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男女混☆合サッカー大会
031 たかいたかーい
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鼻歌を歌って髪の末端が上下に揺れ動く、ご機嫌の悠奈。己が犯した重大な事実に、目を向けようとしていない。
友達関係のまま、終わるのだろうか。腐れ縁を発揮して、生涯距離を持って付き合っていくことになるのだろうか。
確かなことは、悠奈の非情な行動が空助の恋愛機能を壊してしまったことである。
……一般男子なら、か……。
サッカーで疲れ切った体を、丁寧に揉んでくれる異性の同級生。鏡を覗くと、後ろに美少女が笑顔で手を振ってくれていた安らぎがやってくる。
それが、自分ひとりへの公道となればなおさら感情が乱高下してしまう。事が終わり、自室のベッドに寝転んでも、悠奈の顔が離れなくなる。
自らは特別だと思う人間の、なんと多い事か。全員が個性を発揮できる社会なら、国民全員がニュースに取り上げられていないことに気付かないのは愚者である。
謝って事故の状況を認知してしまった人間に訪れる感情。それは、奢りである。
『健介、早く学食に行こうよ!』
『遅れるから、ちょっと校門で待ってて!』
何気ない会話から、あたかも自らを慮ってくれる気持ちを見出してしまうのだ。長く連なった文章を縦読みするのと、そう本質は変わらない。
「……ぐっすり眠って、いいからね……。起きるまで、ずっとそばにいてあげるから……」
「ふぅ……。片付けが終わったから、帰って来たよ……多田さん!?」
蒸し暑い環境で意識を快眠へと誘った悠奈の施しは、手放しで絶賛するよりない。麻里も頭をほぐしてもらえば、女子関係にもっと寛容になるのではないか。
サッカーゴール運びや、得点の集計係に自ら進んで立候補していた麻里。カリスマ性は健在で、スポーツ大会を運営していこうとする気力を感じられる。ここを離れる前に、同じく責任者だった委員長が逃げたことを愚痴で漏らしていた。
麻里がいつぞやの保健室をやむなく立ち去ったのは、塾に追われていたから。障壁が取り除かれた学校のグラウンドで、延長戦を挑もうとする格好だ。
……麻里としては不本意だろうけど、今は来てほしくなかった……。
まだ、右ももしか手入れをしてもらっていない。バランスを崩すと、平均台みたくマットに頭をぶつけかねないのである。健介の運動音痴さが透視される体験談だ。
「また、マッサージしてる……。健介くんのためになってるから、まだ許すけど……」
「マリちゃんも、一回体験してみとく? 今なら、半額でやってあげるよ?」
「……俺は金を払うのか?」
「健介には、特別サービスでお値段が無料でーす!」
やることなすことに反対意見をぶつけてきた麻里も、健介が甘んじて受け入れていることに配慮した。前回の陰謀論でまくし立てる彼女からは、一段階進化したと褒めていい。
チラシの売り文句が、生で聞けるとは思わなかった。店舗前のキャッチを募集していたとして、悠奈は一発採用間違いなしだ。
一見商売が成立しているかのようだが、悠奈の施術は認可を取っていない非合法のもの。友達の間で勝手に行うのは抵触しないとしても、金を取るとなると別問題である。
……それに、悠奈のやり方は……。
健康になるツボを押すのではなく、身体に悪影響を与えるスポットを避けているだけ。マッサージ箇所は、適当なのだ。
「……上からマッサージするのもいいけど、健介くんにも寄り添わないとダメだよ? 多田さんは、そこで献身してて」
健介の側にそびえ立っていた麻里が、体の上に影を投げかけた。靴を脱いで、馬乗りになろうとする。ベンチと一体化した記憶はない。
一心不乱に凝り固まった筋肉を柔らかくし続けてくれた悠奈も、度が過ぎた行いは看過できなかったようだ。
「……待って待って待って……、この体勢でくすぐられたら健介くんが……!」
悠奈の両手が麻里の脇腹にセットされ、各々の指がぬめったウナギのように表演を這いまわった。筆で皮膚をこすられるよりも強い刺激が、麻里の全身を襲っている。
ベンチにつけた左ひざのみで体のバランスを保っていて、いつ健介に倒れてくるか分からない。跳ね除ける手段は存在しえない、抱きしめて受け止めざるを得なくなる。
悠奈も、一秒先の光景を予測できたようで。
「それなら……」
プラン変更と、麻里の腹部に腕を回した。平均的な女の子体系のどこに筋肉が眠っているのだろうか、彼女の体が高々と持ちあがった。
母親が、キッチンに入ろうとするやんちゃ娘を抱っこしているようだ。娘は地に着かなくなった脚をジタバタ振り回し、母親は下唇を舌で舐めている。
「ほーら、高い高いー。楽しいでちゅねー、お空を飛ぶのは」
狂気に満ちた、悠奈のお遊戯。上空で、麻里を回転させ始めた。もっと回転数をあげなければ、大海原へ飛び立つことは叶わない。
クラスを仕切る独裁者が、たった一人の女子に弄ばれている。麻里からすると、誰にも見てほしくない大失態だ。教室の窓からは青屋根が邪魔になっているとしても、気が気ではない。
健介は、ベンチに寝そべったまま麻里が揺さぶられているのを見守っていた。起き上がって悠奈を止めに入ると、却ってバランスを崩しかねない。
……自力で頑張ってください……。
地震は、体感時間が何倍にも膨れ上がると言う。ヘリコプターのプロペラ体験をしている麻里には、秒針の音がどれくらいの間隔で聞こえているのだろうか。実践する気持ちにはなれない。
悠奈が暴れん坊ロケットを打ち上げてから、一分。
「……降ろして……。このままじゃ、落ちちゃうよ……」
かの強気で自信家である女帝から、降伏の一文を奪取した。
一度目の懇願ごときで、攻撃の手を休める悠奈ではない。
「……もっと、ちゃんとした謝罪が欲しいな……」
「……私が……、悪かったから……」
竹に切れ込みを入れると、割りやすくなる。切断しやすいマジックカットも、細かい刻みが袋に付いている。
プライドに亀裂を入れられた麻里は、今日かされていなガラスだった。悠奈にハンマーを振り下ろされ、粉々に砕け落ちた。
地上に生還した後の麻里は、標高による気温の違いで体を震わしていた。
友達関係のまま、終わるのだろうか。腐れ縁を発揮して、生涯距離を持って付き合っていくことになるのだろうか。
確かなことは、悠奈の非情な行動が空助の恋愛機能を壊してしまったことである。
……一般男子なら、か……。
サッカーで疲れ切った体を、丁寧に揉んでくれる異性の同級生。鏡を覗くと、後ろに美少女が笑顔で手を振ってくれていた安らぎがやってくる。
それが、自分ひとりへの公道となればなおさら感情が乱高下してしまう。事が終わり、自室のベッドに寝転んでも、悠奈の顔が離れなくなる。
自らは特別だと思う人間の、なんと多い事か。全員が個性を発揮できる社会なら、国民全員がニュースに取り上げられていないことに気付かないのは愚者である。
謝って事故の状況を認知してしまった人間に訪れる感情。それは、奢りである。
『健介、早く学食に行こうよ!』
『遅れるから、ちょっと校門で待ってて!』
何気ない会話から、あたかも自らを慮ってくれる気持ちを見出してしまうのだ。長く連なった文章を縦読みするのと、そう本質は変わらない。
「……ぐっすり眠って、いいからね……。起きるまで、ずっとそばにいてあげるから……」
「ふぅ……。片付けが終わったから、帰って来たよ……多田さん!?」
蒸し暑い環境で意識を快眠へと誘った悠奈の施しは、手放しで絶賛するよりない。麻里も頭をほぐしてもらえば、女子関係にもっと寛容になるのではないか。
サッカーゴール運びや、得点の集計係に自ら進んで立候補していた麻里。カリスマ性は健在で、スポーツ大会を運営していこうとする気力を感じられる。ここを離れる前に、同じく責任者だった委員長が逃げたことを愚痴で漏らしていた。
麻里がいつぞやの保健室をやむなく立ち去ったのは、塾に追われていたから。障壁が取り除かれた学校のグラウンドで、延長戦を挑もうとする格好だ。
……麻里としては不本意だろうけど、今は来てほしくなかった……。
まだ、右ももしか手入れをしてもらっていない。バランスを崩すと、平均台みたくマットに頭をぶつけかねないのである。健介の運動音痴さが透視される体験談だ。
「また、マッサージしてる……。健介くんのためになってるから、まだ許すけど……」
「マリちゃんも、一回体験してみとく? 今なら、半額でやってあげるよ?」
「……俺は金を払うのか?」
「健介には、特別サービスでお値段が無料でーす!」
やることなすことに反対意見をぶつけてきた麻里も、健介が甘んじて受け入れていることに配慮した。前回の陰謀論でまくし立てる彼女からは、一段階進化したと褒めていい。
チラシの売り文句が、生で聞けるとは思わなかった。店舗前のキャッチを募集していたとして、悠奈は一発採用間違いなしだ。
一見商売が成立しているかのようだが、悠奈の施術は認可を取っていない非合法のもの。友達の間で勝手に行うのは抵触しないとしても、金を取るとなると別問題である。
……それに、悠奈のやり方は……。
健康になるツボを押すのではなく、身体に悪影響を与えるスポットを避けているだけ。マッサージ箇所は、適当なのだ。
「……上からマッサージするのもいいけど、健介くんにも寄り添わないとダメだよ? 多田さんは、そこで献身してて」
健介の側にそびえ立っていた麻里が、体の上に影を投げかけた。靴を脱いで、馬乗りになろうとする。ベンチと一体化した記憶はない。
一心不乱に凝り固まった筋肉を柔らかくし続けてくれた悠奈も、度が過ぎた行いは看過できなかったようだ。
「……待って待って待って……、この体勢でくすぐられたら健介くんが……!」
悠奈の両手が麻里の脇腹にセットされ、各々の指がぬめったウナギのように表演を這いまわった。筆で皮膚をこすられるよりも強い刺激が、麻里の全身を襲っている。
ベンチにつけた左ひざのみで体のバランスを保っていて、いつ健介に倒れてくるか分からない。跳ね除ける手段は存在しえない、抱きしめて受け止めざるを得なくなる。
悠奈も、一秒先の光景を予測できたようで。
「それなら……」
プラン変更と、麻里の腹部に腕を回した。平均的な女の子体系のどこに筋肉が眠っているのだろうか、彼女の体が高々と持ちあがった。
母親が、キッチンに入ろうとするやんちゃ娘を抱っこしているようだ。娘は地に着かなくなった脚をジタバタ振り回し、母親は下唇を舌で舐めている。
「ほーら、高い高いー。楽しいでちゅねー、お空を飛ぶのは」
狂気に満ちた、悠奈のお遊戯。上空で、麻里を回転させ始めた。もっと回転数をあげなければ、大海原へ飛び立つことは叶わない。
クラスを仕切る独裁者が、たった一人の女子に弄ばれている。麻里からすると、誰にも見てほしくない大失態だ。教室の窓からは青屋根が邪魔になっているとしても、気が気ではない。
健介は、ベンチに寝そべったまま麻里が揺さぶられているのを見守っていた。起き上がって悠奈を止めに入ると、却ってバランスを崩しかねない。
……自力で頑張ってください……。
地震は、体感時間が何倍にも膨れ上がると言う。ヘリコプターのプロペラ体験をしている麻里には、秒針の音がどれくらいの間隔で聞こえているのだろうか。実践する気持ちにはなれない。
悠奈が暴れん坊ロケットを打ち上げてから、一分。
「……降ろして……。このままじゃ、落ちちゃうよ……」
かの強気で自信家である女帝から、降伏の一文を奪取した。
一度目の懇願ごときで、攻撃の手を休める悠奈ではない。
「……もっと、ちゃんとした謝罪が欲しいな……」
「……私が……、悪かったから……」
竹に切れ込みを入れると、割りやすくなる。切断しやすいマジックカットも、細かい刻みが袋に付いている。
プライドに亀裂を入れられた麻里は、今日かされていなガラスだった。悠奈にハンマーを振り下ろされ、粉々に砕け落ちた。
地上に生還した後の麻里は、標高による気温の違いで体を震わしていた。
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