【メモリーバンク】記憶ゼロの俺が、量子の魔法で世界を変える ~封じられた過去が今、再構築をはじめる~

カイワレ大根

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第4章

第64話 闇の回廊と不死の軍勢

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「またアンデッドか……!ここで潰しておこう、全員、迎え撃て!」

 ガルドが剣を抜き放ち、力強く号令をかけた。

 リュークも短剣を握り直し、シャドウファングが低く唸りながら敵を鋭く睨みつける。
 その視線の先――すでに人の形を失った異形の存在が現れる。

 骨が剥き出しの腕、腐敗してただれた肉体、焦点の合わない光のない瞳。

 その不気味な視線が、じりじりとリュークたちを捉え、**ズズ……ズン……**と重い足取りで迫ってきた。

「……普通の魔物と違う。殺気がないのに、底知れない不気味さがある」

 リュークの呟きに、ザックが素早く周囲を見渡し、壁際の瓦礫に目をつけた。

「罠を仕掛ける!時間を稼いでくれ!」
「任せろ!」

 ガルドが前に躍り出てアンデッドを引きつけ、大剣を構える。
 アンデッドの錆びた剣が**ギギギ……ッ!と耳障りな音を立て、ガルドの剣と激しくぶつかる。

 その衝撃に、ガルドの足元がズンッ!**と沈み込む。

「重い……!」

 思わずガルドが呻く。

 その瞬間、アンデッドの口からは、生者にはあり得ない**ゴロ……ゴロ……**とかすれた呻きが漏れ出た。

 シャドウファングが影のように滑り込み、敵の足元を襲う。
 鋭い爪が**バキッ!という音と共に鎧の隙間を裂き、紫色の霧のような魔力がシュゥゥ……**と噴き出す。

 だが、アンデッドは倒れない。
 よろけつつも、無表情のまま剣を**ググ……ギリリ……**と持ち上げ、再び振り下ろそうとする。

「しぶといな……!」

 リーナは詠唱に入り、緊張した声を響かせる。

「聖なる光よ、闇を打ち払え――ライトフレア!」

 まばゆい光がアンデッドを包み込むと、**ジュゥゥ……パチパチ……!と焼ける音が空間を満たした。

 腐敗した皮膚が煙を上げ、アンデッドはグワァァ……**と苦悶のような唸り声を上げる。

 だが、それでも奴らは崩れない。
 焼け焦げたまま、無理やり体を動かし、こちらへにじり寄ってくる。

「まだ動くのかよ……!」

 リュークは腰のポーチから細いロープを取り出し、素早く地面に広げた。

 魔力を流し込むと、ロープは**ビク……ビクッ……**と震え、まるで生き物のようにうねり始めた。

(魔力を通せば、操れる気がする、……森での修練の成果、試すしかない)

「動け……縛れ!」

 リュークの叫びと共に、ロープが跳ね上がり、アンデッドの足に**グルル……ギチギチ……**と絡みつく。

 足を縛られたアンデッドは体勢を崩し、**ドゴッ!**と鈍い音を立てて地面に叩きつけられた。

 だが――

「まだ……立つのか」

 骨が**ギギ……ギチ……**ときしみ、アンデッドは再びよろよろと立ち上がろうとする。

 その異様なしぶとさに、全員の顔に緊張が走った。

「こいつ……ダメージが通らねえのか!」

 ガルドが忌々しげに唸ったその瞬間、

「リューク、伏せろ!」

 鋭い叫びと共にリュークは即座に身を沈めた。

 直後、ガルドの剣が**ズバァン!と音を立てて振り下ろされ、アンデッドの頭蓋をガギッ!と叩き割った。

 骨が砕け、紫の霧がシュウゥ……と立ち昇る。

 それでも、その死体はまるで意識を残しているかのようにビク……ビクビク……**と痙攣を続けていた。

「まだ気を抜くな!リーナ、後ろ!」

 リュークが振り返ると、リーナは既に詠唱に入っていた。

「光よ、闇を断て――ライトフレア!」

 リーナの詠唱が完了すると、まばゆい光が炸裂し、アンデッドたちは**グギャァ……**というかすれた悲鳴を上げて顔を背けた。

 一瞬の隙。リュークはそれを逃さない。

(今だ……!)
 声に出さずにシャドウファングへと目で合図を送る。

 黒狼はそれを察し、影のように地を駆けた。
 同時に、ザックが瓦礫を素早く利用する。

「こっちだ!」

 瓦礫の山の影から小石を投げ、アンデッドを罠の方向へと誘導する。
 一体が足を踏み入れた瞬間、縄が**ビシュッ!**と跳ね、足首に絡みつく。

「仕留める!」

 アンデッドは**ドサッ!**と石畳に倒れ、**ギギ……ギギギ……**と骨を軋ませながら這うように迫ってくる。

 その執念深さに、リュークは思わず息を呑む。

「なんて執念だ……!」

 彼は短剣を逆手に持ち、素早く魔力をロープに流し込んだ。

 ロープが**グルル……グイッ!**と再び意志を持ったかのようにうねり、アンデッドの足を絡めて押さえ込む。

(今しかない――!)

 声を出さず、再びシャドウファングに合図を送る。

 黒狼は低く唸り、瞬時に飛びかかる。**ガブッ!**という重く鋭い音が響き、牙がアンデッドの喉元を深く貫いた。

 アンデッドは**グギャ……ガググ……と断末魔のように呻き、紫の霧がスゥ……**と薄れていく。

「終わらせる!」

 ガルドが一歩踏み込んだ。崩れた柱を飛び越え、踏み込んだその足元が**ズズッ……**と沈みかけるが、体勢を立て直して力任せに大剣を振り下ろす。

 **ドガァァン!**という凄まじい音と共に、アンデッドの胴が両断され、ようやく最後の一体が地に伏した。

 部屋に静寂が戻る。

 しかし――その静けさは、ただの“終わり”ではなかった。
 リュークは膝をつき、荒い呼吸を整えながら、うねりを止めたロープをじっと見下ろした。

「魔力で動かせる……まだ上手く扱えないが……」

 呟くリュークに、ガルドが肩を叩く。

「十分だ、リューク。お前がいなかったら、今ごろ俺たち全員、奴らの仲間入りだったかもな」

 リュークは小さく笑い返したが、その視線は倒れたアンデッドから離れない。
(あれは……本当に“死んでいた”のか?それとも……)

 紫の霧が消えた後も、アンデッドの体からはなお**ピキ……ピキ……**と骨が軋む音が微かに残っていた。
 異質な恐怖だけが、そこに確かに残されていた――。

「……いや、十分だったぜ、リューク」

 ガルドはもう一度だけ肩を軽く叩き、部屋の奥へと歩を進めていく。

 リュークはそれを見送りつつ、なおもアンデッドの亡骸に視線を落とし、静かに息を吐いた。
 背を壁に預けると、途端に全身の力が抜ける。
 剣を握っていた指先が微かに震え、遅れて疲労がどっと押し寄せてきた。

 耳を澄ませば、静まり返った遺跡の空気が冷たく染み入り、背後の石壁からは**ジワ……ジワ……と湿った冷気が肌を刺した。

 倒れたアンデッドの残骸は無惨に転がり、紫色の残光がユラ……ユラ……**と不気味に漂い続けている。

 リュークは息を整えながら、低く告げた。

「少し休もう。みんな、ポーションを使え。俺が作ったやつだが……効果は保証済みだ」

 ポーチに手を伸ばすと、指先が瓶に触れ、**カチ…カチ……**と小さくぶつかる音がした。

 彼は数本のポーションを取り出し、瓶の栓を外す。**ポン……**という軽い音と共に、淡い光を放つ液体が揺れる。

 その光景を見たガルドは無言で頷き、無造作に一本を手に取った。

「へぇ、お前が作ったのかよ。まぁ、信じるぜ」

 そう言うと、ガルドは瓶を傾け、**ゴクリ……ゴクリ……**と勢いよく中身を喉へ流し込む。
 直後、彼の表情が緩み、張り詰めていた肩の力がわずかに抜けた。

「おお……こりゃ効くな」

 リーナとザックも一本ずつ手に取り、慎重に口をつけた。

「ん……不思議な味。でも、体が軽くなったわ」

 リーナはほっと息をつき、微笑む。

「おお……こいつは本物だ。リューク、お前の腕もなかなかやるじゃねえか」

 ザックが瓶を振って音を鳴らし、冗談めかして見せた。

 その場の緊張が、わずかに緩む。
 リュークは静かに頷き、ふと隣にいるシャドウファングへ視線をやった。

 黒狼は無言でリュークの足元に座り込み、疲れたように彼の膝へと頭を預けてきた。
(……よくやってくれた)

 声には出さず、リュークは優しくその黒い毛並みを撫でる。
 指先から伝わる温もりと、シャドウファングのわずかな震えが、共に戦った証を物語っていた。

「お前もよく頑張ったな」

 リュークはそっとポーションをもう一本取り出し、シャドウファングに差し出した。
 黒狼は**クンクン……**と匂いを嗅ぎ、リュークが促すと素直に口を付けた。
 飲み終えると、低く鼻を鳴らし、目を細めて安心したように身を丸める。

 リュークも静かに目を閉じ、体内の魔力の流れに意識を向けた。
 戦闘で酷使した魔力は、今やほとんど底を尽きかけている。

「……魔力が、だいぶ減ってきたな」

 彼は再びポーチから別の瓶を取り出した。魔力回復用のポーションだ。
 仲間たちにも同じものを配り、全員がそれぞれ瓶を傾けた。

 淡い青色の液体が喉を滑り落ちる。
 スゥ……ッと冷たい感触が体中を巡り、次第に内側から温かな力が**ジワ……ジワ……**と湧き上がってくる。

「……これなら、次も戦える」

 リュークは静かに呟き、まだ終わらない遺跡の探索に備えて、意識を鋭く集中させていく。

 そっと目を閉じると、感覚が内側へと深く沈んでいった。
 脳裏に浮かぶのは、これまでの戦闘の記憶――

 短剣を振るい、魔法を放ち、魔力を通したロープで敵を縛ったあの瞬間の手応え。
 それら全てが、**ズシリ……**と重く身体に刻まれている感覚があった。

「……少しずつだけど、確実に強くなってる」

 自分に言い聞かせるように呟き、リュークは静かに目を開けた。
 視線の先では、仲間たちもそれぞれの方法で戦いの疲れを癒している。

 ガルドは剣を膝に乗せ、目を閉じて深く呼吸を整えている。**スゥ……ハァ……**と規則的な息遣いが静寂に溶け込む。

 リーナは壁にもたれ、**ピリ……ピリ……と淡く揺れる魔力の流れを感じ取りながら集中を続けていた。

 ザックは短剣の刃をシャッ……シャッ……**と慎重に砥ぎながら、静かに次の戦いに備えている。

 リュークは皆を見渡し、ふっと息を整えてから口を開いた。

「……なあ。次に何が出てくるかわからないけど、俺たちならきっと乗り越えられる。さっきの戦いも、あんな数を相手にして勝ち抜けたんだ」

 ガルドが目を開け、口の端を持ち上げてニヤリと笑う。

「言うようになったじゃねぇか。ああ、やってやろうぜ。俺たちの力を見せてやる!」

 リーナも頷き、微笑みながら応じた。

「ええ、私も準備はできてるわ。今度はもっと的確に魔法を使うわよ」

 ザックは短剣を**カチン……**と鞘に納め、軽く肩を回して立ち上がる。

「罠の準備も万全だ。次はもっと派手にやってやるよ」

 リュークも立ち上がり、短剣の感触を確かめるように柄を握り直した。

 その横で、シャドウファングがすっと立ち上がる。リュークは声には出さずに小さく顎を動かし、次の行動を促した。

(頼むぞ、シャドウファング)
 黒狼は即座に反応し、低く**グルル……**と喉を鳴らして前方の闇を睨み据える。

 その気迫に、リュークも自然と背筋を伸ばした。

「よし、行こう。奥がまだ残ってる」

 リュークが静かに告げると、仲間たちは無言で頷き合い、装備を整えた。

 ガルドが剣を**ズリ……ズン……**と重く引き上げ、リーナは杖を握り直し、ザックは軽快に足音を忍ばせながら列に加わる。

「リューク、準備はいいか?」

 ザックが確認する。リュークは短剣を軽く振り、応えた。

「もちろん。行こう、シャドウファング」

 黒狼は鼻を鳴らし、**コツ……コツ……**と静かに遺跡の奥へと歩き出す。
 それに続くように、リュークたちは再び闇へと足を踏み入れた。

 遺跡の静寂を破る足音が**コツ、コツ……**と響き、壁に長く伸びた彼らの影が、まるで何かに導かれるように奥へと消えていく。

 果たして、その先に待つ影の正体は――
 彼らはまだ、誰もその答えを知らなかった。


 次回:地下へ続く階段、封印の扉
 予告:扉の先にあるものとは?
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