サンタの願いと贈り物

紅茶風味

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【淳平編】3話-4

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 十二月に入り、寒さは一段と厳しくなった。朝起きるのがつらいので、リビングの暖房を朝の五時半に付くよう、タイムセットしている。

 出勤時間になると、父が葵を連れて出かけていった。ここ数日は、父が率先して葵を保育園まで送っている。仕事で帰りが遅いことを気にしているのだろう。気まずい空気が流れたままだが、日常生活は意外と普通に送れるものだ。

 玄関で靴を履き、誰もいない廊下に向かって心の中で「行ってきます」と言う。ドアを閉め、鍵を掛けて歩き出す。吐き出す息が白く、口元を漂った。



 学校へ行き、あっという間に授業が終わり、帰宅時間になる。部活動に励む生徒達を後目に、真っ直ぐに校門へと向かった。朝から六時間以上も経っているのに、ついさっき来たばかりのような気がする。

 ふと、校庭の隅に人だかりができているのが見えた。数人の男子生徒たちが固まっている。恰好からみて、サッカー部の一員だろう。彼らは皆、揃って校門の方向を見つめていた。

 見ると、先ほどホームルームを終えたばかりの三上が立っていた。こちらに背を向け、誰かと話している。何かに気づいたように顔を傾け、こちらを振り向いた。隠れていた人物が露わになり、話していた相手の全身が見える。

「じゅ、淳平くーん」

 日野の声が響いたと同時に、僕は全力で彼女に向かって走り出した。大声で名前を呼ぶのを止めて欲しかっただけなのだが、何を勘違いしたのか笑顔で両手を振っている。

 走り寄ってきた僕に、三上は静かに言った。

「知り合いか」
「あ、はい」

 三上は僕の返事を聞くと、冷たい目を日野に向ける。日野は慌てた様子でポーチのベルトを握り締めたが、胸を張って「ほらね」と言った。

「だから言ったじゃないですか」
「待ち合わせなら、他の場所にしてほしい。学校の前にいられては困る。通報されても文句は言えないぞ」

 通報、という言葉にショックを受けたのか、日野が顔を引きつらせて固まった。僕は日野の代わりに、三上に向かって頭を下げた。

「ごめんなさい。もう、学校まで来ないように言います」
「そうしてくれ」
「あの、帰っても大丈夫ですか」

 ご機嫌を伺うように聞くと、三上は小さく「あぁ」と言って、すぐに背を向けて歩いて行った。途端に、日野が大きく息を吐く。

「あぁ、怖かった」
「怒られて当然だよ。学校に関係ない人がうろうろしてたら、誰だって不審者かもしれないって思うだろ」
「不審者……」

 ふと、校庭から向けられる視線に気づいた。先ほどの男子生徒たちが、興味深そうにこちらを見て笑っている。三上がいなくなったせいか、囃し立てるような声も届いてくる。

 僕は日野に視線を送ると、足早に校門を出た。一足遅れて、日野も慌ててついてくる。人目に付くのを避けて、校舎の裏側へ向かった。大通りを歩いて駅まで行くのが嫌だったからだ。学校の外周を歩きながら、隣にいる日野を見た。

「なんで学校に来たんだよ」
「淳平くんに、会いに来たんです」

 怒られていると思ったのか、声が小さい。

「最近、全然会いに来てくれないじゃないですか。私、毎日あの公園にいるのに」
「保育園に行くわけにはいかないから、僕伝いに葵に会おうって魂胆か」

 図星だったようで、俯いて黙ってしまった。

 どうやら、葵の願いを叶えることを諦めていないらしい。母に会うという願いは不可能なのだから、叶えようがないのに、これ以上に何をしようというのだろうか。まさか、死んだ人間を生き返らせるなんてことが出来るわけでもあるまい。

「淳平くん、怒ってますか?」

 日野がおそるおそる、僕の顔を覗きこんだ。

「怒ってないよ」

 そう言うと、少し安心したように、笑顔を見せた。
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