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新たな旅 ーミズガルドー
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執務を終わらせたイグナートは再び机の引き出しを開け仕舞い込んだ封筒を取り出した。
睨みつけた手紙には、王宮での式典の招待状が入っていた。
ドミトリー・ドナードの犠牲者を悼む式典というが、中身はただの大宴会だった。
本当に傷ついている遺族達は参加などしない。
イグナートも最初の一回は参加したがダンスパーティーと化した式典に幻滅しそれ以来は行っていない。
しかし、犠牲者の中で1番に爵位の高いカレリン公爵家夫人はいつのまにか代表に祭り上げられていた。
こうやって毎回、招待状を送ってくるのもイグナートを利用したいのだ。
嫌悪感を持ちつつ招待状をゴミ箱に投げ捨てた。
後で執事が断りをいれるだろう。
イグナートは窓を開けると夜風を部屋に入れた。
その時だった。
外の真っ暗の中、部屋に手紙がコトリっと音を立てて入ってきた。
「誰だ!」
警戒して身を固めたイグナートであったが返事はない。
足元に落ちていた手紙を拾い表裏と確認するが何も書いていない。
「読んだら燃やしてね。
お返事は明日また聞きに来るね。」
子供の声が聞こえ慌てて外を覗き込んだが、既に姿が見えなかった。
イグナートは窓を閉め、ソファーに座り差出人の無い手紙を見つめた。
何かの罠かもしれない。
本来なら、誰かをやって確認するべきだったがイグナートの本能が《封筒を開けて読め》と言っている。
しばらく考えた後、イグナートは封筒を開けたのであった。
__________
翌日の夜。
同じく執務を終わらせたイグナートは妻と使用人を先に休ませ、窓を開けて待っていた。
待っていた客は音も立てずにやってきた。
「こんばんわ。」
窓の外から声がしてイグナートは立ち上がった。
「そのままで聞いてね。姿を見せて良いって言われてないんだ。
それで、どうする?」
やはり子供だ。
イグナートは眉間にシワを寄せると声をかけた。
「君の主人は子供を深夜まで働かせるのか?」
クスクスと笑う声が聞こえた。
「ぼくが丁度良いんだ。
大人の人だったら、もっと警戒してたでしょ?
それに、昼間にグッスリ眠ったよ。」
「そうか・・・。
アースガイルの使者に会おう。
主人に伝えてくれ。
お前も早く休みなさい。」
「ありがとう。優しい公爵さま・・・。
それじゃあね。
明日にはみんなと一緒に来るね。
公爵さまも眠ってね。」
気配が消えたのを感じイグナートは外を覗いた。
そこに再び手紙が置かれていた。
「アースガイル国
ポーレット公爵家次男ヴァルト・ドゥ・ポーレット
まだ若い貴族子息が無理をしたものだ・・・。」
イグナートは光を消すと執務室を後にした。
「お初にお目にかかります。
アースガイルより参りました。
ポーレット公爵テオルド・ドゥ・ポーレットが次男ヴァルト・ドゥ・ポーレットにございます。
この度の訪問につき数々のご無礼をお許し下さい。」
数名の供を連れてやってきた若き貴族子息にイグナートは目を見張った。
本国でもお目にかかれないほどの清廉な面持ちの若者の瞳はとてつもなく魅力的であった。
そんな若者を守ように美しい2匹のカーバンクルがいた。
このすぐ後にイグナートはこの若き貴族が持ち込んだ情報によって打ちひしがれ、怒りに燃える事になる。
睨みつけた手紙には、王宮での式典の招待状が入っていた。
ドミトリー・ドナードの犠牲者を悼む式典というが、中身はただの大宴会だった。
本当に傷ついている遺族達は参加などしない。
イグナートも最初の一回は参加したがダンスパーティーと化した式典に幻滅しそれ以来は行っていない。
しかし、犠牲者の中で1番に爵位の高いカレリン公爵家夫人はいつのまにか代表に祭り上げられていた。
こうやって毎回、招待状を送ってくるのもイグナートを利用したいのだ。
嫌悪感を持ちつつ招待状をゴミ箱に投げ捨てた。
後で執事が断りをいれるだろう。
イグナートは窓を開けると夜風を部屋に入れた。
その時だった。
外の真っ暗の中、部屋に手紙がコトリっと音を立てて入ってきた。
「誰だ!」
警戒して身を固めたイグナートであったが返事はない。
足元に落ちていた手紙を拾い表裏と確認するが何も書いていない。
「読んだら燃やしてね。
お返事は明日また聞きに来るね。」
子供の声が聞こえ慌てて外を覗き込んだが、既に姿が見えなかった。
イグナートは窓を閉め、ソファーに座り差出人の無い手紙を見つめた。
何かの罠かもしれない。
本来なら、誰かをやって確認するべきだったがイグナートの本能が《封筒を開けて読め》と言っている。
しばらく考えた後、イグナートは封筒を開けたのであった。
__________
翌日の夜。
同じく執務を終わらせたイグナートは妻と使用人を先に休ませ、窓を開けて待っていた。
待っていた客は音も立てずにやってきた。
「こんばんわ。」
窓の外から声がしてイグナートは立ち上がった。
「そのままで聞いてね。姿を見せて良いって言われてないんだ。
それで、どうする?」
やはり子供だ。
イグナートは眉間にシワを寄せると声をかけた。
「君の主人は子供を深夜まで働かせるのか?」
クスクスと笑う声が聞こえた。
「ぼくが丁度良いんだ。
大人の人だったら、もっと警戒してたでしょ?
それに、昼間にグッスリ眠ったよ。」
「そうか・・・。
アースガイルの使者に会おう。
主人に伝えてくれ。
お前も早く休みなさい。」
「ありがとう。優しい公爵さま・・・。
それじゃあね。
明日にはみんなと一緒に来るね。
公爵さまも眠ってね。」
気配が消えたのを感じイグナートは外を覗いた。
そこに再び手紙が置かれていた。
「アースガイル国
ポーレット公爵家次男ヴァルト・ドゥ・ポーレット
まだ若い貴族子息が無理をしたものだ・・・。」
イグナートは光を消すと執務室を後にした。
「お初にお目にかかります。
アースガイルより参りました。
ポーレット公爵テオルド・ドゥ・ポーレットが次男ヴァルト・ドゥ・ポーレットにございます。
この度の訪問につき数々のご無礼をお許し下さい。」
数名の供を連れてやってきた若き貴族子息にイグナートは目を見張った。
本国でもお目にかかれないほどの清廉な面持ちの若者の瞳はとてつもなく魅力的であった。
そんな若者を守ように美しい2匹のカーバンクルがいた。
このすぐ後にイグナートはこの若き貴族が持ち込んだ情報によって打ちひしがれ、怒りに燃える事になる。
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