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第六章
まさか…!?
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「はっ!?」
途端。それは粘着物となってべったり貼りつき、全身を溶かさんとするスライムと化した。
「!!ぐ、ぎゃぁああ!!」
「あっははは!随分好い声で鳴くじゃねぇか!」
ラウルが不自由な翼をばたつかせ、狂ったようにのたうち回る様を見てベルは声を出して笑い、愉しげに双眼を細めた。
「上位悪魔なら、ギリギリ消滅は避けられる程度の『魔毒』をくれてやった。先刻の返礼だ、存分に味わえ」
今や謁見の間に響くのは、悪魔公の高笑いと上位悪魔の絶叫だけになっている。
召喚された黒の精霊同士の対峙なんて、可視化で目に出来る人間など滅多に居ない。
ましてや、位は違っても上位種同士だ。これがもし闘技場とかの試合だったら、第三者の観衆として興奮する者もいる…かもだけど…。
『え、えげつない…!えげつなさ過ぎる!!』
ベルの一方的過ぎる蹂躙、かつ壮絶な公開リンチに、敵側の人間達は「次は自分だ!」と全員真っ青になって、今にも泡吹いて倒れそうになっていた。
そして、いまいち状況を把握しきってない国王や王太子も顔色を無くしちゃってるし、ザビア将軍もシェンナ姫にこの凄惨さを見せない様抱き締めながら、顔を引き攣らせている。
流石は悪徳を好み、無慈悲と謳われる黒の王様。本領発揮して、敵味方関係なくドン引かせてるよ…。
変態悪魔に散々嫌な目に遭った俺でも、流石に引き攣ってしまう容赦の無さ加減だ。しかもベル、めっちゃ愉しそうにラウルが苦しむ姿を見てる。
「ん?何だユキヤその目は。お望み通りグリフォンの呪いを壊してやったってのに、嬉しくねえのかよ?」
「…いや…。嬉しいんだけど、さ…」
「だったら問題ねぇだろ?あのゴミに、魔力を利子つけて返してやっただけだしな」
「………」
涼しい顔で事もなげにそう言うベルに、俺は何も答えられず半目を向けるしかなかった。
『ベル…。やっぱり、毒盛られたのを根に持ってたんだ。いや、屈辱だったろうから当然だろうけど…でもさ!』
わざわざ毒のレベル爆上げさせて、しかも硫酸仕様にするって!?あの七転八倒っぷりを見るに、本当にギリギリ消滅しないレベルってのが分かるんだけど!
「ぐ…がぁああッ!!」
と、その時。ラウムから咆哮が上がり、シューシューと蒸気?を噴いていた身体が膨張したかと思うと、へばりついていた赤黒スライムを消し飛ばした。
続いて黒い瘴気が所々溶解し破損していた羽や服等を包み、元通りに再生させていく。
「は…はぁ、はっ…!!」
「ほぅ、短時間で俺の毒を消したか。『黒の祝福』の恩恵を受けたとはいえ、腐っても大伯爵とほざくだけあるなぁ?」
再び腕を組みせせら笑うベルに対し、ラウムは四つん這いでぜいぜいと息を吐きながら、苦痛に歪んだ顔を上げた。
「だ…からぁ!貴方様だけは召喚されて欲しくなかったんですよぉお!!七大君主イチ無慈悲且つえげつない貴方様だけはっ!!」
『いやいや。元々いたんだけどなベル、黒蛇の姿で』
涙目で喚きまくるラウルに、俺は一応心でツッコミを入れておく。
ってか、あんだけベルに痛めつけられたのに割りかし元気だなコイツ。あ、大理石陥没級の衝撃を受けた顔も無事だった!本当に、流石は腐っても伯爵位の悪魔だなと少し感心してしまった。
「黙れゴミが。誰が貴様に発言を赦した?」
「ギッ!!」
ギラリと真紅に殺気がこもり、威圧となってラウルを襲う。何とか翼でそれを防ぐも、浴びた表面の羽がぼろぼろと崩れていて、衝撃の強さを物語っていた。
「ぐうっ…!」
ラウルは、ベルの圧倒的な力に手も足も出ないでいる。何より、見下していた人間達の前で辱められ、苦痛より堪え難い屈辱に牙をかち鳴らしていた。
不意に、ちらっとこちらを見たラウルの双眼と目が合った。不可抗力で『魅了』してしまったからか、ヤツの真紅にはいまだ俺への強い執着が宿っている。
グルル…と喉奥で唸る音が聞こえた気がした。
餓えた手負いの獣が、獲物に喰らい付きたくて堪らない。そんな表現がぴったりな目の前の悪魔に、ぞっと背筋が冷えた。
「…おいゴミ。俺のモノにまだ色目使うつもりか?」
「っ!い、いぇ!」
ベルの顔に影が差し、一段と低くなった声と共に威圧が重くなる。
途端に全身を震わせ、ラウルは床に平伏したが、あくまでも無慈悲な宣告が叩きつけられた。
「生殺与奪は俺の手の内にある。テメェのしでかしを考えれば、俺が下すものは、何だか分かるな…?」
「お、お赦しを!!どうぞ御慈悲を!!」
翼を縮こめ、床に頭を擦り付けんばかりに平伏し慈悲を乞うラウルだったが、ベルはあくまで無慈悲だった。
「覚悟を決めろ。元々、テメェの『三つ頭』の威を笠に着た傲慢さが鼻についてたから丁度いい」
「っ!み、『三つ頭』!?わ、ワタクシの王を侮辱するなど…!!」
「ぁあ?ゲスにも一寸の忠義か?そう言えば、あの気障野郎の土手っ腹に風穴空けてやったから、今も反吐の中で呻いてるかもな」
『ど、土手っ腹に風穴…!?』
事もなげに口にしたベルの不穏ワードの数々に、顔が引き攣った。確かラウルの主って、『王』だからベルと同じ七大君主の一柱。『三つ頭』って、もしかして…。
「まぁ流石に、一ヶ月もありゃ穴は塞がったか?他の奴らは知らんが」
…え?ベル、その話っぷりだと他の六大君主にも重傷負わせたの!?嘘だよね!?一体何がどうしてそんな事!!
『!一ヶ月前って…。俺がベルを誤って召喚した時期じゃ!?』
「あの『全能召喚』ですね!貴方様の仕出かしは、怒り狂った『我が王』より聞き及んでいましたよぉ!」
ベルの無遠慮な発言に耐えかねたのか、それとも怒りが恐怖に勝ったのか。ラウルはガバリと身体を起こし、憤怒の形相で指差して喚き出した。
「貴方様は、『我が王』だけではなく他の王達にも悉く重傷を負わせて!御自身だけ魔法陣に飛び込ん…!?」
ラウルはそこまで言ってから、はっと何かに気付いたみたいにベルから俺へと視線を移し、驚愕と衝撃に彩られた双眼を見開いた。
「ま、まさか…!この御方が!?」
ベルは唖然となったラウルへ口角を上げる。そして組んでいた腕を解くと、俺の腰に手を回して強引に引き寄せてしまった。
「うわっ!?」
戸惑い気味にベルを見上げた俺だったが、顎をしゃくり上げられ超絶な美貌が近づいて…。
「っ ん!」
瞬く間もなく唇を奪われていた。
途端。それは粘着物となってべったり貼りつき、全身を溶かさんとするスライムと化した。
「!!ぐ、ぎゃぁああ!!」
「あっははは!随分好い声で鳴くじゃねぇか!」
ラウルが不自由な翼をばたつかせ、狂ったようにのたうち回る様を見てベルは声を出して笑い、愉しげに双眼を細めた。
「上位悪魔なら、ギリギリ消滅は避けられる程度の『魔毒』をくれてやった。先刻の返礼だ、存分に味わえ」
今や謁見の間に響くのは、悪魔公の高笑いと上位悪魔の絶叫だけになっている。
召喚された黒の精霊同士の対峙なんて、可視化で目に出来る人間など滅多に居ない。
ましてや、位は違っても上位種同士だ。これがもし闘技場とかの試合だったら、第三者の観衆として興奮する者もいる…かもだけど…。
『え、えげつない…!えげつなさ過ぎる!!』
ベルの一方的過ぎる蹂躙、かつ壮絶な公開リンチに、敵側の人間達は「次は自分だ!」と全員真っ青になって、今にも泡吹いて倒れそうになっていた。
そして、いまいち状況を把握しきってない国王や王太子も顔色を無くしちゃってるし、ザビア将軍もシェンナ姫にこの凄惨さを見せない様抱き締めながら、顔を引き攣らせている。
流石は悪徳を好み、無慈悲と謳われる黒の王様。本領発揮して、敵味方関係なくドン引かせてるよ…。
変態悪魔に散々嫌な目に遭った俺でも、流石に引き攣ってしまう容赦の無さ加減だ。しかもベル、めっちゃ愉しそうにラウルが苦しむ姿を見てる。
「ん?何だユキヤその目は。お望み通りグリフォンの呪いを壊してやったってのに、嬉しくねえのかよ?」
「…いや…。嬉しいんだけど、さ…」
「だったら問題ねぇだろ?あのゴミに、魔力を利子つけて返してやっただけだしな」
「………」
涼しい顔で事もなげにそう言うベルに、俺は何も答えられず半目を向けるしかなかった。
『ベル…。やっぱり、毒盛られたのを根に持ってたんだ。いや、屈辱だったろうから当然だろうけど…でもさ!』
わざわざ毒のレベル爆上げさせて、しかも硫酸仕様にするって!?あの七転八倒っぷりを見るに、本当にギリギリ消滅しないレベルってのが分かるんだけど!
「ぐ…がぁああッ!!」
と、その時。ラウムから咆哮が上がり、シューシューと蒸気?を噴いていた身体が膨張したかと思うと、へばりついていた赤黒スライムを消し飛ばした。
続いて黒い瘴気が所々溶解し破損していた羽や服等を包み、元通りに再生させていく。
「は…はぁ、はっ…!!」
「ほぅ、短時間で俺の毒を消したか。『黒の祝福』の恩恵を受けたとはいえ、腐っても大伯爵とほざくだけあるなぁ?」
再び腕を組みせせら笑うベルに対し、ラウムは四つん這いでぜいぜいと息を吐きながら、苦痛に歪んだ顔を上げた。
「だ…からぁ!貴方様だけは召喚されて欲しくなかったんですよぉお!!七大君主イチ無慈悲且つえげつない貴方様だけはっ!!」
『いやいや。元々いたんだけどなベル、黒蛇の姿で』
涙目で喚きまくるラウルに、俺は一応心でツッコミを入れておく。
ってか、あんだけベルに痛めつけられたのに割りかし元気だなコイツ。あ、大理石陥没級の衝撃を受けた顔も無事だった!本当に、流石は腐っても伯爵位の悪魔だなと少し感心してしまった。
「黙れゴミが。誰が貴様に発言を赦した?」
「ギッ!!」
ギラリと真紅に殺気がこもり、威圧となってラウルを襲う。何とか翼でそれを防ぐも、浴びた表面の羽がぼろぼろと崩れていて、衝撃の強さを物語っていた。
「ぐうっ…!」
ラウルは、ベルの圧倒的な力に手も足も出ないでいる。何より、見下していた人間達の前で辱められ、苦痛より堪え難い屈辱に牙をかち鳴らしていた。
不意に、ちらっとこちらを見たラウルの双眼と目が合った。不可抗力で『魅了』してしまったからか、ヤツの真紅にはいまだ俺への強い執着が宿っている。
グルル…と喉奥で唸る音が聞こえた気がした。
餓えた手負いの獣が、獲物に喰らい付きたくて堪らない。そんな表現がぴったりな目の前の悪魔に、ぞっと背筋が冷えた。
「…おいゴミ。俺のモノにまだ色目使うつもりか?」
「っ!い、いぇ!」
ベルの顔に影が差し、一段と低くなった声と共に威圧が重くなる。
途端に全身を震わせ、ラウルは床に平伏したが、あくまでも無慈悲な宣告が叩きつけられた。
「生殺与奪は俺の手の内にある。テメェのしでかしを考えれば、俺が下すものは、何だか分かるな…?」
「お、お赦しを!!どうぞ御慈悲を!!」
翼を縮こめ、床に頭を擦り付けんばかりに平伏し慈悲を乞うラウルだったが、ベルはあくまで無慈悲だった。
「覚悟を決めろ。元々、テメェの『三つ頭』の威を笠に着た傲慢さが鼻についてたから丁度いい」
「っ!み、『三つ頭』!?わ、ワタクシの王を侮辱するなど…!!」
「ぁあ?ゲスにも一寸の忠義か?そう言えば、あの気障野郎の土手っ腹に風穴空けてやったから、今も反吐の中で呻いてるかもな」
『ど、土手っ腹に風穴…!?』
事もなげに口にしたベルの不穏ワードの数々に、顔が引き攣った。確かラウルの主って、『王』だからベルと同じ七大君主の一柱。『三つ頭』って、もしかして…。
「まぁ流石に、一ヶ月もありゃ穴は塞がったか?他の奴らは知らんが」
…え?ベル、その話っぷりだと他の六大君主にも重傷負わせたの!?嘘だよね!?一体何がどうしてそんな事!!
『!一ヶ月前って…。俺がベルを誤って召喚した時期じゃ!?』
「あの『全能召喚』ですね!貴方様の仕出かしは、怒り狂った『我が王』より聞き及んでいましたよぉ!」
ベルの無遠慮な発言に耐えかねたのか、それとも怒りが恐怖に勝ったのか。ラウルはガバリと身体を起こし、憤怒の形相で指差して喚き出した。
「貴方様は、『我が王』だけではなく他の王達にも悉く重傷を負わせて!御自身だけ魔法陣に飛び込ん…!?」
ラウルはそこまで言ってから、はっと何かに気付いたみたいにベルから俺へと視線を移し、驚愕と衝撃に彩られた双眼を見開いた。
「ま、まさか…!この御方が!?」
ベルは唖然となったラウルへ口角を上げる。そして組んでいた腕を解くと、俺の腰に手を回して強引に引き寄せてしまった。
「うわっ!?」
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