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旅路〜王都〜
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「さぁ、おあがり。」
ミラ特製の紅茶を用意されると、イオリはお菓子を並べた。
それを、旅の疲れを癒すように子供達は我先にと楽しんだ。
イオリ達は、それぞれ“深淵のダンジョン”の報告をし、ギルマス・ハンターからはオンリールの冒険者ギルドの腐敗の話を聞いた。
「それじゃ、オンリール伯爵から正式に任命されてた人間がギルドマスターになっていたと言う事ですか?」
「そうだね。我々は、そう認識しているよ。
今回の件は、国王陛下もご存知の事だからね。
場合によってはオンリール伯爵の進退にも関わってくるかもしれませんよ。」
眉間に皺を寄せたハンターの横でミラは鼻を膨らませていた。
「ハンッ!
領主の事なんて、私はどうでも良いのさ。
問題は冒険者ギルドの信頼そのものが揺らいでしまうって事だよ。
オンリールから冒険者ギルドの撤退だってあり得るんだからね。
のうのうと見ているだけでは済まさないよ!」
冒険者の矜持が領主に振り回されている事を許せないのだ。
同意するように頷くアレックスやロジャーがいる中、ハンターはジッと真っ黒な青年に目を向けていた。
「何か気になる事でもあるんですか?
イオリ君?」
考え込んでいたイオリは、ハッと顔を上げた。
ハンターの目は、『さぁ、言え。隠すな。』と言っているようだった。
子供達もキョトンとしてイオリを見上げている。
「あ~。
気になる事があって・・・。」
「何ですか?」
「イルツクの領主アナスタシア・ギロック伯爵が言っていたんです。
アマンド・オンリール伯爵は穏やかで誠実な人だって。
歳をとっておられるようですけど、代替わりや執務代理を置いた話は聞いた事がないって。
ギルマスとの話を聞くと、随分と雑な領政をされているようで・・・同一人物に聞こえないんですけど?」
それには一緒に話を聞いていたヒューゴやアレックスも頷いた。
「確かに言っていたな。
無事であれば良いとまで言っていた。
ギロック伯爵も何かを感じ取っているんだろう。」
「そうだね。
若いとはいえ、領地を預かる立派な人だった。
ギロック伯爵が人の見る目がないとは言い難いな。」
ロジャーは「そんな事、言ってたっけ?」と首を傾げているが、3人のSランク冒険者が首を傾げている。
流石に無視するわけにもいかないと、ハンターはミラを説得し始めた。
「ミラ・・・少し、様子を見ましょう。
しかし、オンリールが今のままで良い訳はありません。
あちらに送ったギルド職員には報告と即時改革を指示します。」
「・・・分かったよ。
お前達が言うのなら、早計はやめよう。
でっ?
お前達はこれからどうするんだい?」
ミラが肩の力を緩めた事に安心し、イオリはニッコリとした。
「ギルマスにお願いがあるんです。
宰相のグレンさんに手紙を出してもらえませんか?
イオリが会いたいって言ってるって。
ポーレット公爵も王城に連絡を入れてくれてると思うんですけど、流石に直接行くのも気が引けますし、国王さんに連絡を取るのもちょっと・・・。」
イオリの言葉に、ハンターは頷いた。
「真っ当な考え方ですね。
宛名が宰相でも、驚くべき事ですが・・・。
分かりました。
ターナー侯爵宛に手紙を出しておきましょう。」
「ありがとうございます。
その間に、俺達は教会とグラトニー商会に顔を出してきます。」
続けて、アレックスが自分達は武器のメンテナンスとギルドにいると伝えれば、ハンターは満足そうに頷いた。
「君たちには話があります。
都合が良いです。
ねっ。ミラ。」
「そうだね。
依頼が終わってもフラフラしていると聞いてるよ。
ソフィアンナからも鍛え直してくれと言われているんだ。
時間を潰していきな。」
ギルマス、サブマスの笑顔に震えるアレックスとロジャーであった。
ミラ特製の紅茶を用意されると、イオリはお菓子を並べた。
それを、旅の疲れを癒すように子供達は我先にと楽しんだ。
イオリ達は、それぞれ“深淵のダンジョン”の報告をし、ギルマス・ハンターからはオンリールの冒険者ギルドの腐敗の話を聞いた。
「それじゃ、オンリール伯爵から正式に任命されてた人間がギルドマスターになっていたと言う事ですか?」
「そうだね。我々は、そう認識しているよ。
今回の件は、国王陛下もご存知の事だからね。
場合によってはオンリール伯爵の進退にも関わってくるかもしれませんよ。」
眉間に皺を寄せたハンターの横でミラは鼻を膨らませていた。
「ハンッ!
領主の事なんて、私はどうでも良いのさ。
問題は冒険者ギルドの信頼そのものが揺らいでしまうって事だよ。
オンリールから冒険者ギルドの撤退だってあり得るんだからね。
のうのうと見ているだけでは済まさないよ!」
冒険者の矜持が領主に振り回されている事を許せないのだ。
同意するように頷くアレックスやロジャーがいる中、ハンターはジッと真っ黒な青年に目を向けていた。
「何か気になる事でもあるんですか?
イオリ君?」
考え込んでいたイオリは、ハッと顔を上げた。
ハンターの目は、『さぁ、言え。隠すな。』と言っているようだった。
子供達もキョトンとしてイオリを見上げている。
「あ~。
気になる事があって・・・。」
「何ですか?」
「イルツクの領主アナスタシア・ギロック伯爵が言っていたんです。
アマンド・オンリール伯爵は穏やかで誠実な人だって。
歳をとっておられるようですけど、代替わりや執務代理を置いた話は聞いた事がないって。
ギルマスとの話を聞くと、随分と雑な領政をされているようで・・・同一人物に聞こえないんですけど?」
それには一緒に話を聞いていたヒューゴやアレックスも頷いた。
「確かに言っていたな。
無事であれば良いとまで言っていた。
ギロック伯爵も何かを感じ取っているんだろう。」
「そうだね。
若いとはいえ、領地を預かる立派な人だった。
ギロック伯爵が人の見る目がないとは言い難いな。」
ロジャーは「そんな事、言ってたっけ?」と首を傾げているが、3人のSランク冒険者が首を傾げている。
流石に無視するわけにもいかないと、ハンターはミラを説得し始めた。
「ミラ・・・少し、様子を見ましょう。
しかし、オンリールが今のままで良い訳はありません。
あちらに送ったギルド職員には報告と即時改革を指示します。」
「・・・分かったよ。
お前達が言うのなら、早計はやめよう。
でっ?
お前達はこれからどうするんだい?」
ミラが肩の力を緩めた事に安心し、イオリはニッコリとした。
「ギルマスにお願いがあるんです。
宰相のグレンさんに手紙を出してもらえませんか?
イオリが会いたいって言ってるって。
ポーレット公爵も王城に連絡を入れてくれてると思うんですけど、流石に直接行くのも気が引けますし、国王さんに連絡を取るのもちょっと・・・。」
イオリの言葉に、ハンターは頷いた。
「真っ当な考え方ですね。
宛名が宰相でも、驚くべき事ですが・・・。
分かりました。
ターナー侯爵宛に手紙を出しておきましょう。」
「ありがとうございます。
その間に、俺達は教会とグラトニー商会に顔を出してきます。」
続けて、アレックスが自分達は武器のメンテナンスとギルドにいると伝えれば、ハンターは満足そうに頷いた。
「君たちには話があります。
都合が良いです。
ねっ。ミラ。」
「そうだね。
依頼が終わってもフラフラしていると聞いてるよ。
ソフィアンナからも鍛え直してくれと言われているんだ。
時間を潰していきな。」
ギルマス、サブマスの笑顔に震えるアレックスとロジャーであった。
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