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幼馴染みの奏斗について

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「バレー部のマネージャー、やってみない?」


そう、紫音が奏斗から声をかけられたのはそれはもう唐突だった。

高校二学期の中間テスト。
その最終日の、開放感あふれる帰り道。

寝不足で身体はしんどいが、気持ちだけは晴れやかにそそくさと帰路を急いでいたら、後ろから奏斗に呼び止められたのだ。


「紫音っ!」


はて、と後ろを振り向いた時には小さかった奏斗の姿が、急速に接近してくるところだった。

ちなみに、「これ、衝突されるんじゃない?」と思ってしまうほどのものすごい勢いで走ってきて、急停止した奏斗にびっくりしたのは余談だったりする。

帰り道にばったり出くわせば一緒に帰ったりもするが、今日ほど勢いよく呼び止められたことは今までにない。

よっぽど何か急ぎの用事でもあるのかと、思っていたら、


「バレー部のマネージャー、やってみない?」
 

そう、唐突に告げられたのだ。

正直な紫音の感想として、「それ、そこまで急いで伝えなきゃいけないことなのだろうか?」という疑問が頭をかすめた。

ただ、言われたことが意外過ぎて一瞬思考が停止してしまい、「はい?」という返ししかできなかったけれど。


奏斗は運動部、紫音は文芸部。


なんというか、ある意味住む世界が違う、と紫音は思っている。

幼馴染みだけれど、それ以上でも以下でもない。

はてさて、いったい奏斗はどういうつもりなのだろうか。

こてんと、首を傾げながら、紫音は頭にクエスチョンマークを浮かべたのだった。
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