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帰還 ー王都ー
474 ーマテオの回顧録①ー
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どこに行っても酷い有様であった。
人は自分と違うものが混ざると排除しようと乱暴になる。
集団生活の中、混ざり者への仕打ちは目に余る。
旅をした。
穏やかな生活を求めて・・・
混沌とした人々の生活の中に一筋の光と言えば、絶対神リュオン様への祈りのみ
それすらも今は危うくなっている。
旅の途中で出会った家族に林檎と水を分けて貰った。
その時の私はいつ死んでもおかしくなかった。
自分達もひもじいだろうに、笑いかけてくれる。
彼らの頭には長い耳があった。
ウサギの獣人だったのだ。
私は彼らと行動を共にした。
狩りや見張りとできる事をやった。
可愛い子供達と優しい夫婦に囲まれて幸せだった。
異変に気づいたのはウサギの父親と狩りに出てた時だった。
自宅の方から煙が出ている事に気づき2人で急いで山を降った。
小屋が燃やされ、母親と長男が殺され、下の二人の女の子と男の子が連れ去られていた。
愕然とする父親の肩を引っ張り、子供達を連れ去った者達を追跡した。
追いつき驚いた・・・。
馬車に子供達を詰め込んでいたのは隣人の人族だった。
ずっと、獣人の子供を売って食料と交換しようと画策していたのだ。
子供達との交換で貰っていたのは3日分の小麦だった・・・。
3日分の小麦・・・その為にウサギの獣人の母と長男は殺されて、二人の幼い子供達は売り飛ばされようとしているのだ。
こんな世の中、狂っている・・・
私とウサギの獣人の父親は隣人を殴り殺し、なんとかして二人の子供を救出した。
その最中に馬車の用心棒が放った弓矢でウサギの獣人の父親が絶命した。
父親に泣きすがる子供達を放ってはおけず、私は走り去る馬車をただ見ているしかなかった。
その時だった。
目の前で馬車が真っ二つになったのだ。
人買い達を瞬殺し、我々に背を向けて立つ男がいた。
それが“ジュウゾウ”との出会いだった。
子供達を庇い立つ私をジッと見たジュウゾウは微かに悲しそうな顔をした。
そして近寄ってくると子供達の頭を撫でて「一緒に父の墓を作ろう」と呟いた。
私達が一家の墓を作っていると、隣家から飛び出てきて包丁を構える少年が涙を流しながら「人殺し」と叫んだ。
自身の父がウサギの獣人の母子を殺したのを知っているはずなのに、今度は彼らが被害者になったのだ。
私は少年の包丁を掴み投げ捨てると抱きしめた。
私の胸で暴れる少年に何も言う事が出来なかった。
少年の母親がフラフラと出てきて無言で少年を連れて行くとジュウゾウがウサギの獣人の子供達に「一緒においで」と言った。
「お前も来い。」との言葉にウサギの獣人の子供達の事が心配だった私は彼の言葉に従ったのであった。
彼について向かったのは、入江がある海の集落だった。
漁をして暮らす住人達の集まりだと言う。
集落の入り口には丸太で丈夫な門があり、出入りする人間を確認していた。
ジュウゾウが門に近づくと、門で見張りをしていた男達が笑顔で出迎えた。
それだけではない。
集落に入ると、ジュウゾウ目がけて子供達が走ってきた。
毛耳を持つ獣人から人族、中にはエルフやドワーフの子供がいた。
子供達はジュウゾウの帰還を喜び纏わり付いている。
大人達も作業をする手を止めてジュウゾウに声をかけていた。
この男は慕われているのだ。
子供達が手を振って離れて行くと、ジュウゾウは私達を入江の外れの家に連れて行った。
家と言っても2階建ての簡素な作りである。
「帰ったぞ。」
ジュウゾウの声に扉が開くと笑顔の女性が1人出てきた。
女性はウサギの獣人の子供を見やり、訳を聞くと眉を下げて抱きしめた。
「かわいそうに。ここは安全だから、気の済むまでいなさい。」
そうして子供達を家に招き入れた女性は後ろに立つ私を見て何故か硬直したのだ。
ジュウゾウと女性は顔を見合わせると、微笑み合い。
「ようこそ」
と手を差し伸べてくれたのだった。
どこに行っても酷い有様であった。
人は自分と違うものが混ざると排除しようと乱暴になる。
集団生活の中、混ざり者への仕打ちは目に余る。
旅をした。
穏やかな生活を求めて・・・
混沌とした人々の生活の中に一筋の光と言えば、絶対神リュオン様への祈りのみ
それすらも今は危うくなっている。
旅の途中で出会った家族に林檎と水を分けて貰った。
その時の私はいつ死んでもおかしくなかった。
自分達もひもじいだろうに、笑いかけてくれる。
彼らの頭には長い耳があった。
ウサギの獣人だったのだ。
私は彼らと行動を共にした。
狩りや見張りとできる事をやった。
可愛い子供達と優しい夫婦に囲まれて幸せだった。
異変に気づいたのはウサギの父親と狩りに出てた時だった。
自宅の方から煙が出ている事に気づき2人で急いで山を降った。
小屋が燃やされ、母親と長男が殺され、下の二人の女の子と男の子が連れ去られていた。
愕然とする父親の肩を引っ張り、子供達を連れ去った者達を追跡した。
追いつき驚いた・・・。
馬車に子供達を詰め込んでいたのは隣人の人族だった。
ずっと、獣人の子供を売って食料と交換しようと画策していたのだ。
子供達との交換で貰っていたのは3日分の小麦だった・・・。
3日分の小麦・・・その為にウサギの獣人の母と長男は殺されて、二人の幼い子供達は売り飛ばされようとしているのだ。
こんな世の中、狂っている・・・
私とウサギの獣人の父親は隣人を殴り殺し、なんとかして二人の子供を救出した。
その最中に馬車の用心棒が放った弓矢でウサギの獣人の父親が絶命した。
父親に泣きすがる子供達を放ってはおけず、私は走り去る馬車をただ見ているしかなかった。
その時だった。
目の前で馬車が真っ二つになったのだ。
人買い達を瞬殺し、我々に背を向けて立つ男がいた。
それが“ジュウゾウ”との出会いだった。
子供達を庇い立つ私をジッと見たジュウゾウは微かに悲しそうな顔をした。
そして近寄ってくると子供達の頭を撫でて「一緒に父の墓を作ろう」と呟いた。
私達が一家の墓を作っていると、隣家から飛び出てきて包丁を構える少年が涙を流しながら「人殺し」と叫んだ。
自身の父がウサギの獣人の母子を殺したのを知っているはずなのに、今度は彼らが被害者になったのだ。
私は少年の包丁を掴み投げ捨てると抱きしめた。
私の胸で暴れる少年に何も言う事が出来なかった。
少年の母親がフラフラと出てきて無言で少年を連れて行くとジュウゾウがウサギの獣人の子供達に「一緒においで」と言った。
「お前も来い。」との言葉にウサギの獣人の子供達の事が心配だった私は彼の言葉に従ったのであった。
彼について向かったのは、入江がある海の集落だった。
漁をして暮らす住人達の集まりだと言う。
集落の入り口には丸太で丈夫な門があり、出入りする人間を確認していた。
ジュウゾウが門に近づくと、門で見張りをしていた男達が笑顔で出迎えた。
それだけではない。
集落に入ると、ジュウゾウ目がけて子供達が走ってきた。
毛耳を持つ獣人から人族、中にはエルフやドワーフの子供がいた。
子供達はジュウゾウの帰還を喜び纏わり付いている。
大人達も作業をする手を止めてジュウゾウに声をかけていた。
この男は慕われているのだ。
子供達が手を振って離れて行くと、ジュウゾウは私達を入江の外れの家に連れて行った。
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「帰ったぞ。」
ジュウゾウの声に扉が開くと笑顔の女性が1人出てきた。
女性はウサギの獣人の子供を見やり、訳を聞くと眉を下げて抱きしめた。
「かわいそうに。ここは安全だから、気の済むまでいなさい。」
そうして子供達を家に招き入れた女性は後ろに立つ私を見て何故か硬直したのだ。
ジュウゾウと女性は顔を見合わせると、微笑み合い。
「ようこそ」
と手を差し伸べてくれたのだった。
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