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祇音、15の春
しおりを挟む───産寧坂47一期生募集
四条京阪の構内、改札口へと続く通路の壁に等間隔に張られたポスター。
左肩から袈裟懸けに桜の花びらがひらひらと舞う振り袖の着物に
半だらりの帯の後ろ姿。
半身になって振り向いたその横顔は紛れもない先斗町の舞妓の祇音、
つまりは私な訳で。
白粉と紅に彩られたその表情は誰が誰やとも道行く人にはわからないけれど
見る人が見定めればそれはやっぱり私にちがいなく。
「受けてみいひん? 」
「無理やって、うちらなんか書類審査でポイやわ」
「ふふん、あんたわな」
「あんたに言われたないわ」
部活の帰りだろうか、女子高生とおぼしき女子のグループがポスターに視線を落としけらけらとした笑い声を響かせ目の前を通りすぎていく。
NIKE、Prince、addidas といったロゴが躍るスポーツバッグを背中に背負い真っ黒な日焼けしたその顔は今の私には何より眩しく感じられた。
思わず抱えていた巾着袋を隠すように抱き締める。スポーツバッグと巾着袋。
それがその子たちと私を隔てている高い壁のように感じた。
帯と着物の間に挟んだキティちゃんの小銭入れが今日は何かむなしくて。
思えば小学校を出てからこの三年間、着物以外で外に出たことはなかった。家の中や夜遅くコンビニに行くときはさすがにジャージだけどそれ以外は春夏は浴衣、秋冬は小袖の着物という花街では暗黙の取り決めみたいなものがあった
私の知らない世界がそこにある。
遠ざかる自らの分身のような蒼いときの残像を目で追いながら溜め息を一つ二つ溢す。一つ目は小さく二つ目は大きく。
小銭入れに着けた根付けの鈴がチリルンと小さく鳴った。
── やっぱりダメ元でも言わなきゃ。
諦めかけていた想いがまたふつふつと沸き上がってくる。
── やっぱりこの人に会いに行かないとうちは前には進まれへん...
振り返りもう一度通路に彩られたポスターの一枚に視線を向ける。
壁面の上方に張られたそれらは私の背からすれば見上げるような所にあった。
ポスターのモデルになった半玉の舞妓。半年前に撮られたこの写真を使うのも
協会とひと悶着あったらしい。協会というよりも一二三の女将。つまりは私の祖母。
何気に撮られたスナップの写真の類いの使用許可を求められることはそう珍しい事ではない。通常、簡単な審査を受け幾ばくかのギャランティを払えば許可されることが多い。
ただ今回は協会の古参の理事である祖母はこの写真の使用には猛烈に反駁した
それはその写真そのもの扱い方がどうのというのではなく、モデルが実の孫ということでもなく、責任者のなかにある名前を見つけたから。
一二三琴音。
15年前に祇園を捨て赤子を置いて姿を消した彼女の一人娘。
つまりはそれは私の母だった。
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産寧坂47一期生募集
エグゼクティブプロデューサー KOTONE HIHUMI
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