ソルトアライブ

リトルマナ

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プロローグ②

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20××年4月、砂漠の砂嵐作戦は大詰めに差し掛かっていた。

その日、イラク進駐の米軍主導のNATO有志連合は北部方面に進攻。奪われていた首都バクダッドを五年ぶりに奪還、旧政府軍勢力を一掃し北部奥深くへと押し戻すことに成功する。

戦火を奇跡的に免れた旧市街地の一角にある小さな大学。そこに急遽設えられた各国の為のメディアセンター。真っ赤な煉瓦作りの瀟洒な建物に目に鮮やかな芝生の庭が広がる。周りの木々は深い青緑を湛え、その佇まいに学舎としてのらしさと落ち着きを与えていた。その光景はどこか故郷京都の母校同志社大学を思わせた。

「なんにもなかったみたいよね、ここだけ。」

「相手側の司令官の母校がどうもここらしい。変わらないんだな、どこの国でも土着愛だけは。 部下が気を使ったのか本人が意図的にこを攻撃型することを避けたのか」

待機していた私達CNNを含むアメリカメディアの合同クルーへの取材が解禁されたのは、そんな話をしていた直後。

「女性の君は行かないほうがいい。」

そんなナイスミドルの同僚であり上司でもあるおじ様方に耳を貸さず、まだあちこちに生々しい血糊が付いた装甲車に先を争うように私が乗り込んだのには訳があった。
それは、確保、拘束された少年少女のなかに日本人がいるというひとつの情報。

イラクの各地の拠点には捕虜として捕われていた女性や子供、戦闘要員として使われていた異国の少年少女達が大量に確保されていた。
彼、彼女達は白人や黒人、中近東から中南米、ヨーロッパにまで及ぶ様々な人種で構成され、捕虜や人質としてだけではなく、家族や仲間の一員として扱われていた者も数多くいた。

その中に隠された日米双方とも極めて神経質にならざる得ない案件があった。それは追い求めてはいけないメディア間の暗黙の了解事項とも言えた。




仮の収容施設と姿を変えた市の中心部にある大きな教会。砲弾の跡だろうか、天井や壁に空いた大小様々な穴から柔らかな陽の光りが降り注いでいた。少年少女ということもあるのだろう、数百人にも及ぶその集団は比較的自由に思い思いの時間を過ごせていた。
幼いとは言え昨日までは銃を向け引き金を引いていた彼、彼女たち。
それでも解放直後の安堵感が私達との間に不思議な連帯感を作りあげていた。

その中に長い黒髪が人目をひく、一際鋭い眼光の一人の少女が
いち早く乗り込んだ私達CNNクルーの目に留まる。
腰には刃渡り30センチはゆうに超えるであろうサバイバルナイフ。
右手はその柄をしっかりと握りしめ戦闘体制を崩してはいない。
私達はもうあなたの敵ではない、クルーたちが両手をあげながら少女の方へと歩み寄る。







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