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旅路〜イルツク〜
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ダンジョンの洞窟内で2つの戦いが行われていた頃、イオリは最終の部屋のもっと奥に向かっていた。
「何処に行こうと言うのだ?」
ナギと共にイオリの後を追いかけるディエゴ・ギロック騎士団長は戸惑っていた。
彼にとって“エルフの里の戦士”の動向こそが1番の懸念であったからだ。
「・・・呼ばれているんです。」
「呼ばれている?
・・・まさかとは思うが、最終の部屋の魔獣ではあるまいな?」
「その、まさかかと・・・。」
先導する従魔のゼンは確かな足取りで向かうべき所が分かっているだようだ。
イオリと共に、声のする方へ向かっていた。
「離れないでね。」
ディエゴ・ギロックは自身を見上げるエルフの子供に苦笑した。
「あぁ、分かっている。」
イオリはアウラに跨り隣を歩くニナの頭を撫でた。
ダンジョンの暗闇を照らすニナの杖に導かれてイオリ達は奥へと歩いて行く。
《この辺のはずだよね?》
「そうだね。
おかしいな。
行き止まりみたいだ。
入口もない・・・。」
自分を呼ぶ声を頼りに歩いてきたが、突如として現れた岩壁にイオリは首を捻った。
ニナやナギも岩壁をペタペタと触り確認している。
その時だった。
『よく来た。
絶対神リュオンの愛しい子よ。』
声が頭に直接降ってくるようだった。
「貴方は・・・?」
『私はイルツクの守護を任されているオリオン。
この地は私が絶対神より預かった地である。』
「リュオン様から預かった?」
イオリは、その声を聞き逃すまいと耳を傾けた。
『そう。私は絶対神との約束を守っている。』
「・・・約束?
このイルツクの地を守る事が?」
『そうだ。
ダークエルフが現れる遥か前の事だ。
かつて、荒廃した世界に絶対神は降り立った。
世界を蘇らせようとする絶対神に我らは魅了されたのだ。
絶対神が込めた力は世界中に散っていったが、生命の芽を維持する為に我らが力を込め維持しているのだ。』
ーーーーオリオンは語った。
かつて絶対神がいなかった世界は荒廃の一途を辿って行った。
森が枯れ、海が荒ぶり、川が干からびた。
自然に寄り添い生きていた生命が終わりを迎えようとしていたのだ。
人間もエルフも獣人も・・・。
オリオンを含め、力を持つ生命の源達は壊れゆく世界を見守る事しか出来なかった。
彼らは当時の信仰の象徴であり、人々に愛される事でエネルギーを漲らせる事で力を使う事ができた。
しかし、荒廃した世界で、最早、彼らに祈りを捧げる者など少なくなっていたのだ。
オリオン達が息絶え絶えに世界のバランスを支えていた時だった。
虹色の髪を靡かせ舞い降りた者がいた。
それがリュオンだった。
彼は各地に自身の力の源を与え、オリオン達に守らせたのだ。
緑が戻った森、生き物に潤いを与えた海、神々しく輝く川。
生き残った人間やエルフ、獣人が生き延びた事で歴史が紡がれてきたのだ。
そうしてリュオンは全ての生命の源として絶対神となったのだ。
『人々は我らの事など気にもせぬ。
それでも我らは良いのだ。
己が守らんとする地が汚される事が起きなければな。』
オリオンの声は苛立ちを孕んでいた。
『愚かなエルフ共がやってきたのだ。
“光の剣”を求めてな。』
「ダークエルフ・ルミエールの剣ですね?
俺は、ここにない事は知っています。
しかし、彼らはそうではない。
彼らは、その剣こそがルミエールが復活する為に必要だと考えているんです。
その結果、世界のバランスが崩れようとしていたなど考えてもいないでしょう。」
イオリの声に反応するように溜息が聞こえた。
「奴らは、未だに愚かな道を進むと言うのだな・・・。
愛しい子・・・。
お前は絶対神の為に戦うのか?」
「・・・はい。
リュオン様が大切にしている世界です。
再び闇に包まれるのは本意ではありません。
何よりも、俺は家族とのんびり過ごしたいんです。
ルミエールが復活したら面倒でしょう?」
イオリの答えにダンジョンが揺れた。
いや、オリオンの笑い声に地面が揺れていた。
「ククククク。
そうか面倒か・・・そうだな。」
実に楽しそうに笑うオリオンにイオリは首を捻った。
「オリオンさん。
一体、何処にいるんです?」
「何を言っている。
目の前におるではないか。」
そう言うと、目の前の岩壁がゴゴゴゴゴッと音をたて動き出した。
アングリと口を開けて驚くイオリの目の前にとてつもなく大きな亀の顔があった。
「・・・亀?
オリオンさんは亀なんですか?」
目の前に現れた亀はゆっくりとイオリを見下ろすと頷いた。
「そう。
私こそがイルツクの地の守護者オリオン。
会えて嬉しいぞ。
イオリ。」
岩壁だと思っていた物がオリオンの体の一部と分かり、イオリは見上げて感嘆したのだった。
「何処に行こうと言うのだ?」
ナギと共にイオリの後を追いかけるディエゴ・ギロック騎士団長は戸惑っていた。
彼にとって“エルフの里の戦士”の動向こそが1番の懸念であったからだ。
「・・・呼ばれているんです。」
「呼ばれている?
・・・まさかとは思うが、最終の部屋の魔獣ではあるまいな?」
「その、まさかかと・・・。」
先導する従魔のゼンは確かな足取りで向かうべき所が分かっているだようだ。
イオリと共に、声のする方へ向かっていた。
「離れないでね。」
ディエゴ・ギロックは自身を見上げるエルフの子供に苦笑した。
「あぁ、分かっている。」
イオリはアウラに跨り隣を歩くニナの頭を撫でた。
ダンジョンの暗闇を照らすニナの杖に導かれてイオリ達は奥へと歩いて行く。
《この辺のはずだよね?》
「そうだね。
おかしいな。
行き止まりみたいだ。
入口もない・・・。」
自分を呼ぶ声を頼りに歩いてきたが、突如として現れた岩壁にイオリは首を捻った。
ニナやナギも岩壁をペタペタと触り確認している。
その時だった。
『よく来た。
絶対神リュオンの愛しい子よ。』
声が頭に直接降ってくるようだった。
「貴方は・・・?」
『私はイルツクの守護を任されているオリオン。
この地は私が絶対神より預かった地である。』
「リュオン様から預かった?」
イオリは、その声を聞き逃すまいと耳を傾けた。
『そう。私は絶対神との約束を守っている。』
「・・・約束?
このイルツクの地を守る事が?」
『そうだ。
ダークエルフが現れる遥か前の事だ。
かつて、荒廃した世界に絶対神は降り立った。
世界を蘇らせようとする絶対神に我らは魅了されたのだ。
絶対神が込めた力は世界中に散っていったが、生命の芽を維持する為に我らが力を込め維持しているのだ。』
ーーーーオリオンは語った。
かつて絶対神がいなかった世界は荒廃の一途を辿って行った。
森が枯れ、海が荒ぶり、川が干からびた。
自然に寄り添い生きていた生命が終わりを迎えようとしていたのだ。
人間もエルフも獣人も・・・。
オリオンを含め、力を持つ生命の源達は壊れゆく世界を見守る事しか出来なかった。
彼らは当時の信仰の象徴であり、人々に愛される事でエネルギーを漲らせる事で力を使う事ができた。
しかし、荒廃した世界で、最早、彼らに祈りを捧げる者など少なくなっていたのだ。
オリオン達が息絶え絶えに世界のバランスを支えていた時だった。
虹色の髪を靡かせ舞い降りた者がいた。
それがリュオンだった。
彼は各地に自身の力の源を与え、オリオン達に守らせたのだ。
緑が戻った森、生き物に潤いを与えた海、神々しく輝く川。
生き残った人間やエルフ、獣人が生き延びた事で歴史が紡がれてきたのだ。
そうしてリュオンは全ての生命の源として絶対神となったのだ。
『人々は我らの事など気にもせぬ。
それでも我らは良いのだ。
己が守らんとする地が汚される事が起きなければな。』
オリオンの声は苛立ちを孕んでいた。
『愚かなエルフ共がやってきたのだ。
“光の剣”を求めてな。』
「ダークエルフ・ルミエールの剣ですね?
俺は、ここにない事は知っています。
しかし、彼らはそうではない。
彼らは、その剣こそがルミエールが復活する為に必要だと考えているんです。
その結果、世界のバランスが崩れようとしていたなど考えてもいないでしょう。」
イオリの声に反応するように溜息が聞こえた。
「奴らは、未だに愚かな道を進むと言うのだな・・・。
愛しい子・・・。
お前は絶対神の為に戦うのか?」
「・・・はい。
リュオン様が大切にしている世界です。
再び闇に包まれるのは本意ではありません。
何よりも、俺は家族とのんびり過ごしたいんです。
ルミエールが復活したら面倒でしょう?」
イオリの答えにダンジョンが揺れた。
いや、オリオンの笑い声に地面が揺れていた。
「ククククク。
そうか面倒か・・・そうだな。」
実に楽しそうに笑うオリオンにイオリは首を捻った。
「オリオンさん。
一体、何処にいるんです?」
「何を言っている。
目の前におるではないか。」
そう言うと、目の前の岩壁がゴゴゴゴゴッと音をたて動き出した。
アングリと口を開けて驚くイオリの目の前にとてつもなく大きな亀の顔があった。
「・・・亀?
オリオンさんは亀なんですか?」
目の前に現れた亀はゆっくりとイオリを見下ろすと頷いた。
「そう。
私こそがイルツクの地の守護者オリオン。
会えて嬉しいぞ。
イオリ。」
岩壁だと思っていた物がオリオンの体の一部と分かり、イオリは見上げて感嘆したのだった。
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