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第2章 ゴールデンウィーク

#008 まさかの(澪視点)

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 帰省した翌日、澪は大型ショッピングセンターの中にいた。

 澪は昨日、祖父母の家に着いた後すぐ寝た。車酔いで気持ち悪かったのもあって、すぐに寝ていたらしい。

 今日は、もともと買い物に出かける予定だったらしい。このショッピングモールは今年に入ってからできたらしい。

(たしかに、去年はこんな大きい建物なんて建ってなかったなぁ)

 去年を振り返って、記憶にないことを確認する。

 澪は今、ショッピングモールの中のベンチに座って、ゲームをしている。澪はとくに買い物には興味がないし、自分のほしいものを買ってもらえるわけではないからだ。

 時々、昨日の車酔いの事を思い出すが、そのたびに『ここは車の中じゃないから大丈夫』と自分に言い聞かせていた。

 買い物は三十分程度で終わったらしく、遠くに父と母の姿が見えた。

 そのまま澪達はショッピングモールを出ると、車に乗り込み、祖父母宅へと向かった。

 ショッピングモールを出るときに、澪に向かって視線が突き刺さっていた事は、その時の澪は知らなかった。






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「ピロリン」

 スマホから着信音が鳴る。澪は急いで着信を確認する。

 ショッピングモールに行った昨日とは違い、今日は外に出る用事もないので、澪は祖父母宅でだらだらしていた。

『こっちに帰省の内容書いてたかー。ま、それはともかく、酒井さんって、昨日の午前中に外に出てた?』16:19

(???)

 澪の頭に疑問符がたくさん浮かんだ。確かに昨日はショッピングモールに午前中行っていたから、外には出ていた。問題はそこではなく、なぜ西森さんがそのことを知っているのかということである。

『昨日の午前中ならいや、ショッピングモールに行ってたけど。それがどうかしたの?』16:20

 既読はすぐに付いたが、返信は四十秒ぐらいかかった。

『いや、亮平が昨日に、『澪は今どこにいるか』を聞いてきて、その後すぐに「なんでもない」って返信してきて。なにかあるな、と思ったから聞いてみただけ。』16:21

(亮平くんが?)

 亮平の言い訳の下手さは澪もよくわかっている。そして、亮平も「何でもない」はだいたい何かがある。

 亮平が澪の位置を聞いてきたということだから、その澪のいる位置が重要だったのだろう。

『亮平の帰省先が酒井さんの帰省先にかなり近いって友佳から聞いたのも、私が酒井さんにさっきの質問をした理由なんだけど』16:21

(亮平くんと私の帰省先の位置が近い!?)

 澪にとっては初耳だった。友佳にも、そんな事は言われたことがなかったのだ。

(それって、亮平くんが私の事をショッピングモールで見たって事?)

 様々な証拠から、澪はそう考えた。しかし、合っているかと言われれば断言はできない。

 澪は、今考えたことは心の中にしまっておくことにした。

『詳しいことは今日また亮平に聞くから。じゃ、今日はここらへんで』16:23

 未帆が抜けた。このまま画面を開いていてもしょうがないので、澪もスマホの画面を切って、ゲームをすることにした。

(亮平くんが近くにいる?)

 その考えは、いつまでたっても澪の頭の中から消え去ることはなかった。
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