主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!

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第1章 亮平回想編

019 多数決

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「じゃ、じゃあ、今から賛成か反対かを順番に言ってもらいます」

 三岸さんが、重い口を開き、もう何度目か分からない集会が始まった。

 三岸さんの口が重い理由は全員分かっている。先週の兄貴の件があったからだ。三岸さんは先週の集まりの翌日に横瀬さんから伝わったらしい。

 今日は公園での練習は別の五年が仕切っている。横瀬さんから事情を聞いた三岸さんが、その日中に公園で練習組の中でもともと準リーダー格の子に今日仕切るのを頼んだらしい。

「私は賛成で、それをすることによって横瀬さんの兄さんが望んでいるようになるなら、と思ったからです」

 次は亮平の番だ。亮平は重い口を開く。

「僕は、反対です。理由は、人が犠牲になったら意味がないと思うからです」

 味方から犠牲者がでるなら、勝っても意味がない。それが、一週間かけて亮平が引っ張り出した回答だった。

 その後も、賛成、反対、賛成、反対と表が均等に分かれていった。理由は、亮平や最初に発言した人と同じようなものが多かった。

「……最後は私か」

 三岸さんの隣から回していったため、最後に意見を言うのは三岸さんになる。

 賛成五票、反対五票、残りは一人。これが何を意味するのか、三岸さんも分かっている。そう、三岸さんの意見で兄貴への「答え」が決まるのだ。

「わ、私は……」

 全員が、三岸さんに注目する。三岸さんも相当緊張しているのだろう。声がふるえている。

「……賛成です」

 この瞬間、兄貴の練習内容変更についての返答が「賛成」に決まった。

「理由は、もう被害を受けるのは私たちで最後にしたいからです」

 その理由には、兄貴がどうなるかには全く言及していなかった。

「横瀬さんのお兄さんがどうなってもいいの?」

 反対していた子からの反論が飛んでくるが、三岸さんは予想していたようで、すぐさま切り返す。

「横瀬さんのお兄さんから提案してきたことじゃん。それに、もし夏鈴だけを助けたいのなら、事前に伝えるとか、他に方法はあったわけじゃん? それをしなかったってことは、もうこの『交流タイム』を終わらせてほしいって願いもあるんじゃないの?」

 反対派もすかさず反論する。

「そんなの、横瀬さんのお兄さんにしか分からないじゃない! 藍生(あおい)の思い込みかもしれないじゃん!」
「それなら、『夏鈴のお兄さんが犠牲になるのは嫌だ』も勝手な思い込みでしょ? 夏鈴のお兄さんはそうは思ってほしくないかもしれないじゃん。第一、『六年を倒す』っていう目標については誰も触れずに、夏鈴のお兄さんだどうだとかこうだとか言ってるだけで、根本的に解決してないじゃん!」

 その後もしばらく反対の子と三岸さんの言い合いが続いたが、「根本的な解決」と矛盾しているという二点で反対の子が劣勢になっていった。

「で、とにかく、賛成六票、反対五票。よって、賛成とします!」

 結局、最後は三岸さんが強引に持って行った。

 三岸さんが兄貴に返答を伝えに部屋を出て行った。部屋にいる全員、三岸さんが発言したことについて考えていた。

(もしかしたら、兄貴の気持ちを全く考えずに自分の事ばかり考えて議論していたのかもしれない)

 そう思ったのは、亮平だけではないだろう。亮平の周りにいる人も亮平と同じように、顔に手を当てて考え込んでいる。部屋の中には沈黙が流れた。

 しばらくして部屋のドアが開き、三岸さんと兄貴が入ってきた。

「する、と決まったからには全力で応戦するので、全員本気でかかってこい!でも、一対一が条件な」

 兄貴は本気。今まで考えていたことが全て消し飛ぶ。亮平はもう一度覚悟を決めた。

「それじゃ、初めにやりたい奴、かかってこい!」

 そして、もっとも過酷な練習が幕を開けたのであった。
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