21 / 77
第1章 亮平回想編
020 出撃
しおりを挟む
「ついに、か」
あの過酷な練習が始まってから約二週間、亮平は、そうつぶやいていた。
今日は反抗作戦の決行当日。開始までに六年にバレても一発アウト。失敗してもアウト。だというのに、亮平は特に緊張していなかった。むしろ、『六年に勝ってやろうじゃねえか』という気持ちになっていた。
兄貴の練習はきつかった。何回も行動不能までに追い込まれた。最初の日は、全員が手で腹を抑えて転がっていた。
だが、次の日には少し様子は変わっていた。兄貴の様子だ。
初日は少しばかり余裕そうにしていた兄貴だったが、次の日になると明らかに余裕が無くなっていた。
そして、次の週。亮平の突き出した拳が兄貴のみぞおちにクリーンヒットした。
だが、そこで『やった』と思って追撃をしなかったのが仇になった。
一度は倒れる振りをした兄貴が、一瞬で間合いを詰めて殴りかかってきたのだ。亮平は、打ちのめされて床に沈んだ。
「とにかく、一旦倒れたとしても何発も殴り続けろ」
その日の終わりに、兄貴にそう言われた。
そして、その翌週の練習が終わった後。事件は起きた。
横瀬さんから『緊急』だと言われて亮平達は横瀬さんの家に集合した。学校がある日に集まったことは無かったので、その場にいた全員が疑問に思った。
その疑問の答えは、すぐに出た。それも、最悪の答えが。
----------反抗作戦が六年にわずかに漏れた----------
兄貴が切迫した表情で言ったその「事実」は、亮平達には信じられない事実だった。
反抗作戦はもともとゴールデンウィーク前に実行する予定だったが、緊急的に今日に変更された。漏れた原因は、誰かしらがつぶやいたことをたまたま聞いたのだろう。
「で、俺と横瀬さんと三岸さんが先導するから、みんなは六年一組に突入。その後は、六年なら全員殴る。これでいいね」
担任が居なくなったタイミングで、クラス全員に確認を取る。
予鈴が鳴れば六年の教室に移動させられる。その時に五年一組はそのまま六の一へ、それ以外のクラスの人は全員運動場に出て、予鈴がなったら六の一に直行。前々から決まっていた作戦だった。
六年に漏れている情報は限定的なため、本当にあるかどうかはまだ六年は半信半疑。それを利用して、一気に畳みこむ。
亮平は時計に目をやる。時計の針はゆっくりと、でも確実に時を刻んでいる。
「亮ちゃん、大丈夫なの?」
「だからその呼び方はやめろって。作戦は正直成功するか分からない。でも、このまま放っておいたら変わる可能性はゼロだ。どっちがいい?」
「……それは、変わる方がいいけど。でも、やっぱり怖い……」
友ちゃんは怖がっている。
(でも、今止める訳には行かないんだ)
校内放送用の大きなスピーカーから、チャイムの音が流れた。担任が六年一組に行くように促す。
六年一組の目の前にいくと、教師が漏れた情報の事について問いただしてくる。
「ねえ、六年生を攻撃しようっていう計画を立ててるって噂が……」
その時、階段から大きな足音が聞こえてきた。教師たちは、『遅れてきやがって』という表情をしている。
そして、五年全員が六年一組の目の前に集合した。教師が他の六年の教室に行くよう怒鳴るが、全員動かない。ただ、六年一組のドアを見つめていた。
「早く分かれ!?」
早速生徒を殴って言うことを聞かせようとした教師に、数人が一斉に頭やみぞおちを攻撃する。その教師はその場に崩れ落ちる。そこにも容赦なく攻撃が飛んでいく。
(もう後戻りは、できないんだ)
もう後には戻れない状況となった。分かってはいたことだが、ここで怖気着くようでは士気が下がってしまう。
「うおおぉぉぉら! いくぞ!」
亮平はそう叫んだ。ほかの五年生も同じように叫んだ。
そして、亮平は六年一組のドアを開けた。
あの過酷な練習が始まってから約二週間、亮平は、そうつぶやいていた。
今日は反抗作戦の決行当日。開始までに六年にバレても一発アウト。失敗してもアウト。だというのに、亮平は特に緊張していなかった。むしろ、『六年に勝ってやろうじゃねえか』という気持ちになっていた。
兄貴の練習はきつかった。何回も行動不能までに追い込まれた。最初の日は、全員が手で腹を抑えて転がっていた。
だが、次の日には少し様子は変わっていた。兄貴の様子だ。
初日は少しばかり余裕そうにしていた兄貴だったが、次の日になると明らかに余裕が無くなっていた。
そして、次の週。亮平の突き出した拳が兄貴のみぞおちにクリーンヒットした。
だが、そこで『やった』と思って追撃をしなかったのが仇になった。
一度は倒れる振りをした兄貴が、一瞬で間合いを詰めて殴りかかってきたのだ。亮平は、打ちのめされて床に沈んだ。
「とにかく、一旦倒れたとしても何発も殴り続けろ」
その日の終わりに、兄貴にそう言われた。
そして、その翌週の練習が終わった後。事件は起きた。
横瀬さんから『緊急』だと言われて亮平達は横瀬さんの家に集合した。学校がある日に集まったことは無かったので、その場にいた全員が疑問に思った。
その疑問の答えは、すぐに出た。それも、最悪の答えが。
----------反抗作戦が六年にわずかに漏れた----------
兄貴が切迫した表情で言ったその「事実」は、亮平達には信じられない事実だった。
反抗作戦はもともとゴールデンウィーク前に実行する予定だったが、緊急的に今日に変更された。漏れた原因は、誰かしらがつぶやいたことをたまたま聞いたのだろう。
「で、俺と横瀬さんと三岸さんが先導するから、みんなは六年一組に突入。その後は、六年なら全員殴る。これでいいね」
担任が居なくなったタイミングで、クラス全員に確認を取る。
予鈴が鳴れば六年の教室に移動させられる。その時に五年一組はそのまま六の一へ、それ以外のクラスの人は全員運動場に出て、予鈴がなったら六の一に直行。前々から決まっていた作戦だった。
六年に漏れている情報は限定的なため、本当にあるかどうかはまだ六年は半信半疑。それを利用して、一気に畳みこむ。
亮平は時計に目をやる。時計の針はゆっくりと、でも確実に時を刻んでいる。
「亮ちゃん、大丈夫なの?」
「だからその呼び方はやめろって。作戦は正直成功するか分からない。でも、このまま放っておいたら変わる可能性はゼロだ。どっちがいい?」
「……それは、変わる方がいいけど。でも、やっぱり怖い……」
友ちゃんは怖がっている。
(でも、今止める訳には行かないんだ)
校内放送用の大きなスピーカーから、チャイムの音が流れた。担任が六年一組に行くように促す。
六年一組の目の前にいくと、教師が漏れた情報の事について問いただしてくる。
「ねえ、六年生を攻撃しようっていう計画を立ててるって噂が……」
その時、階段から大きな足音が聞こえてきた。教師たちは、『遅れてきやがって』という表情をしている。
そして、五年全員が六年一組の目の前に集合した。教師が他の六年の教室に行くよう怒鳴るが、全員動かない。ただ、六年一組のドアを見つめていた。
「早く分かれ!?」
早速生徒を殴って言うことを聞かせようとした教師に、数人が一斉に頭やみぞおちを攻撃する。その教師はその場に崩れ落ちる。そこにも容赦なく攻撃が飛んでいく。
(もう後戻りは、できないんだ)
もう後には戻れない状況となった。分かってはいたことだが、ここで怖気着くようでは士気が下がってしまう。
「うおおぉぉぉら! いくぞ!」
亮平はそう叫んだ。ほかの五年生も同じように叫んだ。
そして、亮平は六年一組のドアを開けた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる