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勇気をください~勇気をください
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見れば渡良瀬繭は腰が引けたのか一歩二歩とジリジリと後ずさりを始めていた、(あんた何言ってんのよ)口元でそう無音で囁いているのが分かった。今日のまゆは悪魔のまゆでみんなの憧れの天使の方のまゆじゃないみたいだ。
そして数十秒の沈黙。まるで水の中で息ができない様な息苦しさを感じていた。
「あんたいくつ?」
唐突に歳を聞かれて思わず固まる。歳なんてここ数年聞かれた事なんてない私だった。
「・・・」
「22・・らしいです」
すかさず後ろから今日初めてのまゆの声が飛ぶ。
「そう。。。あんたがどんな生き方をしてきたか私は知らない。
でも22年間そんなに楽しい思いをして来たんじゃないってことは分かる。
もしかしたら出発点は私とそんなに変わらないんだろうね。
それに確かに遥の言う通り人の心に何かを残す目も持ってる。
けど、ただそれだけのことだよ。
あんたに何ができんの?今?
じゃあ、やってみなさいよ。
今から私はここの学長さんにこの電話を掛ける。
そしてこう言う、ここの大学の沙原璃子という学生を退学処分にしてくださいと。
それですべては終わるわ。
辞めさせる材料はあんたも分かってるように腐るほどある。
ふふっ、できるんでしょ、何でも。
じゃあ残ってみなさいよ、あんたたちの歌とやらで、この大学に!」
「ママ!?」
「あんたは黙ってなさい、はるか。」
「黙んない!もう黙んないっ!」
「はーちゃん?・・」
「だってそうでしょ、何でママは私の前ばっかり走んの?
一人で走りたいのに、一人で走れるのに、何でいつもいるのよっ、
私の前に!」
「なんて目をするの、はーちゃん?
ママに・・ママに、そんな目をするのはやめなさい」
抱きかかえようとする島崎百合の腕をすり抜けて倒れ込むようにして
私の胸に飛び込んでくる遥。その体温が全く伝わってこない氷のような冷たさにはっとする。
「勇気をください・・・」
胸に顔を埋めて丸で呪文のようにそうささやいた。
私に言ったのか神様に言ったのかそれは分からない。
でも確かに聞こえた白咲遥のぎりぎりの心の底からの叫びが・・・。
「・・・ここの大学にも私は来たかったわけじゃないよ。
ママの目の届くところがいいって
だから都心の大学、自分で決めてきたのに。
なのに、ここがいいって・・
授業だって、ほとんど出てないのに全部Aで。
私、みんなからなんて言われてるか知ってる、ねぇママ?」
「・・・ 」
「 A様・・・A様だよ、A様いいねって。。
成績お金で買えていいねって。。。
そんなA様は、ボーイフレンドもママに買って貰うんだろうって。
勿論みんなは私に面と向かってはそんな事は言わない。
みんなママがみんな怖いから
でもその仮面の下は薄笑いを浮かべて私の全てを否定してる。
ねぇ分かる、ママ?
そんな大学で私は毎日を生きてるんだよ
だから、だからもういいよ、ママ。。 」
その声にならないうめき声のような囁きが涙をすする音でかき消されてゆく。
「はーちゃん、ほんとにもういいから、その辺で。。」
遥の涙に誘われるように気が付けばまゆが一歩も二歩も前に乗り出してきていた。けれど彼女が差し出すそんな天使のハンカチも今日の白咲遥の眼には映らないらしい。
「・・・花だって、あの花だってそう 」
「花?・・なんの?」
「アルベッロベッロの周りに咲いてたカトレアやパンジー、
みんなで摘んでみんなが摘んでくれて、舞台の周りに一杯飾って。
ハルルに似合ってるって、はじめてハルルってみんな呼んでくれて。
それがなんかすごく嬉しくて。
お金もかからなくて良かったねって。
だから余ったお金でみんなで売店であんパンと牛乳買おうって。
あんなおいしいパン初めてだった
あんなおいしい牛乳初めて飲んだ
なのに・・・それを汚いって言ったのは誰?
遥に恥かかす気って、みんなをなじったのは誰?
あんな綺麗な花をゴミって言ったのは誰なのよっ!
なんで・・・・ 」
あとはもう言葉にならなかった。体は耐え切れず崩れ落ちる。でもその眼だけは母を捉えて離さなかった。ポロポロと床へ落ちる涙の音が聞こえるようだった
「何なのよ、あんた達。こんな子じゃなかったのよ、この子は。
こんな目を私に返す子じゃなかったのよ、私の白咲遥は!」
確かにそれは今まで見たことのないような遥の眼。
行き場のない、言いようのない怒りと抑えきれない母、白咲百合への思慕が彼女の中で交差する。
これまで携えて来てくれたその手を白咲遥は懸命に振りほどこうとしているように見えた。
自分の為に、
そして愛する母、白咲百合の為に。
そして数十秒の沈黙。まるで水の中で息ができない様な息苦しさを感じていた。
「あんたいくつ?」
唐突に歳を聞かれて思わず固まる。歳なんてここ数年聞かれた事なんてない私だった。
「・・・」
「22・・らしいです」
すかさず後ろから今日初めてのまゆの声が飛ぶ。
「そう。。。あんたがどんな生き方をしてきたか私は知らない。
でも22年間そんなに楽しい思いをして来たんじゃないってことは分かる。
もしかしたら出発点は私とそんなに変わらないんだろうね。
それに確かに遥の言う通り人の心に何かを残す目も持ってる。
けど、ただそれだけのことだよ。
あんたに何ができんの?今?
じゃあ、やってみなさいよ。
今から私はここの学長さんにこの電話を掛ける。
そしてこう言う、ここの大学の沙原璃子という学生を退学処分にしてくださいと。
それですべては終わるわ。
辞めさせる材料はあんたも分かってるように腐るほどある。
ふふっ、できるんでしょ、何でも。
じゃあ残ってみなさいよ、あんたたちの歌とやらで、この大学に!」
「ママ!?」
「あんたは黙ってなさい、はるか。」
「黙んない!もう黙んないっ!」
「はーちゃん?・・」
「だってそうでしょ、何でママは私の前ばっかり走んの?
一人で走りたいのに、一人で走れるのに、何でいつもいるのよっ、
私の前に!」
「なんて目をするの、はーちゃん?
ママに・・ママに、そんな目をするのはやめなさい」
抱きかかえようとする島崎百合の腕をすり抜けて倒れ込むようにして
私の胸に飛び込んでくる遥。その体温が全く伝わってこない氷のような冷たさにはっとする。
「勇気をください・・・」
胸に顔を埋めて丸で呪文のようにそうささやいた。
私に言ったのか神様に言ったのかそれは分からない。
でも確かに聞こえた白咲遥のぎりぎりの心の底からの叫びが・・・。
「・・・ここの大学にも私は来たかったわけじゃないよ。
ママの目の届くところがいいって
だから都心の大学、自分で決めてきたのに。
なのに、ここがいいって・・
授業だって、ほとんど出てないのに全部Aで。
私、みんなからなんて言われてるか知ってる、ねぇママ?」
「・・・ 」
「 A様・・・A様だよ、A様いいねって。。
成績お金で買えていいねって。。。
そんなA様は、ボーイフレンドもママに買って貰うんだろうって。
勿論みんなは私に面と向かってはそんな事は言わない。
みんなママがみんな怖いから
でもその仮面の下は薄笑いを浮かべて私の全てを否定してる。
ねぇ分かる、ママ?
そんな大学で私は毎日を生きてるんだよ
だから、だからもういいよ、ママ。。 」
その声にならないうめき声のような囁きが涙をすする音でかき消されてゆく。
「はーちゃん、ほんとにもういいから、その辺で。。」
遥の涙に誘われるように気が付けばまゆが一歩も二歩も前に乗り出してきていた。けれど彼女が差し出すそんな天使のハンカチも今日の白咲遥の眼には映らないらしい。
「・・・花だって、あの花だってそう 」
「花?・・なんの?」
「アルベッロベッロの周りに咲いてたカトレアやパンジー、
みんなで摘んでみんなが摘んでくれて、舞台の周りに一杯飾って。
ハルルに似合ってるって、はじめてハルルってみんな呼んでくれて。
それがなんかすごく嬉しくて。
お金もかからなくて良かったねって。
だから余ったお金でみんなで売店であんパンと牛乳買おうって。
あんなおいしいパン初めてだった
あんなおいしい牛乳初めて飲んだ
なのに・・・それを汚いって言ったのは誰?
遥に恥かかす気って、みんなをなじったのは誰?
あんな綺麗な花をゴミって言ったのは誰なのよっ!
なんで・・・・ 」
あとはもう言葉にならなかった。体は耐え切れず崩れ落ちる。でもその眼だけは母を捉えて離さなかった。ポロポロと床へ落ちる涙の音が聞こえるようだった
「何なのよ、あんた達。こんな子じゃなかったのよ、この子は。
こんな目を私に返す子じゃなかったのよ、私の白咲遥は!」
確かにそれは今まで見たことのないような遥の眼。
行き場のない、言いようのない怒りと抑えきれない母、白咲百合への思慕が彼女の中で交差する。
これまで携えて来てくれたその手を白咲遥は懸命に振りほどこうとしているように見えた。
自分の為に、
そして愛する母、白咲百合の為に。
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みんなの感想(1件)
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表紙とあらすじ見て、おもしろそ~!と感じて、読み始めてます。
本当に、この時代にいるような臨場感がありますね♪
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ちょうど、私もエントリー中で、主人公とヒロインが大学生という設定でして、親近感を感じました。
お互い頑張りましょう~ヾ(≧▽≦*)o