続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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書籍化記念SS

オルガ・ポーレットの邂逅

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 ポーレットの街の公爵邸にはポーレット公爵夫婦が愛する裏庭がある。

 レンガで形造られた花壇は色取り取りの花やハーブで彩られ、中央にはガセボと呼ばれる憩いの場まである。

 今日も今日とて、ガゼボで息抜きをするポーレット公爵夫人であるオルガ・ポーレットの前にはカモミールティーが用意されていた。

「何度でも思うわ。
 この場所に花が咲いているなんて。
 本当に不思議。」

 呟くオルガに返事をしたのは、側に侍っていた侍女頭のモーナだ。

「本当に左様で御座いますね。」

 先代のポーレット公爵の嫡子として生まれたオルガは唯一の後継者として幼い頃より現在の王弟テオルドと婚約をした。

 出会った頃より仲睦まじテオルドとオルガには周囲の大人達も安堵し癒されたものだった。

 建国以来、このポーレットの地は国にとって重要な場所だった。

 “明けない魔の森”
 そう呼ばれる危険な森を常に抱えるポーレットの街は恵みを齎す事も多いが、それ以上に脅威だった。

 ポーレットの街が大きな壁に囲まれた螺旋状の土地であるのは、魔の森の脅威から民を守る為に時代をかけて変貌してきた結果だ。

 故に長年、人工的に手を加えられ続けてきたポーレットの街では植物が育つのが難しく、ポーレット公爵邸には庭園など存在しなかった。

 幼い時分のオルガも他領の領主邸の華やかな庭園を見て憧れたものだった。

 そんな彼女の思いを知る父親である先代公爵は“明けない魔の森”に赴けば必ずと言って小さな花を持ち帰ってくれた。

 幼い頃を思い出し、オルガは花壇に咲く小さな花・・・ジャスミンの花に近寄って微笑んだ。

「別にね。
 ジャスミンが好きという訳ではなかったのよ。
 何でお父様は小さな花ばかり摘んでくるのかしら?って。 
 私は薔薇の様に派手な花にも憧れを持っていたから・・・。
 でもね。
 毎回、父が魔の森から持ち帰って来られる花はジャスミンの小花だった。」

 オルガは白く可愛らしい花を指で弾くとクスクスと笑った。
 
 モーナはオルガの一人語りに答えるでもなく優しく見守っている。

「そうしたら当時の騎士団長が言っていたの。
 小さく白く愛らしいジャスミンを見ると娘を思い出すと言ったそうよ。」

 オルガは懐かしそうにジャスミンの花の香りを嗅ぐと満足そうな顔でベンチに戻った。

「父は、けして口の回る人間ではなかったけれど、優しい人だった。
 いつもジャスミンの花を持ち帰っては優しく抱き上げてくれた思い出はとても大切なものよ。
 だからかしら。
 いつの間にか、ジャスインが1番好きな花になっていたわ。」

 オルガは、この庭園を創り上げてくれた青年にお思いを馳せる。

「・・・イオリちゃん。
 早く目覚めると良いわね。」

 いつも大らかで優しいイオリ。
 
 この裏庭の庭園はイオリの発案の元に使用人や畑人といったポーレット公爵家に仕える者達が公爵夫婦を想い、出来上がった特別な場所だ。

 オルガの大切な思い出の花をプレゼントしてくれた優しいイオリ。

 長い眠りから早く目覚め、あの笑顔を再び見せてほしい。

 祈るように目を瞑ったオルガをポーレットの頬を風が撫でる。

「お・・奥様・・・。」

 戸惑うモーナの声に反応して目を開いたオルガは優しく輝く降り注ぐ光の玉を見た。
 
 驚き目を丸くするオルガとモーナの元に屋敷からヴァルトの叫び声が届く。

「イオリが!
 目覚めたぞ!!」

 それを聞いて、慌てて立ち上がったオルガは淑女の姿を脱ぎ捨て、スカートの裾を襷あげると全速力で走り出したのだった。


 
※※※※※ ※※※※※
 いつも『続・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂いて有難うございます。

 『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の書籍化第4弾につきましてご報告をさせて頂きます。
 
 《2025年10月16日(木)》に各書店に発送されます。
 書店や地域によって数日後ろに倒れます。
 
 それに伴い、10月16日(木)よりアルファポリス様に投稿している[228話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。
 ご了承下さい。

 今回も表紙・挿絵はTAPI岡先生が担当して下さいました。
 新たな仲間が加わり賑やかになる予感がします。

 是非とも書籍版も楽しんで頂けますと幸いです。

 当作品はコミカライズ化もされております。
 合わせてお楽しみ下さい。
 
 続編『続々・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』
 も投稿中です。
 よろしくお願い致します。

 ぽん


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