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【淳平編】2話-6
しおりを挟む「私、葵ちゃんにプレゼントをあげたいです」
「だから無理だって」
「無理じゃありません。サンタさんが子供を喜ばせてあげられないなんて、そんなことあってはならないことですよ。きっと、これは私に与えられた試練なんです。乗り越えてこそのサンタさんです」
日野は力強く言い、拳を握った。ジャングルジムにいる葵に目を向ける。あ、と思った時には、大声で名前を呼んでいた。「葵ちゃん」と呼びかける声に、葵が振り向いた。そんな呼び方で振り向くなよ、と内心で思う。
葵は小走りで近づいて来ると、座っている日野の前に立った。
「葵ちゃんは、何か欲しい物はないですか?」
「おい」
「だ、駄目ですか」
制止するように言うと、日野がおそるおそる聞いてくる。
「聞くのはいいよ。だけど、その前にその葵ちゃんって呼び方をやめてくれないか」
「え、なんでですか。名前、間違ってませんよね」
「間違ってないよ。でも、男だから、ちゃん付けなんてしてほしくないんだ」
日野は驚いて目を見開き、葵をまじまじと見た。
「そうだったんですか、ごめんなさい。でも、この間はすごく可愛い恰好をしていて……あれ、そういえば、今日は男の子みたいな服着てますね」
「あの時は、父親が勝手に着せていたから」
父は葵に女の子の恰好をさせようとする。服装だけではなく、おもちゃも女の子向けの物を渡すし、男の子がするようなゲームなどは絶対に買ってこない。その理由は、亡くなった母にあった。
当時、まだ葵が母のお腹の中にいた頃、その性別は女の子であると教えられていた。胎児の向きによって性別の判断が間違う場合も少なくはないらしいのだが、医者が女の子だと言えば、当然そうなのだと家族は思う。父と母は女の子用の衣類や遊具を用意し、女の子の名前として「葵」と名付けた。
しかし、生まれてきたのは男の子だった。僕も、聞いていた話と違う、と混乱したのを覚えている。母がその事実を知ってから亡くなったのか、知らぬまま亡くなったのかは聞いていない。ただ、それについて父と母が話し合う余裕など無かっただろう。
育児を開始し、父は当たり前のように女の子用の服を着せた。まだ赤ん坊であったし、わざわざ買い替える面倒を省くためにそうしていたのだと思ったが、いつの日からか、女の子用の服を買ってくるようになった。
父の、そうした行為に僕は何度も苦言を呈した。父自身も、後ろめたさのようなものを感じてはいるようで、僕が咎めると、力なく謝ってくる。何故そんなことをするのだと聞けば、困ったように笑うだけだ。
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