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プロローグ
プロローグ 暗殺の夜、星海の門
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京の町に、冷たい雨が降っていた。
近江屋の二階、行灯の明かりが障子を透かして揺れる。濡れた畳に、じわりと広がる赤。
刃は容赦なく背を裂き、弾丸が胸を貫いた。坂本龍馬は声を上げる間もなく、力が抜け、膝をついた。
視界が暗く沈む。
だが、その血の面には、ひとつの“光”が映っていた。
雲の裂け目から覗く星。夜天に浮かぶ、わずか一粒の輝き。
「……まだ、やり残しちゅうぜよ」
かすれた吐息とともに、龍馬は崩れ落ちた。
ワーム――異界回廊
闇が世界を裏返す。
夜よりも深い蒼が広がり、無数の光粒が渦を巻いて道を形作る。
そこは“星海”と呼ぶべき空間だった。
声なき声が響く。
――汝の刻(とき)を越えよ。
龍馬の体を、龍の鱗のような光片がすり抜ける。
熱が皮膚に刻まれ、胸に紋様が浮かんだ。鋭い棘と曲線が絡み合う、亀甲のような印。
痛みはあったが、不思議と嫌ではない。
胸の奥に、再び灯が戻ってくるようだった。
星海の奥には、遠い影がいくつも瞬いた。
黒衣に包まれた武市半平太。
獣の血を浴びたかのような岡田以蔵。
数珠を握りしめる中岡慎太郎。
――皆、別の道を渡りつつある。
龍馬は呟く。
「どこへ行くがぜよ……おまんら」
返事はなく、光と闇が重なり合う。
次の瞬間、足元の道が崩れ、龍馬は落下した。
覚醒――奴隷市の檻
砂の匂いと鉄の錆びついた臭気が鼻を突いた。
目を開けると、木で組まれた檻の中。手首には冷たい鎖。
周囲には獣耳や角を持つ異形の者たちが押し込められ、呻き声を上げていた。
「ワーム抜けの人間だとよ」「珍しいな。恩恵を持ってるかもしれん」「だが奴隷に違いはねぇ」
商人の笑い声が混じる。
龍馬は胸元に触れた。そこにはまだ、熱が残っている。
亀甲状の竜の紋が、皮膚の下でじり、と光った。
「……ここは……異界、か」
声に出した瞬間、不思議と違う名が胸に落ちた。
リュオム。
誰に呼ばれたわけでもない。だが、それがこの世界での名であると、直感的に理解した。
近江屋の二階、行灯の明かりが障子を透かして揺れる。濡れた畳に、じわりと広がる赤。
刃は容赦なく背を裂き、弾丸が胸を貫いた。坂本龍馬は声を上げる間もなく、力が抜け、膝をついた。
視界が暗く沈む。
だが、その血の面には、ひとつの“光”が映っていた。
雲の裂け目から覗く星。夜天に浮かぶ、わずか一粒の輝き。
「……まだ、やり残しちゅうぜよ」
かすれた吐息とともに、龍馬は崩れ落ちた。
ワーム――異界回廊
闇が世界を裏返す。
夜よりも深い蒼が広がり、無数の光粒が渦を巻いて道を形作る。
そこは“星海”と呼ぶべき空間だった。
声なき声が響く。
――汝の刻(とき)を越えよ。
龍馬の体を、龍の鱗のような光片がすり抜ける。
熱が皮膚に刻まれ、胸に紋様が浮かんだ。鋭い棘と曲線が絡み合う、亀甲のような印。
痛みはあったが、不思議と嫌ではない。
胸の奥に、再び灯が戻ってくるようだった。
星海の奥には、遠い影がいくつも瞬いた。
黒衣に包まれた武市半平太。
獣の血を浴びたかのような岡田以蔵。
数珠を握りしめる中岡慎太郎。
――皆、別の道を渡りつつある。
龍馬は呟く。
「どこへ行くがぜよ……おまんら」
返事はなく、光と闇が重なり合う。
次の瞬間、足元の道が崩れ、龍馬は落下した。
覚醒――奴隷市の檻
砂の匂いと鉄の錆びついた臭気が鼻を突いた。
目を開けると、木で組まれた檻の中。手首には冷たい鎖。
周囲には獣耳や角を持つ異形の者たちが押し込められ、呻き声を上げていた。
「ワーム抜けの人間だとよ」「珍しいな。恩恵を持ってるかもしれん」「だが奴隷に違いはねぇ」
商人の笑い声が混じる。
龍馬は胸元に触れた。そこにはまだ、熱が残っている。
亀甲状の竜の紋が、皮膚の下でじり、と光った。
「……ここは……異界、か」
声に出した瞬間、不思議と違う名が胸に落ちた。
リュオム。
誰に呼ばれたわけでもない。だが、それがこの世界での名であると、直感的に理解した。
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