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序章 再会は突然に

004 心の声が漏れた

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----------ジャンケンに負けてから二分後----------



「亮平ー。亮平ー。ダメだ。固まっちゃってるよー」

 始業式が終わったあとの休み時間。亮平は、固まっていた。同じ方法で負けた自分にあきれて。

「りょーへー。現実こっちに戻ってこーい!」

 と未帆の声が聞こえた次の瞬間、

「バチコン!」

 大きな音がなるとともに、亮平の肩に痛みが走った。

「痛いじゃないかよ」

 そう言って亮平が未帆の方に顔を向けなおすと、未帆が『またやってしまった』みたいな顔をしていた。

「何、未帆って、人が意識が戻ってきていないとはいえいきなり本気で人の肩たたくの?」
「いや、ごめんね。私的にはちょっとだけ強く叩いたつもりだったんだけど……」

 大きな音が鳴るぐらいのものを『軽く』とは言わないんじゃないのかな・・・。

「あれでちょっとって……。もしかして、他の力も?」
「……そう。握力とか、背筋力とか」

 握力と背筋力も強いと。未帆を見ても、そんな風には見えない。

「握力何㎏?」
「あんまり言いたくないんだけど……」
「まあまあ。そんなこと言わずにさあ」

 未帆のどこにそのような力が秘められているのか、興味が湧いてきた。

「誰にもバラさないでね?」
「大丈夫。それに、どうせ新体力テストで、みんなの前で先生に言われるんだから」
「……わかった。握力は……」

(そんなに言えないほど強い風には見えないんだけどな……。またまた、女子の中でかなり強い方ぐらいなんじゃないの?)

 亮平は、完全に見誤っていた。握力が女子の中で強いぐらいなら、普通に話すだろう。かなりもったいぶるということは、それぐらいではすまないぐらい強いということだ。当然、亮平の予想を大きく上回っていた。

 未帆が亮平の耳にささやく。

「ひゃ、110kg」

(!!!)

 110kg!それはもう東成中の男女含めて一番強いのではないのか。なんて表現すればいいのだろう。

「バケモノですなぁー」

 口から声が出きった瞬間、急に冷気と殺気を目の前から感じ取った。ヤバい。なんで心の中で叫んだつもりのことが口にでる?

「りょーへー?」

 殺気はさらに強くなっていく。未帆は顔は笑っている表情になっているが、目がまったく笑っていない。

(ああ、俺はここで果てるんだな)

 亮平は覚悟を決めた。と、その時。

「キーンコーンカーンコーン」

 チャイムという今の亮平にとっては救いの鐘が鳴ったのは、亮平が未帆にぶっ飛ばされる一秒前だった。その後の、『起立』の声を聞き逃すほど、亮平は安堵していた。

 だが、亮平はあることに気づく。

(この二時間目が終わったら?)

 亮平はあと50分後に迫った殺気立った未帆にシバカれる未来に、二時間目中ずっとおびえる羽目になったのである。
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