続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜イルツク〜

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「おう!お客さん!寝れたかい!?」

 イオリ達が階段を降りると“蓮の傘”の主人が大きな声で手招きした。
 他の客もキョトンとしているが、お構いなしだ。

「オヤジさん。おはようございます。
 昨日はお気遣いありがとうございます。
 お腹空いたんです。
 何か食べさせて下さい。」

「おうよ!
 空いてる所に座ってくれ。
  パティが聞くとイオリは首を捻った。

「分かんない。
 初めて聞くね。
 分かります?」

 ヒューゴに聞いても肩をすくめるだけだった。

「俺もイルツクは初めてだからな。
 聞いた事ないな。」

「ソッティーレは小麦粉を水とかで溶かして薄く焼いた生地に具材をのせる食べ物だよ。」

 突然の声に振り向くとイオリ達はにっこりした。

「おはようございます。
 レンさん。」

「おはよう。
 みんな朝から元気だな。」

 レンは厨房に顔を出すとソッティーレの追加を頼むとイオリ達の隣のテーブルに座った。

「近くまで来たから来てみたよ。」

 そんなレンだが、本当はイオリ達を朝食に誘いに来たのだ。

「小麦粉を溶かして薄く焼くの?
 それってクレープじゃない?
 イオリも作ってくれるよ。」

 スコルの考察にイオリも頷いた。

「クレープは甘いのだけじゃなくて、食事にもなるからね。」

「クレープ!?やった!」

 パティは興奮して手を叩いているが、甘いクレープが好きなナギとニナは納得がいかない顔をしているのが微笑ましい。

「俺は腹が満たされれば、何でもいい。」

 そんな事を言うヒューゴの声が聞こえたのか、オヤジが皿をドンっと置いた。

「そんな事言ってんじゃねーよ。
 冒険者だろう?
 栄養満点のソッティーレを食っていけ!」

 大きな皿には確かにクレープのような薄い生地の上に大量の野菜やお肉に目玉焼きが乗っていた。

 ボリュームの朝食にパティは嬉しそうにイオリを見上げた。

「いただきます。」

「「「「「いただきます!」」」」」

 イオリ達の掛け声に驚きながらもレンはフォークを手にした。

「今の何?」

 レンが首を傾げているとナギが答えた。

「料理を作ってくれた人、小麦粉や野菜を作ってくれた人、お肉になって栄養をくれた魔獣や動物とかに感謝してるんだ。
 ご飯を食べる時には必ず言うんだよ。」

「へー。お行儀が良いな・・・。」

 ナギはニッコリすると目玉焼きの黄身を割った。

「お前達、これからどうするんだ?
 ギルドには午後から行くって聞いたけど?」

「教会に行ってから、街を見てまわろと思います。」

 イオリがソルの為にソッティーレを切り分けながら言うと、レンは頷いた。

「それなら案内するよ。
 ほら、あの時に約束しただろう。
 イルツクに来たら案内するって。」

 イオリは“天空のダンジョン”で別れた時の事を思い出しニッコリした。

「はい。お願いします。」

「おう。任せろ。
 教会だな。
 広場の大ベルの後にあるのが教会だ。
 トマ・マルタン神父は良い人だ。
 ダンジョンがあるからな。
 冒険者もよく教会に行くんだよ。
 朝から空いてるから空いてるうちに行こう。」

 予定が決まれば、イオリ達はソッティーレの攻略にかかった。
 薄い生地は軽い口当たりだが、乗っているおかずが多い。
 子供達は苦戦をしているが、それなりに満足そうだった。
 それでも・・・

「やっぱり、クレープはイオリの甘いのがいい。」

 そういうニナにナギとゼンが同意しているのだった。
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