拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん

文字の大きさ
126 / 389
帰還  〜ポーレット〜

288

しおりを挟む
 グラトニー商会に入るとフロントホールは今日も人が多く賑わっていた。
 イオリが入ると気づいた男性が足早に近づいてきた。

「イオリ様。お帰りなさいませ。」

「ブルーノさん。お久しぶりです。今日も盛況ですね。
 先触を出していませんが、アーベルさんとバートさんにお会いできますか?」

 グラトニー商会ポーレット支部長であるブルーノは微笑むと階段に誘導してくれた。

「イオリ様が昨日お着きと聞いて、首を長くしてお待ちでした。
 どうぞ、お進み下さい。」

 ブルーノは嬉しそうにヒューゴに目をやると優しい顔で頷いた。
 ヒューゴは静かに頭を下げて「お久しぶりです。」と呟いていた。

「ブルーノさん。申し訳ありません。子供達に飲み物をいただけますか?
 アウラついて行ってくれるかい?」

 イオリの意図に気づいたブルーノは廊下にいた男性職員に声をかけると子供達の為に先に個室を用意させた。

「最近では、イオリ様のおかげで砂糖の流通が進んで参りましたのでポーレットでもお菓子の開発をする店が増えてきました。
 どうぞ、味見をして批評をして下さい。イオリ様のお菓子を一番食べている皆さんが一番適任でしょう。」

 そう言うとブルーノは数あるお菓子をテーブルに並べた。

「食べて良いの?」

 顔を輝かしたパティにブルーノはダンディな笑顔を向けて頷いた。

「是非、お願いします。」

 子供達がイオリの顔を見て伺っている。
 イオリは笑って頷いた。

「お礼を言うんだよ。後で俺にもどれが一番美味しかったか教えて。」

「「「やった!はーい。」」」

 食いしん坊のゼンもソワソワとイオリの顔を見る為、頭を撫でて頷いた。

「子供達を頼むよ。」

『わかった。任せて!』

 子供達を男性職員に任せるとイオリはソルとヒューゴを連れて部屋を出て行った。

「気を使わせてすみません。少なくとも、最初は大人の話だと思って・・・。」

「とんでもありません。おっしゃる通りだと思います。子供に見せなくても良い場面もありますから。
 ヒューゴ・・・。旦那様より先に言ってしまいますが、元気で良かった。」

 ブルーノの言葉にヒューゴは答えることが精一杯の様に堪えながら言った。

「ご心配おかけして申し訳ありません。また、お会いできて嬉しいです。」

 ブルーノの案内でポーレットでアーベルが執務室に使っている部屋の扉を開けた。



「旦那様。お客様のお越しです。お通ししても宜しいでしょうか?」

 ノックをして扉を開けたブルーノの声に少しの間を開けて返事が聞こえた。

「あぁ・・・。」

「どうぞ。」

 イオリはブルーノの合図で部屋に入った。

「アーベルさん。お久しぶりです。
 ただいま帰りました。」

 ニコニコ挨拶をするイオリにボー然とするとアーベルは静かに席を立った。

「お帰りなさい。お帰りなさい・・・。
 ご無事の帰還に安堵しました。」

 驚くアーベルにイオリは笑顔で頭を下げた。

「お待たせしてすみませんでした。
 ご相談にあった人をお連れしましたよ。ヒューゴさん。」

 イオリに呼ばれるとヒューゴは思い切った様に部屋に入ってきた。

「ヒューゴ!お前・・・。そうか・・・そうか・・・。」

 喜びで言葉の出ないアーベルにヒューゴは近づいていき膝を着いた。

「大旦那様・・・。過分なご心配とご好意により、願ってもない主を得ました事に感謝いたします。
 妹共々、主・イオリ様によくして頂いております。
 諦めていた人生を大旦那様に救っていただいたのだと思っています。
 この御恩は返せるものではありません。
 与えられた役割。主を・・・主と新たに得た家族を守る事でお許し願いたい。」

 ヒューゴの言葉にアーベルはウンウンと頷くと心配そうに体の様子をみた。

「足の怪我はどうだ?ダグスクのカイに怪我の心配はないと聞いたが・・・。」

 ヒューゴはイオリを見て、どう答えるか迷っていた。

「アンティティラに行く前にダンジョンに行くって言ったじゃないですか。
 そこで思わぬ幸運に得まして、それでヒューゴさんの怪我を治すことができました。」

 代わりに答えたイオリがニコニコと肩に乗る小鳥を撫でているのをアーベルは凝視した。

「それは・・・。イヤ・・・そうか。イオリさん礼を言います。」

 何か言おうとした事を止め、アーベルは微笑んだ。
 アーベルはその後ヒューゴを立たせると、これまでの話をした。
 それをヒューゴは泣きながら聞いた。 

「笑えているかい?ヒューゴ。」

 突然そう聞いたアーベルにヒューゴは泣きながらも満面の笑みを向け頷いた。

「はい。悪夢も見る事がなくなりました。
 妹はまだ話す事ありませんが、よく笑います。後でご挨拶させます。」

「そうか・・・。イオリさん。
 私の我儘から始まった話だ。君には助けられたばかりです。」

 そんなアーベルにイオリは頬を膨らませた。

「そんな事言って、返せって言っても返しませんよ。
 もう、ヒューゴさんもニナも俺の家族なんですから。」

「ははは!そんな事しないよ。
 イオリさんの家族に手を出す者の末路は悲惨だからね。
 それに、ヒューゴは冒険者として生きる方が良い。」

 笑って手を振るアーベルに満足してイオリはニッコリした。

 穏やかな時間が流れていた時だった。
 廊下からドタドタと足音がして扉が大きな音を立てて開いた。

「イオリさんが帰ってきたって??」

 髪を振り乱しながら飛び込んできたのはホワイトキャビン代表・バードだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

ボクは転生者!塩だけの世界で料理&領地開拓!

あんり
ファンタジー
20歳で事故に遭った下門快斗は、目を覚ますとなんと塩だけの世界に転生していた! そこで生まれたのは、前世の記憶を持ったカイト・ブラウン・マーシュ。 塩だけの世界に、少しずつ調味料を足して…沖縄風の料理を考えたり、仲間たちと領地を発展させたり、毎日が小さな冒険でいっぱい! でも、5歳の誕生日には王都でびっくりするような出来事が待っている。 300年前の“稀人”との出会い、王太子妃のちょっと怖い陰謀、森の魔獣たちとの出会い…ドキドキも、笑いも、ちょっぴり不思議な奇跡も、ぜんぶ一緒に味わえる異世界ローファンタジー! 家族や周りの人達に愛されながら育っていくカイト。そんなカイトの周りには、家族を中心に愛が溢れ、笑いあり、ほっこりあり、ちょっとワクワクする“グルメ&ファンタジーライフ”が今、始まる!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。