第2の人生は若返ってから

マユリ

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第8章 日常と非日常

第98話 一面の花畑

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……ここは?
何処か懐かしさを感じます。でも、知らない所の筈なんですけどね。辺り一面花だらけで何処までも続いています。これって花畑って言うのでしょうか?そんな事を考えている私の頬を、風が心地よく肌を撫でていきその心地よさに思わず目を閉じてしまいます。

…一つ訂正ですね。私の背中の向こう側に川らしき物が見えます。どうしてなんでしょう。あそこにだけは行ってはいけない気がします。

「正解だよ。あそこは貴方にはまだ早い。久しぶり…。いや、初めましてと言うべきかな。真凜さん」

…この方は誰?

長い腰まである艶のある真っ直ぐの黒髪、それと同じ黒い瞳。
…何処か懐かしい気持ちになりますね。…あれ?この方は知らない初めて会う人の筈ですよね?…それに着物?彼着物を着ていますよ!…男性の着物って良いですよね。それにとても似合っていますよ。

「クスッ。ありがとうございます。」

……あれ?私喋ってましたっけ?

「いいえ、でも、こちらでは会話がなくても話すことは出来ますからね。」

そうなんですね。って事は私の考えている事バレまくりですか!…でも、別に困る事ないですけどね。

「……貴方は、変わらないですね。」

「はい、何か言いましたか?」

小さくですが声が聞こえた気がして問い掛けます。

「いえ、何も言っていませんよ。ただ、貴方は今此処にいるべきではないですからね。……丁度良いですね。」

そう言って彼は、川と反対側を見ます。わたしもつられて見ますが花が地平線まで続いている景色しか見えません。…なにもないですよね?

「目には見えませんよ。目を閉じて音に集中してみて下さい。」

私は、彼に言われた通り目を閉じて音に集中します。何も聞こえませんね…。でも、何故か彼の言う事は信じられる気がして音に集中し続けます。

すると何処からか声が聞こえてきた気がします。思わず驚いて目を開けようとすると。

「そのまま目を閉じて、その声に集中して下さい。」

…誰?…誰かが私を呼んでいる…。
…なんでそんな悲しそうに私を呼んでいるの?
微かに途切れ途切れですが、私を呼んでいる…。

余りにも悲しそうなその声に私の胸が痛くなる。そして気がつくと涙が出ていた。
…この声を私は知っている?だって、私の心がその声に反応している。
……この人に会いたい…。

「…………。」

……声にならない声。出てくる涙が止まらない…。
そして一歩、その声が聞こえる方へと身体が前に出る。

「…そのまま、目を閉じたままで声の方へと進んで下さい。」

「…はい。」

優しげな声に私は頷くと声のする方へと一歩、また一歩と進んで行きます。前に進む度に声は少しずつですが聞こえやすくなっていく。
そして私は声の方へ向かって歩いている内に、声に誘われるように身体を預けると、いつの間にか眠るように意識を無くしていくのでした。





「…貴方は本当に変わらない。私達は変わってしまったのに…。」

そう言うと彼女が消えた方を見る。先程迄あそこには貴方がいた。久し振りに見た貴方は余りにも変わらなくて…。

「……このまま此処にいては駄目ですね。」

…まだ私には心の準備が足りなかったようです。貴方を一瞬ですが、此処に引き留めようとしてしまいました…。

「相変わらず、ハッキリしない男ね。貴方があの方に会いたいと言ったから役目を交換してあげたのに。」

そう言うと後ろから現れた彼女に私は顔を向ける。

「…すみません。ですが会えて良かったですよ。」

そう心から言える。私のそんな満足した顔を見た彼女は、私に背を向けると。

「行くわよ。今度こそ間違えないようにする為にも急がなくちゃ。」

「そうですね。」

そう言って私達はその場から消えるのでした。


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