入学初日に告白してきた美少女には、『好き』がないらしい。~欠けた感情を追い求めて~

true177

文字の大きさ
13 / 47
Chapter3 内からの蝕み

File13:女王の出現

しおりを挟む
 一週間の輪廻は、気怠い朝から始まる。学生にも社会人にも、容赦なく月曜日が訪れるのだ。直近の二日で伸びきった体のスイッチを入れ、冴えない頭で電車に乗り込む。

 龍太郎は、校門の前までやってきていた。プレートに刻まれた金文字の高校名が、かつての栄光を醸し出している。校舎の至る所に落書きがされ、校長の画像を加工して貼り付ける奴が後を絶たない今の状況を、教師陣はどう捉えているのだろうか。

 立ち漕ぎの自転車が、トラックと張り合うように校内へと走り抜けていく。これでも、バイクを乗り回して女子生徒を連れまわす輩よりは幾ばくか健全だ。彼らは、『運転免許取得禁止』の校則だけは律儀に守っている。
 この地獄で生き残る方法は、悪目立ちしないこと。出る杭は、打たれるばかりか電動ドリルで削られてしまう。

(……美紀、大丈夫なのか……?)

 彼女は、高校デビュー初週で大博打に負けてしまった。他クラスで様子はあまり見に行けないが、厄介事に巻き込まれていないかが龍太郎の心をチクチク刺す。

 校門を入ってすぐの中庭には、手入れもされず色あせた花々たち。雑草が大勢を支配していて、もはやどちらが栽培されていたのか見分けがつかない。高校の質にふさわしい庭である。

(……俺も、これに……)

 龍太郎も、この沼に飲み込まれていたかもしれない。心では抜け出したいともがいても、行動に移さなければ周りに同化してしまう。
 『美紀を、どうにかする』。強力な一本の矢が、龍太郎の傾きやすい精神をつなぎとめていた。膨大な感情のうねりが、堕落した漆黒の誘いを撥ねつけているのだ。

「そこの、バカ面してボーっとしてるキミ!」

 遠くから、持ち主不明の弾ける声がかかった。下駄箱へと続く道を眺めても、魂の抜けた人間は見つからない。誰のことなのだろうか。

 平気でスカートの丈を短くしている、メイクの濃い有象無象の女子が、雲の子を散らすようにはけていった。それとは反対に、輪になって一人の冷徹な空気を纏う女子に集結する者たちもいた。

(……何なんだ……?)

 入学してまだ二週間の底辺高校初心者に、暗黙のルールは通用しない。何か、禁断の糸を切ってしまったのだろうか。脳があまり回転せず、悪寒も身震いもしない。

「もう一回言うよ? 珍しくきちんと制服を着てるキミ! キミだよ!」

 朝っぱらから、高校を覆うどんよりとした空気を切り裂く声。
 明らかに、彼女は自身を周りに誇示していた。

 面倒くさがりな龍太郎だが、本能に従って流石に光り輝く女子の元へと駆け足した。

(……美紀と同じ手口で……?)

 今度も、騙されない。ハニートラップは、龍太郎に逆効果だ。

 茶色がかった、毛先が輪郭に沿って大きく曲がっている髪。ショートヘアーで、重厚さは感じられない。
 吊り上がった目尻から、世の中全てを下僕とみなす圧力が生み出されている。彼女を本気で怒らす事が禁じ手なのは、龍太郎でなくとも理解させられる。

「……誰か分からないけど、何、その態度……。目の前にいるのが誰か、分かってる……」

 取り巻きの一味に、虫けらの目で軽蔑された。女子には女子なりの事情があるのだろうが、この高校から外れたがっている龍太郎からすると知ったことではない。

 輪の真ん中にいる彼女は、特段常識から脱線していない。ブレザーに身をおさめ、ピアスの穴を開けた形跡もなさそうだ。

「……あんたたち、暫く口を塞いどいて。この子と、サシで話したいから」

 文字通り、上振れていた空気が凍った。手を組んで弄っていた取り巻きらが、動きを止めた。いや、止めさせられたと敲(たた)き直すべきか。

 超高気圧から吹き出す暴風に、胸を張って上から目線だった金魚のフンたちが散った。龍太郎をこの世の物とは思えぬ眼光で睨みつけ、各々校舎へ入っていった。
 一言で、この気迫。背中に虎でも宿しているのではなかろうか。野球で中々優勝できない鬱憤を、ここでまき散らされても困る。

 この場を支配する、台風の目となった彼女。視線を周囲に張り巡らせ、龍太郎を物陰へと連れてきた。
手首を掴まないで欲しかった。血流が途絶えてしまう。

 龍太郎にしか聞き取れない小さな声で、彼女がささやく。

「……キミ、だよね? あの子と一緒に居たの」

 具体的な名詞が、一切出てこない。『あの子』と念を押されても、意味不明不適切出題である。

「あの子……、って誰のこと? ……そもそも、名乗りもしないのは失礼じゃないか?」

 美紀と同じ流れだ。主導権は向こう側にあって、龍太郎は次々と鼻垂れる弾幕を盾で防ぐのみ。防衛した後に、報酬は与えられない。

「……それもそうか。……私は、成瀬(なるせ)。何でこんなのを付けたのか、親に聞きたいんだけどね」

 彼女が明後日に気持ちの銃口を向け、気晴らしに一発撃った。暴力団物語の姉御によく似ている。

 『成瀬』が、珍しい苗字ランキングに食い込んでいた記憶は無い。むしろ、メジャーな部類に入るのではなかろうか。下の名前でないのだから、親が名づけることも出来ない。

 彼女に、体を寄せられる。組織の上方に君臨する人は、人付き合いの恥じらいも感じないのだろう。ここまで異性に大胆な仕掛けを行えるのは、龍太郎の思いつく限りだと亜希ただ一人である。

「……あの子だよ、前橋(まえばし)っていう女子。……まさか、知らないとは言わせないよ」

 緩急をつけられると、こちらの体力が無駄に消耗する。念押しの、台本をそのまま読んだ味気なさは異常である。

「……群馬県? 縁もゆかりもない……」

 人違いだ、と断ろうとして。脳内検索エンジンに、一件の記事が見つかった。
 まごうこと無き、ミキミキこと前橋美紀だった。教師以外が誰一人として苗字呼びしない環境で、すぐには思い出せなかった。

 旅する少女に、少なくとも取り巻きが纏わりつくような大将が何の要件なのだろうか。ケツモチをしていて、みかじめ料を請求されても払えないものは払えない。

 龍太郎の詰まりに確信を持った彼女が、畳みかけてきた。

「……そういえば、名前呼びなんだっけ。美紀と、どんな仲? まだ手を繋いだだけ? キスも? 入籍しちゃった?」
「なんなんだ……。勘違いしてるなら訂正すると、美紀は彼女じゃない」

 女子の組織を引っ張るリーダー(龍太郎予測)が、お気楽調子で人の懐に飛び込んでくるのは珍しい。お堅く、傲慢で、鼻息一つで男子を蹴散らせると誤解した自称『トップ・オブ・ザ・ワールド』が典型的な像である。

 美紀が屋上で涙ぐんだ出来事は、龍太郎と亜希に保管されている。巷に流布している噂は、未だに二人がバカップルしているものだ。当然、彼女も知っていなくて当然だ。

(……ただの知り合いじゃなさそうだけどな……?)

 しかし、疑問は残る。

 美紀について深掘っているのなら、美紀との面識が濃いはず。一目ぼれして妄想を垂れ流す男子ではないのだ、最低でも『友達』くらいの照合はあるだろう。

 現実に戻ると、彼女は直接美紀から情報を入手できていない。

(……美紀を、従わせようとしている……?)

 支配下に学年の女子全員を置く野望を携えているなら、辻褄は合う。合ってしまう。

「……彼女じゃないの……? ふーん、あんなに距離近いのに」

 期待と異なる答えに、調子が狂ったらしい。突っ込んできた勢いが減衰し、再起動しなおそうと彼女は目をつぶっていた。

 彼女が美紀を攻略する砦を建設しようとしているなら、龍太郎はその実現を阻止せねばならない。折角稼働したベルトコンベアを、ひょんな事態で停止させたくないのだ。
 損得など、気にならなかった。その辺の空き地に転がされても、計画を瓦解させる。

 まあいい、と成瀬が立ち直った。屈伸して筋肉をほぐし、またしゃがみこむ。

「……そうだとしても、キミは美紀とプライベートで行動してた、そうでしょ? 付き添いか何かの女の子もいたような……」
「……どこから、ファミレスの話が……」
「よし、これで美紀と一緒にいたのがキミだった、って訳だ」

 話がトントン拍子で進んでいく。私的な交流まで見透かされていたとは、恐るべき情報網だ。

(それにしては、自信なさげだったぞ……)

 そういえば、ファミレスで同じ高校の女子にガンを飛ばされた。ぱっと見でリア充だった美紀を爆発させたい身勝手な奴かと思っていたが、全く別の線がここにきて浮上してきた。
 例の女子と、成瀬とを重ねてみる。うん、成瀬だった。

 美紀も、厄介な人物に目をつけられてしまったものだ。カースト上位に腰を据える、積極系女王様の関心を振り払うのは、至難の業である。

「……そんなキミに、成瀬が頼みたいことがあるんだ。……呼びづらいから、キミのことはこれから『龍太郎くん』でいいかな?」

 情報漏洩はもう気にしない。成瀬が総力を挙げれば、クラスの一男子など簡単に見つかる。

 一人称が苗字なのは、理由が気になるところである。本筋の腰を折った未来に続く道が断絶しているので、深追いはしない。

 彼女のなんとなく柔らかい体を摺り寄せる圧に負け、龍太郎は渋々頭を垂らした。

「美紀、どうかしてるの? 昼になっても、弁当箱取り出さないし……。情報、あったら教えて」

 初対面から数分の相手に、同級とはいえ話をつけるのは、如何にもコミュニケーション勝者だ。人の家に土足で上がり込む行為だと、龍太郎は躊躇してしまう。

 確かに、糧にありつく美紀をあまり見ていない。弁当を他クラスに持ち込むのは目立ちすぎであり、かと言って弁当を食べた後だと彼女も決まって机の上が片付いている。

 龍太郎の耳が、ピクリと反応した。

(……帰る時の美紀、やけに元気ないんだよな……)

 龍太郎に、亜希ほどの安心感と信頼感を据えてはくれていない。いないが、それを抜きししても彼女は騒がない。何もない道で躓くのも、何度見てきたことか。
 アイス二つを腹に入れた状態で、更にデザート祭りを完食した一昨日の美紀。やや小柄なこともあって、龍太郎よりも胃袋の絶対値が大きいとも考えにくい。

 違和感と違和感が、交差する。

「……昼に、何も食べてないかもしれない……」

 与えられたピースと、手持ちの情報を当てはめていく。すると、驚くほど隙間のない真実らしき絵が完成した。

 朝食で満たしたはずの胃が、もう新たな食糧を欲している。栄養が脳に集中し、血管が悲鳴を上げている。

 成瀬が、合図無しに立ち上がった。スカートの丈の下限が、目線の高さと合わさった。

「……美紀のことは龍太郎くん、キミの方がよく知ってる。美紀に何かあったら、また成瀬はキミに頼ってもいいかな?」

 居ても立っても居られない、と足踏みしている。アドレナリンが全身に回っているようだ。

 いきなりのことで、肯定の返事しかできなかった。

「……それじゃあ、また時間のある時に」

 嵐のごとく現れた彼女は、引き際も早かった。スカートがめくれ上がるかどうかの速さで、校舎の入口へと駆けていく。
 成瀬の連絡先を、龍太郎は受け取っていない。交換もせずに去っていくとは、よほど急いでいるのだろう。

 彼女の目的は、依然として闇のベールに包まれたまま。当初の予測だった、関わらない方が良い人物ではなさそうだが、どちらに転ぶかは分からない。

 そこら中に雑草が生い茂る、陰湿とした物陰を出たところで。

『……始業時間です……』

 辺りには、誰も居なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。

水鳥川倫理
青春
主人公、目黒碧(めぐろあお)は、学校では始業時間になっても現れない遅刻常習犯でありながら、テストでは常に学年トップの高得点を叩き出す「何とも言えないクズ」として教師たちから扱いにくい存在とされている。しかし、彼には誰にも明かせない二つの大きな秘密があった。 一つ目の秘密は、碧が顔を隠し、声を変えて活動する登録者数158万人を誇るカリスマゲーム実況者「椎崎(しいざき)」であること。配信中の彼は、圧倒的なゲームスキルと軽妙なトークでファンを熱狂させ、学校での「クズ」な自分とは真逆の「カリスマ」として存在していた。 二つ目の秘密は、彼が三人の超絶可愛い幼馴染に囲まれて育ったこと。彼らは全員が同じ誕生日で、血の繋がりにも似た特別な絆で結ばれている。 習志野七瀬(ならしのななせ): 陽光のような明るい笑顔が魅力のツンデレ少女。碧には強い独占欲を見せる。 幕張椎名(まくはりしいな): 誰もが息をのむ美貌を持つ生徒会副会長で、完璧な優等生。碧への愛情は深く、重いメンヘラ気質を秘めている。 検見川浜美波(けみがわはまみなみ): クールな外見ながら、碧の前では甘えん坊になるヤンデレ気質の少女。 だが、碧が知らない三重目の秘密として、この三人の幼馴染たちもまた、それぞれが人気VTuberとして活動していたのだ。 七瀬は元気いっぱいのVTuber「神志名鈴香」。 椎名は知的な毒舌VTuber「神楽坂遥」。 美波はクールで真摯なVTuber「雲雀川美桜」。 学校では周囲の視線を気にしながらも、家では遠慮なく甘え、碧の作った料理を囲む四人。彼らは、互いがカリスマ実況者、あるいは人気VTuberという四重の秘密を知らないまま、最も親密で甘い日常を謳歌している。 幼馴染たちは碧の「椎崎」としての姿を尊敬し、美波に至っては碧の声が「椎崎」の声に似ていると感づき始める。この甘くも危険な関係は、一つの些細なきっかけで秘密が交錯した時、一体どのような結末を迎えるのだろうか。

処理中です...