俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177

文字の大きさ
19 / 49
男女混☆合サッカー大会

019 ここは公共の場ですよ

しおりを挟む
 気分の高まりようがない、堕落しきった雰囲気。天井に付いた塵をはたいても、体を動かして逃げる事を拒否しそうなクラスの様相である。

 クラスの委員長が場を取り仕切り、事前会議で決まった事項を垂れ流す。説明そっちのけで参考書とノートを机に広げる不真面目くんを注意しようとはしない。

 サッカーという球技は、ボール一個でゲームが成立するのがメリット。資金力に乏しい国や学校でも練習し放題で、より才能を見出されやすいスポーツと言える。

 ……だからって、クラス全員でやらなきゃいけないのか……?

 職員会議と部長会談で自動的に定まったイベントは、生徒が何といおうと実行される。拒否権が与えられているのは、高校の総責任者である校長だけなのだ。

 黒板を照らす電灯が電池切れで、この無計画なサッカー大会の未来を暗示している。蛍光灯ならもっと不気味な空気を演出できたのに、と健介の意識は自席から離れていた。

 原稿をそのまま読む委員長を差し置いて、ピンクのヘアピン女子が手を挙げた。肘が一直線に伸びていると、見ていて気持ち良くなる。自信家の彼女が下手に出るのは、不安定な土台に両足を置いている時しかない。

 指名されるのを待たずして、情熱に燃えるスポーツ少女が疑問を投げかけた。『今日の予定』と記された黒板にも質疑応答の時間は用意されているのだが、おかまいなしだ。

「……サッカーのスタメンって、どう決めるんですか? やる気の無い人を選んでも仕方がないので、有志を募るべきだと思います!」

 悠奈は上体をやや捻ると、健介にウィンクした。事実上の出場要請である。周りの男子がざわめき立ったのは言うまでもない。

 ……悠奈は、何も知らない男子からの印象がやけに高いんだよな……。

 彼女は、手と足を封印さえしてしまえば理想の受け身少女に大変身する。言動に中二病が混ざる熱血スポーツ少女が、人気を出せずに売れ残ることがあるのだろうか。

 悠奈と付き合う上で足枷になるのが、彼女の異常なまでの正義感だろう。

 規則から胴体を乗り出すと、すぐに水平薙ぎで地面に転がり落ちる。友達であり幼馴染でもある健介にさえ容赦がないのだから、恋人が出来ようとも手加減はしない。

「……では、陸上部で足の速い多田さんは決定と言うことで?」

 クラスのまとめ役を率先して引き受けるのではなく、時間を引き延ばしてチャイムを迎えたい欲望が隠せていない。

 議論に積極的な姿勢を見せる生徒が多いクラスなら、野次や空き缶の一つや二つが宙を舞う。利益を分配せず独り占めする独裁者はただちに排除され、直接民主制で暮らすが運営されていく。

 対して、健介たちの学級は地盤から枠まで白アリに食い荒らされている。進行能力ゼロの司会を選出したのも、推薦でランダムに決定されることを誰も止めなかったからだ。

 ……麻里は、下からの圧力を押さえるだけで精いっぱいだし、なにより学校から目を付けられて立候補すらさせてもらえないし……。

 大魔王と恐れられる麻里を学校会議に据えた方が劇薬になりそうなものだが、面倒事を起こされたくない学校が被選挙権を奪い取ってしまっている。いつの時代も、波乱の平等より安定した腐敗が好まれるのは変わっていない。

「……それでもどうぞ! どうせ、出るつもりだったし……」

 圧力で悠奈を密閉容器へ押し縮めようとしたのだろうが、彼女に裏技は通用しなかった。酸素を燃料にして火花が散る火薬庫に、みすみす火花を供給してしまったようなものである。

「多田さんが出るなら、私ももちろん出るよ! 委員長、ふたりの名前をよろしくね」

 誘爆で、世界の独裁者麻里の闘争心に火が付いた。これで、二コンボ達成だ。

 悪の帝国が名乗りを上げたことで、悠奈に追従しようと挙手の準備をしていた軟弱男子軍団が凍り付く。かわいこちゃんとサッカーをしたいのはやまやまだが、触れてはいけないあの人に目を付けられるリスクは負えないと言うことだ。

 ……この二人が絡んで、いい方向に転んだ試しが……。

 悠奈と麻里が居合わせた日で、健介が巻き込まれなかった日は無かったはず。騒動に引き込まれ、向こうから事件を起こし、化学反応の余波で被害を受け……。結果丸く収まったとしても、健介のプラスにはなっていない。

「……マリちゃん、職権乱用はいけないよ……? 私はちゃんと許可されたけど、マリちゃんは何も言われてないよね……?」
「やれるなら、いつもみたいに攻撃してきたらどーう? それに、この中で一番サッカーが上手い自信もあるよ?」

 プライベートにはとどまらず、公共の場でもミサイル合戦が開催されてしまった。

 東方、全クラスメートが恐れおののくカリスマリーダー麻里。西方、孤立をいとわない一匹狼系スポコン魂悠奈。戦闘力の差は歴然だが、麻里にはそれを補う人員がいる。

 ……よりによって、クラスの場でやるなよ……。

 健介が硫酸をぶちまけて仲裁をしようとしても、彼女らの動き出した動力機関は止められない。純粋な運動エネルギーで、太陽系の外まで吹っ飛ばされてしまう。

「……ふーん、よっぽど負けず嫌いなんだね。小手先の技術が上手くても、ドリブルスピードには敵わないよ?」
「サッカー初心者にやられるほど、経験者を舐めないでくれるかな?」

 チャイムが鳴るまで、二人の自慢合戦は続いたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

入学初日に告白してきた美少女には、『好き』がないらしい。~欠けた感情を追い求めて~

true177
恋愛
 怠惰に流されて底辺校に入った龍太郎(りゅうたろう)は、差出人不明の手紙で屋上に呼び出される。  待っていたのは、見違えるような美少女。 『キミのことが好きです!』  これはもらった、と興奮するのもつかの間、彼女の様子が見るからにおかしいことに気付く。テンプレートしか話さないのだ。  荒ぶる少女と、それに付き合う龍太郎。一緒に行動する間にも、龍太郎の疑問は積み重なっていく。  そして、違和感が耐えきれなくなった日。彼女が告げた言葉。 「『好き』って、なんだろう……」  この言葉をきっかけにして、彼女の『好き』を探す旅が始まる……。  ※完結まで毎日連載です。内部では既に完結しています。 ※小説家になろう、ハーメルン、pixivにも同一作品を投稿しています。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...