事もあって、やや冷たい印象受けるものの、容姿は全体的にザビア将軍と張る程整っている。年齢は見た目だと二十代中盤…と若そうだ。
「…姫君と、その兄君がいらっしゃるようだが…。兄君は想定内として…ゲイルガ」
「ヒッ!な、なんでしょうか?」
「確か私は数人の供は認めたが、アレは違うだろう?一体何者だ?」
男の視線は、明らかに俺に対して固定されている。その冷たい刺すような視線に、ゾクリと背筋に震えが走った。
ゲイルガの身体も、底冷えのする声音にブルブルと震え出す。
確かに、どう見ても普通のお供では無いけどさ。それにしたって、初対面の人間に対して『アレ』は無いだろうが。ゲイルガの上役だけあって失礼な奴だな。
『………』
内心憤慨していた俺は、狸寝入りしていたベルの目がゆっくり開き、不遜な態度で睨みつけているラシャドという男をじっと見た後で双眼を細めたのに気づかなかった。
「…そ…それが…。く、『黒の魅了師』…に御座います」
冷や汗を滂沱と流しながらのゲイルガの言葉に、ラシャドの瞳が僅かに見開かれる。腹心の部下達だろう、一般兵とは明らかに違う後方の男達も名称を聞いて息を呑んだ。
「く、黒の魅了師…?!」
「馬鹿な、有り得んだろう?!」
驚愕を隠せず言葉を漏らす部下達に、ラシャドは素早く鋭い一瞥を投げつけ黙らせた。そして再び俺に視線を戻したが、先程とは違う…どこか挑戦するような眼光を宿していた。
――え?!北の大陸って人族にとって危険なの?
そういえば、北の大陸には人間がほぼいないって言っていたっけ。成る程、南大陸と逆で人族が亜人族に差別されるって事か!
「まあ…それもありますが、色々な意味で危険ですね。ですからあの大陸には百戦錬磨の大商人か、友好国の実力者しか訪れません」
俺の言葉に、ザビア将軍は少し困ったような表情で答えてくれたけど。差別もだけど他に何が危険なんだろう。ベルは興味ないぞとばかりに目を瞑ってるし。
「色々って、例えばどんな?」
「それは…」
ザビア将軍が言葉を続けようとした矢先、周囲がざわめき出す。
兵士達の視線の先を見れば、小さく砂煙が立ち昇っている。そしてその砂煙の中に、複数の人影がうっすらと確認する事が出来た。
「…どうやら迎えが来たようですね」
ザビア将軍の表情が険しくなった。
そうこうしている内に、目の前に高位そうな軍服を着た一群が 火竜に乗って到着する。すると、シェンナ姫や俺達と共にいた一般兵達全てが一斉に膝を折り、彼らに首を垂れた。
『あれが火竜かー!』
名前の通り、紅い色をしたコモドドラゴンのような姿を想像していたのだが、砂色に近い色合いの固そうな鱗を身に纏ったその姿形は、どちらかというとイグアナに近い。
ただ、イグアナと違って、デカい。
尻尾の長さを合わせれば、5mはありそうだ。
そんな火竜の中でも、一際デカい一頭に乗った軍人の元に、ゲイルガが転がる様に駆け寄った。
「ラ、ラシャド様!お待ちしておりました!!」
ラシャドと呼ばれたその男は、ゲイルガを一瞥すると俺達の方へとゆっくり視線を向けた。
あのゲイルガが平身低頭で挨拶をしている所を見ると、かなり身分の高い奴なのだろう。軍服に身を包んだ身体は細身だが、がっしりとしている。所謂細マッチョだ。
短めに切られた髪はアッシュグレー。瞳はシルバーに近く、吊り上がり気味という事もあって、やや冷たい印象受けるものの、容姿は全体的にザビア将軍と張る程整っている。年齢は見た目だと二十代中盤…と若そうだ。
「…姫君と、その兄君がいらっしゃるようだが…。兄君は想定内として…ゲイルガ」
「ヒッ!な、なんでしょうか?」
「確か私は数人の供は認めたが、アレは違うだろう?一体何者だ?」
男の視線は、明らかに俺に対して固定されている。その冷たい刺すような視線に、ゾクリと背筋に震えが走った。
ゲイルガの身体も、底冷えのする声音にブルブルと震え出す。
確かに、どう見ても普通のお供では無いけどさ。それにしたって、初対面の人間に対して『アレ』は無いだろうが。ゲイルガの上役だけあって失礼な奴だな。
『………』
内心憤慨していた俺は、狸寝入りしていたベルの目がゆっくり開き、不遜な態度で睨みつけているラシャドという男をじっと見た後で双眼を細めたのに気づかなかった。
「…そ…それが…。く、『黒の魅了師』…に御座います」
冷や汗を滂沱と流しながらのゲイルガの言葉に、ラシャドの瞳が僅かに見開かれる。腹心の部下達だろう、一般兵とは明らかに違う後方の男達も名称を聞いて息を呑んだ。
「く、黒の魅了師…?!」
「馬鹿な、有り得んだろう?!」
驚愕を隠せず言葉を漏らす部下達に、ラシャドは素早く鋭い一瞥を投げつけ黙らせた。そして再び俺に視線を戻したが、先程とは違う…どこか挑戦するような眼光を宿していた。
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