サンタの願いと贈り物

紅茶風味

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【淳平編】4話-3

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 電車を降りて、いつもとは反対の改札口を出た。そこには賑やかな大通りはなく、申し訳程度の商店街が周囲を照らしている。出口近くにあったコンビニで、適当に食べ物を買った。パンやゼリー、飲み物をカゴに入れ、迷った挙句に体温計と冷却シートも入れた。

 コンビニを出て、大粒の雨の中で携帯を開く。先ほど検索しておいた地図を見ながら、家のある場所を目指した。ズボンの裾が雨水を吸い込み、重たくなっていく。

 小さな木造のアパートだった。錆びれた階段を上がり、二階を目指す。屋根がついていたので傘を閉じると、大量の雨水が滴り落ちて、廊下に水溜りをつくった。

 一番奥の部屋のチャイムを押した。返事はない。しばらく待っていると、部屋の中から鈍い物音が聞こえ、ドアが開いた。パジャマ姿の日野は真っ赤な顔で僕を見ると、あぁ、声にならない息を吐き、深々と頭を下げる。

「すみません、本当、すみません……」

 繰り返し言いながら部屋の中に戻り、床に敷いてある布団に倒れこむ。両手で身体を支えながら起き上がるが、空を見つめ、すぐにまた倒れこんでしまった。想像していたよりも、重症なようだ。

「寝てていいよ」
「すみません……」

 布団のすぐ隣に腰を下ろした。ズボンが濡れているので注意しながら座ると、それに気づいた日野が「すみません」とまた言った。

「あそこにタオルがあるので、使ってください」

 指をさした方を見ると、背の低い棚が壁沿いにあった。タオルが数枚、重ねて入れられている。立ち上がってそれを抜き取り、濡れた衣服を拭いた。

 水分を吸収させながら、部屋の中を見る。お世辞にも綺麗とは言えない。物が多いのだ。部屋を囲うようにおもちゃが散乱している。タオルが入っていた棚の上にも、動物のぬいぐるみが隙間無く並べられていた。

「散らかってますよね」
「あぁ、うん、ごめん」

 部屋の中をまじまじと見ていたのが後ろめたくて、思わず謝った。

「子供たちに、プレゼントしようと思って、失敗しちゃったものです」
「これ、全部?」
「押入れにもあります」

 この中に、僕が付き返したリンゴジュースもあるのだろうか。布団のすぐ横には、小さなローテーブルが置かれている。空のコップやテレビのリモコン、郵便物が散らばっているが、そこに薬や体温計の類はない。

「一応、体温計を買ってきたんだけど」
「あ、ありがとうございます……でも、平気です」
「測ったのか?」
「測ってませんが……」

 僕は無言で体温計をパッケージから出すと、日野に差し出した。上気した顔を見る限り、熱が無いようには見えない。測っている間、買ってきたものを袋から出した。何も食べていないと言っていたが、物が食べられる状態ではないようだ。

「お腹、すいてる?」
「すいてます」
「起き上がれる?」
「がんばり、ます」

 ピピピ、と電子音が鳴る。日野は布団の中でもぞもぞと動くと、体温計を取り出した。半ば取り上げるようにして熱を確認し、三十九度の文字に思わず顔が引きつった。

「頑張ったら駄目なレベルじゃないか!」
「ちがう、ちがうんですっ」
「はあ?」

 突然声を上げ、体温計をひったくられた。肩で息をしながら布団の中へと戻り、うつろな目で僕を見る。

「風邪なんかじゃないんです。すみません、ちゃんと説明します。熱はありますが、絶対にうつりませんから……。時間、ありますか?」

 僕は黙って頷いた。
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