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愛し子の帰還
3
人生と言うものは思っていた通りにならない・・・。
相沢庵という男に予想だにしなかった事が起ったのは数年前。
赤子の時に両親と死に別れ、祖父母に育てられた庵は、周りを山に囲まれたのどかな土地で育った。
身近に同じ歳の子供も少なく、遊び相手はもっぱら自然という幼少期を過ごした彼に祖父母はありとあらゆる事を教えた。
老い先幾ばくか分らぬ自分達が可愛い孫に残してやれるのは、1人になっても生きていく力であると信じたからだ。
彼らの願い通り、庵は逞しく育った。
1人になると、自分を愛してくれた恩返しと集落の人を助けて生きていた。
そんな優しき男の運命が変わった。
猪の狩猟の為に入った御山“白禅山”で1匹の真っ白な子狼に出会ったのだ。
その子狼は仲間から離れ、ひとりぼっちであった。
山で庵に優しくされた子狼であったが、自然のルールを守る庵に置いて行かれそうになると慌てて後を追った。
必死に追いかける子狼が突如現れた地面の亀裂に落ちるのを、庵は助ける為に飛び込み命を落としてしまったのだ。
悲しんだ山神の願いに応えた絶対神リュオンの加護の下に庵と子狼は力を与えられ『イオリとゼン』として新たな世界で生きる事になった。
大人の男性から少年として転移したイオリであったが、祖父母に教えられた知識を活かし、ゼンと共に逞しく生きていた。
彼らはヴァルトという青年と知り合い、新たな世界で様々な出会いを経て成長し別れを経験した。
ポーレットを離れ3年の月日が経っていた。
今や家族として互いを慈しむ仲間達と共に、イオリとゼンはポーレットの街へ帰還しようとしていた。
※※※※※
「みんな、お待たせ!!
準備出来た?」
「お前待ちだよ。」
イオリが姿を見せれば、1人の男が声を掛けた。
「ヒューゴ、ソワソワしてたもんねー。」
「楽しみで昨日、寝られなかったらしいよ。」
双子の獣人の子供がクスクス笑うとヒューゴはニヤリとした。
「そんな事言って良いのか?
大量のおやつは俺が持ってるんだぞ?」
「「ぎゃー!!」」っと騒ぐ獣人の双子のパティとスコルをエルフの少年がクスクスと笑っていた。
「ナギちゃん。お土産持った?」
「持ったよ。ニナの入り切らなかったら、僕の腰バックに入れようか?」
ニッコリして首を横に振る末っ子のニナにエルフのナギは微笑んだ。
スコルとパティは両親と死に別れ、魔の森で魔獣に追われていたのをイオリとゼンに助けられた獣人の双子だ。
2人は刀使いで戦闘能力も高い。
スコルは長刀を扱い、的確に標的を仕留める。
イオリの料理に憧れ、今や1番弟子として奮闘中だ。
冷静な判断力とここぞと言う時の大胆さを兼ね備える、イオリ自慢の長男である。
パティは双剣を使い、戦闘時に大切なパーティーの切り込み隊長である。
スピードも早く舞うように攻撃する為に、相手も戸惑い彼女の攻撃についていくのも難しい。
好奇心旺盛で猪突猛進の性格から周りをヒヤヒヤさせる事もしばしばだが、何よりも素直で食いしん坊である。
ナギはエルフの少年である。
“エルフの里”の出身であるが、戦闘能力が低い為に売られてしまった。
その際、両親の命がけの計略で里から出された所を魔の森のトロールに助けられ、その後イオリと出会い一緒に生活するようになった。
攻撃能力は無いが、ライアーという竪琴を使い人に癒しを与える。
植物をコントロールしてパーティーを助ける優しく勤勉なナギは家族が大好きだ。
新しい知識を得る事で時折、大人を驚かせもする。
ヒューゴとニナの兄妹は親の身勝手に巻き込まれ、借金のカタに売られていたのをイオリに買われた元奴隷である。
借金を全額返済すると、本当の意味で家族になった。
ヒューゴは大剣使いで、シールドのスキル持ちである。
双子と連携することが多く、パーティの攻撃の要である。
常識外れな家族の中で常識人として振り回される事もあるが、優しく家族を守っている。
みんなに愛されている小さなニナは幼いながらも洗浄魔法を使い、家族をサポートしている。
親に売られた事にショックを受け、笑顔と声を失っていたが、イオリ達と出会った事により取り戻した。
幼い頃から魔法が使える天才で、ナギと同じく学ぶ事が楽しく成長著しい。
『イオリー!!出発する??出発する??』
真っ白なフェンリルになったゼンが戻ったイオリに飛びかかった。
「ゼン。そろそろ行こうか。
ナギ!準備は良い?」
ナギはニッコリすると頷いた。
「バッチリ!」
ヒューゴがニナを抱き上げると双子を手招きした。
「私達を置いて行かないで下さいよ。」
イオリは顔を拭きながらやって来たエルフの男・・・エルノールに微笑みかけた。
「大丈夫ですよ。
アウラも準備は良い?」
「忘れないで!」と言う様に、腰を押してくるバトルホースのアウラをイオリは笑いながら摩った。
エルノールはポーレットの街の冒険者ギルドのサブマスターでありながら、今回の修行に付き合ってくれた先生だ。
彼の教え子であるナギとニナは実に優秀で彼らの期待に応えた。
それだけでなく、経験浅く高ランクになったイオリ達パーティーの実戦の浅さを補う為に惜しげもなく知識を与えてくれた恩人でもある。
バトルホースのアウラは人に傷つけられ、魔の森を彷徨っていたところをイオリに出会い、仲間を得た。
今では心配性なお姉さんとして子供達を守っている。
「さぁ、帰ろうか。ポーレットへ。」
「「「「帰ろう!!」」」」
イオリ達は3年間、お世話になった泉に別れを告げポーレットへ出発したのだった。
相沢庵という男に予想だにしなかった事が起ったのは数年前。
赤子の時に両親と死に別れ、祖父母に育てられた庵は、周りを山に囲まれたのどかな土地で育った。
身近に同じ歳の子供も少なく、遊び相手はもっぱら自然という幼少期を過ごした彼に祖父母はありとあらゆる事を教えた。
老い先幾ばくか分らぬ自分達が可愛い孫に残してやれるのは、1人になっても生きていく力であると信じたからだ。
彼らの願い通り、庵は逞しく育った。
1人になると、自分を愛してくれた恩返しと集落の人を助けて生きていた。
そんな優しき男の運命が変わった。
猪の狩猟の為に入った御山“白禅山”で1匹の真っ白な子狼に出会ったのだ。
その子狼は仲間から離れ、ひとりぼっちであった。
山で庵に優しくされた子狼であったが、自然のルールを守る庵に置いて行かれそうになると慌てて後を追った。
必死に追いかける子狼が突如現れた地面の亀裂に落ちるのを、庵は助ける為に飛び込み命を落としてしまったのだ。
悲しんだ山神の願いに応えた絶対神リュオンの加護の下に庵と子狼は力を与えられ『イオリとゼン』として新たな世界で生きる事になった。
大人の男性から少年として転移したイオリであったが、祖父母に教えられた知識を活かし、ゼンと共に逞しく生きていた。
彼らはヴァルトという青年と知り合い、新たな世界で様々な出会いを経て成長し別れを経験した。
ポーレットを離れ3年の月日が経っていた。
今や家族として互いを慈しむ仲間達と共に、イオリとゼンはポーレットの街へ帰還しようとしていた。
※※※※※
「みんな、お待たせ!!
準備出来た?」
「お前待ちだよ。」
イオリが姿を見せれば、1人の男が声を掛けた。
「ヒューゴ、ソワソワしてたもんねー。」
「楽しみで昨日、寝られなかったらしいよ。」
双子の獣人の子供がクスクス笑うとヒューゴはニヤリとした。
「そんな事言って良いのか?
大量のおやつは俺が持ってるんだぞ?」
「「ぎゃー!!」」っと騒ぐ獣人の双子のパティとスコルをエルフの少年がクスクスと笑っていた。
「ナギちゃん。お土産持った?」
「持ったよ。ニナの入り切らなかったら、僕の腰バックに入れようか?」
ニッコリして首を横に振る末っ子のニナにエルフのナギは微笑んだ。
スコルとパティは両親と死に別れ、魔の森で魔獣に追われていたのをイオリとゼンに助けられた獣人の双子だ。
2人は刀使いで戦闘能力も高い。
スコルは長刀を扱い、的確に標的を仕留める。
イオリの料理に憧れ、今や1番弟子として奮闘中だ。
冷静な判断力とここぞと言う時の大胆さを兼ね備える、イオリ自慢の長男である。
パティは双剣を使い、戦闘時に大切なパーティーの切り込み隊長である。
スピードも早く舞うように攻撃する為に、相手も戸惑い彼女の攻撃についていくのも難しい。
好奇心旺盛で猪突猛進の性格から周りをヒヤヒヤさせる事もしばしばだが、何よりも素直で食いしん坊である。
ナギはエルフの少年である。
“エルフの里”の出身であるが、戦闘能力が低い為に売られてしまった。
その際、両親の命がけの計略で里から出された所を魔の森のトロールに助けられ、その後イオリと出会い一緒に生活するようになった。
攻撃能力は無いが、ライアーという竪琴を使い人に癒しを与える。
植物をコントロールしてパーティーを助ける優しく勤勉なナギは家族が大好きだ。
新しい知識を得る事で時折、大人を驚かせもする。
ヒューゴとニナの兄妹は親の身勝手に巻き込まれ、借金のカタに売られていたのをイオリに買われた元奴隷である。
借金を全額返済すると、本当の意味で家族になった。
ヒューゴは大剣使いで、シールドのスキル持ちである。
双子と連携することが多く、パーティの攻撃の要である。
常識外れな家族の中で常識人として振り回される事もあるが、優しく家族を守っている。
みんなに愛されている小さなニナは幼いながらも洗浄魔法を使い、家族をサポートしている。
親に売られた事にショックを受け、笑顔と声を失っていたが、イオリ達と出会った事により取り戻した。
幼い頃から魔法が使える天才で、ナギと同じく学ぶ事が楽しく成長著しい。
『イオリー!!出発する??出発する??』
真っ白なフェンリルになったゼンが戻ったイオリに飛びかかった。
「ゼン。そろそろ行こうか。
ナギ!準備は良い?」
ナギはニッコリすると頷いた。
「バッチリ!」
ヒューゴがニナを抱き上げると双子を手招きした。
「私達を置いて行かないで下さいよ。」
イオリは顔を拭きながらやって来たエルフの男・・・エルノールに微笑みかけた。
「大丈夫ですよ。
アウラも準備は良い?」
「忘れないで!」と言う様に、腰を押してくるバトルホースのアウラをイオリは笑いながら摩った。
エルノールはポーレットの街の冒険者ギルドのサブマスターでありながら、今回の修行に付き合ってくれた先生だ。
彼の教え子であるナギとニナは実に優秀で彼らの期待に応えた。
それだけでなく、経験浅く高ランクになったイオリ達パーティーの実戦の浅さを補う為に惜しげもなく知識を与えてくれた恩人でもある。
バトルホースのアウラは人に傷つけられ、魔の森を彷徨っていたところをイオリに出会い、仲間を得た。
今では心配性なお姉さんとして子供達を守っている。
「さぁ、帰ろうか。ポーレットへ。」
「「「「帰ろう!!」」」」
イオリ達は3年間、お世話になった泉に別れを告げポーレットへ出発したのだった。
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