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3、初めての寮生活
しおりを挟む「なんだか、どっど疲れた~……」
寮の自室へとやってきた私は、そのまま用意されていたベッドにダイブした。
はじめての中学生活、はじめての寮生活。
不安な気持ちが大きかったけれど、ときめき部っていうなんだか少し変わった人たちの集まりに入部することになったのが、一番疲れたかも……。
ごろんと寝返りを打って、天井を見上げる。
寮は一人一部屋になっていて、自炊できるように、小さなキッチンもついている。
食堂もあるから、どこでご飯を食べてもいいみたい。
お風呂も備え付けのシャワーもあるし、大浴場もある。
学校の寮って言うよりも、ホテルみたい。
「ときめき部かぁ……」
私は改めて考えてみる。
文芸部、写真部、軽音部、それに放送部に天文部。
私はどの部活に入ればいいんだろう?
軽音部と放送部の先輩には会えなかったけど、どの部も部員が一人しかいないみたいだし、また今日みたいに勧誘されるかも……。
そう思うと、少し憂鬱な気分になる。
もっと私に決断力があれば、きっとこの部! ってすぐに決められるんだろうけど、それができない。
こういうとき、将来の夢を持っていたら、この部がいい! って決められたのかなぁ……。
ときめき部の五つの部活動はどれも興味があるけれど、すぐには一つに決められそうになかった。
「とにかく! 今はご飯を食べよう!」
ちょうどお腹がぐーっと大きく鳴る。
お腹ぺこぺこじゃ、考えられるものも考えられなくなっちゃうよね!
私は勢いよく起き上がると、ひとまず食堂に向かうことにした。
食堂に行くと、大勢の生徒たちがご飯を食べていた。
食堂はホテルのバイキングのようになっていて、好きなものを好きなだけ自由に取って食べていいみたい。
私はカレーとサラダとデザートにヨーグルトを持って、適当な席に腰を下ろす。
みんな友達とおしゃべりしながら、楽しそうに食べている。
そういえば、今日は入学式だけだったから、クラスの子とあまりおしゃべりできなかったなぁ。
みんなあっという間に部活動見学に行ってしまったし。
クラスメイトでおしゃべりしたのは、星名くんくらいだ。
今までご飯のときは当然お父さんとお母さんと食べていたから、なんだか一人でのご飯って少し寂しい……。
明日はもっとクラスの子に話しかけてみよう!
そう思ったところで、かたんと音を立てて、向かいの椅子が引かれた。
「咲森さん」
「星名くん!」
そこには、ハンバーグともりもりの白米をお盆にのせた、星名くんがいた。
星名くんの笑顔に、なんとなくほっとする。
「俺もここで食べてもいい?」
「もちろん!」
私は快くうなずく。
「一人で寂しかったから、咲森さんがいてよかった」
「わ、私も! 部活に夢中で、まだクラスの子とお話しできてなくて……。だから、星名くんが声をかけてくれて嬉しかったよ!」
「一緒だ!」
星名くんのきらきらした笑顔に、傍に座っていた女の子たちが、「うっ」と言って胸をおさえた。
わかる、わかるよ。
星名くんが笑うと、なんだか心がぽかぽかするもんね。
花が太陽の光を浴びて、元気になるみたいな、そんな感じがする。
二人で一緒に手を合わせて、「いただきます」をする。
「俺もカレーと迷ったんだよなぁ」
「カレーすっごくおいしいよ! 一口食べる?」
「え、いいの? 食べたい!」
そんなやり取りをしていると、私たちに二つの影が落ちた。
「なんか二人、距離近くない? もしかして付き合ってる?」
顔を上げると、そこにいたのは三滝先輩と夏目先輩で。
「先輩! こ、こんばんは!」
さっき別れたばかりの先輩たちは、私と星名くんの横に腰を下ろした。
「はーい、こんばんは。もしかして邪魔しちゃった?」
私と星名くんは、そろって首をぶんぶんと横に振る。
そんな私たちの様子を気にすることなく、夏目先輩はさっそくお盆にのせていた蕎麦をすすっている。
ちなみに三滝先輩は、きつねうどん。
結構おしゃれな料理もあるはずなのに、結局みんなふつうのご飯を選ぶんだなぁ、なんてのんきなことを考えていると、周囲からの視線がより一層こっちに集まってきていることに気がついた。
女の子たちがこちらを見て、なにかこそこそと話している。
その目はそろってハートになっていて、私はなるほど、とうなずく。
三滝先輩も夏目先輩も、それに星名くんもとってもお顔が整ってるもんね。
女の子たちがかっこいいと思うのも無理ないよ。
そんな中にいる平凡な私。
今後ときめき部として活動するなら、きっとこの視線になれなきゃいけないんだろうなぁ。ちょっと大変そう……。
そう思っていると、星名くんが居心地悪そうに、私にだけ聞こえるように小さくささやいた。
「先輩たちって、やっぱりモテるんだね。二人ともかっこいいもんなぁ」
あなたもです、あなたもですよ、と思いながら、私は星名くんに微笑み返した。
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