拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん

文字の大きさ
178 / 389
新たな旅 ー王都ー

340

しおりを挟む
「誰です?
 君達にそれを教えたのは?」

 笑顔を貼り付けていても、こめかみがピクピクと動いているのが分かるギルマス・ハンターは前屈みに双子に聞いた。

「ギルマスが言ってたよ。
 ねー」

「「「ねー。」」」

 他の子供達も一緒に頷くと、ハンターはブリキの人形のように顔をイオリにむけた。

「ポーレットのギルマス・コジモさんからの伝言です。
 妖怪ジジイと毒蜘蛛ババアに宜しくな。
 との事です。」

 これは巻き込まれてはマズいとイオリは、直ぐに口を割った。
 サブマス・ミラが肩を震わせ笑う横でギルマス・ハンターは青筋を浮かべ指をポキポキと鳴らした。

「あの小僧。
 まだまだ、教育が足りないらしいな。」

 コジモの未来を祈るばかりであるが、イオリは咳払いをした。

「ゴホン。
 ギルマス。初めまして。
 ポーレットで冒険者をしています。
 イオリと申します。
 こちらは俺のパーティーメンバーで家族です。」

 現実に戻ってきたギルマスはニッコリとすると握手をしてきた。

「失礼。最初が肝心でしたね。
 ようこそ。王都へ。
 
 最速でSランクへ駆け上がったルーキーの事は聞き及んでいました。
 会えて嬉しいですよ。
 皆さんもよくぞ来ました。歓迎します。」

 ギルマスは怒らせるとマズい学んだイオリはしっかりと握手を返した。

「それで、今回は公爵の護衛依頼でしたね。
 仕事を優先して下さって、構いませんが時にはギルドにも顔を出して下さい。

 ミラ、王都の話は?」

「まだだよ。
 お前さんを待ってたからね。」

「良い子ですね。
 それでは、私からお話しましょう。
 王都の冒険者ギルドは各地のギルドを束ねる役割もしています。
 先の事件の違法冒険者達を最終的に捌くのはココです。

 それから、各地の特別な依頼も集まってきます。
 誰も達成出来ない依頼とかね。
 Sランクの仕事などは誰にでも頼めるものではありませんからね。
 しかし、Sランクは専属になっている事も多くお抱え貴族との交渉もこちらでやっています。
 
 現在、王都に滞在するSランク冒険者は貴方を含めて3人。
 何か、ある時は3人で事にあたってもらいます。

 まぁ、そんな事がない事を願いますがね。」

 一思いに話すとギルマス・ハンターは紅茶を一口飲んだ。

「やはり、ミラの紅茶は素晴らしいですね。 うん。

 では、王都での受付の事ですが、このミラが受けます。
 Sランクの依頼ですからね。中には、秘密も存在します。
 余裕が出来れば是非にも受けて頂きたいものですね。

 えぇ、今回は結構。」

「それは、パーティーで受ける事ができますか? 
 俺は、この子達と離れる気はないんです。」

「勿論ですよ。
 ただ、先ほども言った通り他のSランク冒険者と協力する時は緊急依頼となりますので同行は認められません。
 それほど、緊迫した状況とお考えください。

 以前の魔の森の巨大な鹿の出現。
 本来あれは緊急依頼に相当します。

 ギルドが所有する転移魔法でSランクを送る事になっていたところに解決の報告があり驚きましたよ。」

「なるほど・・・。
 理解しました。ただ、従魔のゼンは一緒に行きます。それは譲れません。」

「それは構いませんよ。
 貴方の従魔ですからね。他のSランク冒険者も連れている人もいますから。
 それに純白のフェンリルを認めないなんてあり得ませんよ。」

 興味深そうに覗き込んできたハンターにゼンはイオリの足に擦り付き言った。

『ハンター。
 ボクはイオリの言う事しか聞かないよ。』

「なんと!フェンリルと話す機会があるとは・・・。
 勿論、構いませんよ。
 主人と従魔は一心一体。
 貴方達もそうですよ?」

 アウラとソルに目を細めるハンターは思わず溜息を吐いた。

「本当に美しい従魔に好かれているのですね。
 目の保養です。眼福です。」

 子供達が引いた目でハンターを見てアウラとソルを隠していた。
 そんなハンターを横目で見ていたミラはうんざりした顔をした。

「気持ち悪いだろう?
 美しいものが好きな変態なんだ。
 でも、強いし頼りがいのある男だよ。
 
 こう見えて、私より年上の立派なジジイなんだ。」

「え・・・。息子さんくらいかと思っていました。」

 ミラはイオリをジトッとした目で睨むと舌打ちをした。

「チッ!
 コイツは魔法で外見を変えてる変態なんだ。
 コジモが妖怪というのは、そんな理由さね。
 あの子は、私らの弟子だからね。
 こいつの素顔を知ってしまったのさ。あの時はあの子慌ててたねー。」

「ミラ!その話はなしですよ!!
 全く、デリカシーがない!」

「・・・・なるほどねー。」

 プンスカ怒るハンターに戸惑うイオリだった考えても意味ないかと直ぐに受け入れた。
 それをヒューゴ苦笑して見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

ボクは転生者!塩だけの世界で料理&領地開拓!

あんり
ファンタジー
20歳で事故に遭った下門快斗は、目を覚ますとなんと塩だけの世界に転生していた! そこで生まれたのは、前世の記憶を持ったカイト・ブラウン・マーシュ。 塩だけの世界に、少しずつ調味料を足して…沖縄風の料理を考えたり、仲間たちと領地を発展させたり、毎日が小さな冒険でいっぱい! でも、5歳の誕生日には王都でびっくりするような出来事が待っている。 300年前の“稀人”との出会い、王太子妃のちょっと怖い陰謀、森の魔獣たちとの出会い…ドキドキも、笑いも、ちょっぴり不思議な奇跡も、ぜんぶ一緒に味わえる異世界ローファンタジー! 家族や周りの人達に愛されながら育っていくカイト。そんなカイトの周りには、家族を中心に愛が溢れ、笑いあり、ほっこりあり、ちょっとワクワクする“グルメ&ファンタジーライフ”が今、始まる!

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。