【メモリーバンク】記憶ゼロの俺が、量子の魔法で世界を変える ~封じられた過去が今、再構築をはじめる~

カイワレ大根

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第2章

第28話 ゴブリンの巣深部!(後編)破壊の連携――鍾乳石を砕け!

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 仲間が周囲を抑えている今こそ、勝負をかける時。
 リュークは短剣を構え直し、鋭くチーフを睨んだ。

 その直後――

「ぐっ!」

 ガルドが猛然と突撃したものの、チーフはわずかに肩をすくめ――ズルッと半身を捻り、剣を受け流した。

「――くっ!」

 返す刀のように、鋭く拳を振り上げる。

 金属と拳が激突する、重く鈍い音が洞窟に響いた。
 ガルドは即座に剣を盾のように掲げ、その拳を受け止める。

 ガギィッ――!

 金属が悲鳴のような軋みを上げ、腕にビリビリと痺れるほどの衝撃が突き抜ける。

 その瞬間、地面の土煙がドゥバッと激しく舞い上がった。

「チッ……硬ぇな……!」

 ガルドはわずかに膝を折りながらも、後方へ半歩だけ押し込まれつつ、辛うじて踏みとどまった。

 だが、その間にも――

(また影が……!)

 リュークの視界の隅で、再び黒い影がぬるりと蠢き始める。
 今度は横から、這うように、獲物を狙う蛇のように迫ってくる。

「ザック、右だ!」

「うおっ!」

 リュークの叫びと同時に、ザックは反射的に身を翻して跳び退いた。
 ギュッ――と空気を裂く音。

 影はザックの髪先をかすめて通過し、ズグンと地面に突き刺さる。

(ギリギリだ……!)

 追撃が外れたのを見て、チーフの唇が吊り上がる。

 その牙の間から、低くくぐもった唸り声が漏れた。

「ギィ……ギギギ……」

 次の瞬間――
 チーフはわずかに腰を落とし、地をつかむように重心を構え直す。

 その眼光は、完全に“狩る者”のものだった。

 ドンッ!!

 一撃必殺の突きが、音速のごとく繰り出される。

 空気が裂け、風圧が洞窟内の岩肌を削る。

(速い――!)

 ガルドは咄嗟に身を捻り、剣を横に滑らせて受け止める。

 ギギギギギッ!!

 火花が飛び散り、刃と拳が激しくこすれ合い、洞窟に甲高い金属音が響き渡る。
 その反動で、ガルドの肩がきしむように震えた。

 だがチーフは止まらない――
 その勢いのまま、さらに拳を振り上げ、重く叩き込もうとしてくる。

「ぐっ……押される……!」

 ガルドは歯を食いしばりながらバックステップで間合いを取り、かろうじて致命打を逃れた。

 土の床がバキバキと割れ、拳の余波で小石が飛び散る。

 その攻防を、リュークは息を詰めながら見据えていた。

(……影と本体の連携が厄介だ。攻撃は影と交互……それなら、必ず隙が生まれるはずだ)

 リュークは手元の爆裂玉に視線を落とす。

 だが、真正面からでは、あの巨体を完全に止められるとは思えなかった。

(いや――)

 ふと、視界の上――洞窟の天井付近に崩れかけた岩と、鋭く伸びた鍾乳石が目に入る。
(あれだ……あそこを落とせれば、動きを止められる)

 瞬時に作戦が組み上がる。

 リュークは短剣を抜き、チーフの正面へ鋭く投げつけた。

「こっちだ、化け物!」

 ヒュン――!

 刃が空を切り、チーフの肩をわずかにかすめた。

「ギギィッ!」

 怒声を上げたチーフがリュークへと鋭く顔を向ける。

(よし、引きつけた……ここからだ)

 リュークは息を静かに吐き、次の手に移る。

「シャドウファング、さらに誘導しろ!」
「グルル……!」

 黒狼が影の届きにくい側面へ回り込み、牙を剥いて威圧する。
 殺気が場を満たし、チーフの唸り声が荒ぶる。

「ギギィィ……ッ!」

 苛立ちに任せて本能のまま動くその巨体は、リュークとシャドウファングの連携に翻弄され、無意識のうちに壁際へと後退していく。

(そのまま……もっと奥へ……)

 リュークはスリングに小石をセットし、鍾乳石の付け根――崩れかけた岩の継ぎ目へと狙いを定めた。

 横ではガルドとザックが身構え、息を殺して次を待つ。

(狙い通り……今しかない!)

 スリングから放たれた石が、鍾乳石の基部を正確に打ち抜く。

 パキンッ――!

 鋭く乾いた音。
 鍾乳石にヒビが走り、一瞬だけ空気が止まる。
 石が落ちる寸前シャドウファングが素早く飛びのく。

「落ちろ……!」

 グラグラッ……ガラララ――ッ!!

 岩塊と鍾乳石が、唸るような音とともに崩れ落ちる。

 ズゴン! バキッ! ゴギッ!!

 轟音が洞窟に響き渡り、地面が揺れるほどの衝撃が襲う。
 巨大な岩がチーフの肩に直撃し――ズン!
 押し潰すように叩き落ちる。

「ギギィィィィィ……ッ!!」

 獣の悲鳴が洞窟に木霊し、粉塵が舞い上がった。

 シャドウファングとリュークの連携によって完全に壁際へ追い込まれたチーフは、影の防御も間に合わず、上からの落石をまともに浴びる。

 ズガンッ!!

 鍾乳石が鈍く重い音を立てて直撃し、巨体がよろめく。肩口はゴギッと嫌な音を立ててへこみ、岩の棘が肉を抉るようにめり込んでいた。

「ギャ……ギギ……!」

 喉の奥から濁った嗚咽が漏れ、チーフの顔が苦悶に歪む。
 動きが止まった、その刹那――

 リュークは間髪入れずに爆裂玉を足元へと転がした。

「ザック、今だ!」

「おお!」

 ザックが即座に短剣を抜き、寸分違わぬ軌道で爆裂玉へと投擲する。

「爆ぜろ!!」

 ――ドゴォォォン!!!

 轟音が洞窟全体に炸裂し、爆風がチーフを飲み込む。

 ズドォンッ!! ガギャッ!

 チーフは岩壁に叩きつけられ、砕けた石と共に肉が潰れるような音が響いた。

「ギギィィィィィ……ッ!」

 呻き声と共に、チーフの巨体がぐらりと揺れる。

「ガルドさん、今です!」

 リュークの叫びに呼応し、ガルドがスキルを発動し全身の力を込めて**ドンッ!**と
 地を蹴った。

「これで終わりだぁぁぁ!!」

 剣が唸りを上げ、振り抜かれた刃がチーフの首筋に**ズバァッ!!**と深く突き刺さる。

 ブチッ……ゴリッ!

 骨と肉を一度に断ち切る、重く鈍い破壊音。

「ギ……ギギィ……!」

 断末魔を振り絞るように咆哮したその瞬間、首が骨ごと砕けて飛び、巨体は重々しく崩れ落ちた。

 ズシン――……!

 洞窟全体が震えるほどの衝撃。地面が一度、わずかに沈むほどだった。
 ――怪物の死。確かな終息の音。
 だが、それで終わりではなかった。

「シャドウファング、シャーマンだ!」

 リュークの声に、影狼が低く唸る。

「グルルル……!」

 その殺気に反応する暇もなく――

 ズバッ!!

 空気を切り裂く一閃。

「ギ……ィ――!」

 シャーマンの喉がかすかに震えた、その刹那。
 首が**ブチィッ!**と裂け、赤黒い液体を撒き散らしながら宙を舞う。

 一拍遅れて――

 ドボッ……!

 首のない胴体が、膝から崩れ落ち、**ズゥン……!**と重い音を立てて沈み込む。
 黒い霧と血が床に広がり、洞窟には焼けた金属と血の混じる重苦しい匂いが立ちこめていた。

 異形の支配者たちは、静かに、その命を終えた。

 そして――

「ファイアボルト!!」

 間髪入れず、リーナの詠唱が走った。

 放たれた火球が唸りを上げて飛び、背後に残っていたゴブリンたちを飲み込んだ。

「ギャアアアアア!!」

 咆哮すら許されず、灼熱の炎が皮膚を焼き裂き、肉が焦げる匂いが一気に立ち上る。
 体をのたうたせたまま、ゴブリンたちは苦悶の悲鳴を上げて崩れ落ちていった。

 ――その瞬間を逃さず、ザックが横から跳び込む。

「邪魔だ!」

 シャッ――!

 鋭く振り抜かれた短剣が、一体のゴブリンの喉元をズブリと貫く。

 ギギィッ……ゴポッ……!

 濁った呻き声と共に血が泡立ち、ゴブリンは痙攣しながら泡を吐き、崩れるように倒れ込んだ。

 残った最後の一体。

「終わりだ……!」

 ガルドの大剣が、唸りを上げて上から振り下ろされる。

 ズンッ!!!
 ゴシャッ……!!

 鈍く、重く、そして湿った音が響き、ゴブリンの頭部が圧壊する。
 血飛沫と骨片が破裂するように四方に飛び散り、岩壁を赤黒く染め上げた。

 ――静寂。
 ただ、焼け焦げた岩と血の匂い、そして灰と煙が空気を満たしていた。

「……やったのか……?」

 ガルドが荒い息を吐きながら、大剣を地に突き立てて呟く。

 リュークもまた短剣を下ろし、濡れた額を手の甲で拭った。
 指先には、冷えきった汗がびっしりと張り付いている。

(……勝てた。でも――)

 自然と視線は洞窟のさらに奥へと向かっていた。
 そこに、わずかに光を帯びた宝箱がひっそりと佇んでいる。

 リュークは、今も手に残るスキルクリスタルのぬくもりを感じながら、静かに息を吐いた。

(この力……もっと使い方を理解しなければ)

 言葉にならない焦燥と決意が、胸の内を静かに締めつける。

 その背後では、シャドウファングが尾を一度だけ大きく振った。
 まるで「これで終わったと思うなよ」とでも言わんばかりに。

 リュークたちは誰からともなく顔を見合わせ、疲れを滲ませながらも、静かに頷き合う。

 次なる試練を前に。
 彼らは再び、前へと歩き出す――。


 次回: 勝利の残響、沈む影と再起の息吹
 予告:戦いの終わりに、残るのは疲労と決意。力は、まだ足りない。


――――――――――――――――――――――――――――――――
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