115 / 784
旅路〜王都〜
123
しおりを挟む
3年ぶりの冒険者ギルド本部は変わらずに広かった。
すでに仕事を終え、酒を片手に語らう者もいれば、依頼の達成を手にし誇らしげに受付に並ぶ者もいる。
イオリ達は正面に並ぶ受付をスルーして右側の小さな受付に歩み寄った。
「おばーちゃんいないね。」
パティが受付を覗き込むが、いつも座っているミラチュラの姿がない。
するとバタバタと走り寄ってきた男性職員が手招きする。
「そこはSランクの受付ですよ。
あちらの列に並んで下さい。」
イオリはギルドカードを差し出すと微笑んだ。
「知ってます。
サブマスのミラさんはいらっしゃらないんですか?」
職員は差し出されたギルドカードにギョッとした。
何故なら、イオリだけじゃなく、ヒューゴやアレックスにロジャーまでもがプラチナに輝くカードを取り出していたのだ。
「これは、失礼しました!
サブマスは現在ギルマスと会議中です。
ギルマスのお部屋にご案内します!」
カクカクと歩き出した職員を心配しながらイオリ達は後を追った。
_________
「ですからね。ミラの考えじゃ駄目なんですよ。」
「何が駄目なもんかい!
ここまでコケにされたんだ。
オンリールの街のギルドを壊滅させるしかないだろう!」
「ミラの怒りも理解しますよ。
上を据え変えるだけじゃ意味はありませんからね。
しかし、それでは住民達が困りますよ。」
「困るもへったくれもあるもんか!
早急に手を打たない方が問題だろうよ!」
「混乱するオンリールの街に追い打ちをかけるのですか?
構いませんが・・・今、動くと本質にたどり着けなくなりますよ。」
怒り浸透のミラは握っていたクッションをハンターにぶつけた。
甘んじて受け入れたハンターであったが、オンリールの問題そのものよりもミラの怒りがいつ終わるのか溜息を吐いた。
コンコンコン!
慌てたようなノックにミラは扉を睨みつけた。
「なんだい?」
「あの・・・Sランクの方々がいらっしゃいまして。
その・・・サブマスにお会いしたいと・・・。」
「ほう・・・Sランクの方々ね。
入って貰ってください。」
ハンターが面白がって声をかけると安堵したような声がして扉が開いた。
「おじいちゃん!おばあちゃん!久しぶり!」
薄紫のゆるふわの髪を躍らせ、狼の獣人の少女が飛び込んできた。
「おやまぁ。」
目を丸くするミラであったが、すぐに強張った顔を緩めた。
「パティ。ご挨拶はみんなでするんだよ。」
同じ髪色の少年が入ってくるなり、少女に呆れた顔をして頬を突っついた。
「ほら、みんな入ってご挨拶だよ。」
真っ黒な青年や妹を肩に乗せた男が穏やかな顔で入ってくると、ハンターとミラの2人はいよいよ嬉しそうに微笑んだ。
「なんだい。王都にまで来たのかい?
イルツクはご苦労だったね。」
「お久しぶりですね。イオリ君。
今回は世話になりましたね。」
「お久しぶりです。
お元気でしたか?
無事、イルツクからの依頼を達成してきましたよ。
今日は俺たちだけじゃないんです。」
イオリが振り返り手招きすると、アレックスとロジャーが顔を出した。
「お久しぶりです。」
「っす!」
するとハンターは含みのある微笑みをした。
「おやおや。」
比べてミラは目をギラつかせた。
「なんだい。
ダグスクの小僧共も一緒かい。
ソフィアンナがお前達の事を愚痴っていたよ。
ほら、おいで。
久しぶりだ。話をしよう。」
頬を引き攣らせたアレックスとロジャーを子供達はニヤニヤして見上げたのであった。
すでに仕事を終え、酒を片手に語らう者もいれば、依頼の達成を手にし誇らしげに受付に並ぶ者もいる。
イオリ達は正面に並ぶ受付をスルーして右側の小さな受付に歩み寄った。
「おばーちゃんいないね。」
パティが受付を覗き込むが、いつも座っているミラチュラの姿がない。
するとバタバタと走り寄ってきた男性職員が手招きする。
「そこはSランクの受付ですよ。
あちらの列に並んで下さい。」
イオリはギルドカードを差し出すと微笑んだ。
「知ってます。
サブマスのミラさんはいらっしゃらないんですか?」
職員は差し出されたギルドカードにギョッとした。
何故なら、イオリだけじゃなく、ヒューゴやアレックスにロジャーまでもがプラチナに輝くカードを取り出していたのだ。
「これは、失礼しました!
サブマスは現在ギルマスと会議中です。
ギルマスのお部屋にご案内します!」
カクカクと歩き出した職員を心配しながらイオリ達は後を追った。
_________
「ですからね。ミラの考えじゃ駄目なんですよ。」
「何が駄目なもんかい!
ここまでコケにされたんだ。
オンリールの街のギルドを壊滅させるしかないだろう!」
「ミラの怒りも理解しますよ。
上を据え変えるだけじゃ意味はありませんからね。
しかし、それでは住民達が困りますよ。」
「困るもへったくれもあるもんか!
早急に手を打たない方が問題だろうよ!」
「混乱するオンリールの街に追い打ちをかけるのですか?
構いませんが・・・今、動くと本質にたどり着けなくなりますよ。」
怒り浸透のミラは握っていたクッションをハンターにぶつけた。
甘んじて受け入れたハンターであったが、オンリールの問題そのものよりもミラの怒りがいつ終わるのか溜息を吐いた。
コンコンコン!
慌てたようなノックにミラは扉を睨みつけた。
「なんだい?」
「あの・・・Sランクの方々がいらっしゃいまして。
その・・・サブマスにお会いしたいと・・・。」
「ほう・・・Sランクの方々ね。
入って貰ってください。」
ハンターが面白がって声をかけると安堵したような声がして扉が開いた。
「おじいちゃん!おばあちゃん!久しぶり!」
薄紫のゆるふわの髪を躍らせ、狼の獣人の少女が飛び込んできた。
「おやまぁ。」
目を丸くするミラであったが、すぐに強張った顔を緩めた。
「パティ。ご挨拶はみんなでするんだよ。」
同じ髪色の少年が入ってくるなり、少女に呆れた顔をして頬を突っついた。
「ほら、みんな入ってご挨拶だよ。」
真っ黒な青年や妹を肩に乗せた男が穏やかな顔で入ってくると、ハンターとミラの2人はいよいよ嬉しそうに微笑んだ。
「なんだい。王都にまで来たのかい?
イルツクはご苦労だったね。」
「お久しぶりですね。イオリ君。
今回は世話になりましたね。」
「お久しぶりです。
お元気でしたか?
無事、イルツクからの依頼を達成してきましたよ。
今日は俺たちだけじゃないんです。」
イオリが振り返り手招きすると、アレックスとロジャーが顔を出した。
「お久しぶりです。」
「っす!」
するとハンターは含みのある微笑みをした。
「おやおや。」
比べてミラは目をギラつかせた。
「なんだい。
ダグスクの小僧共も一緒かい。
ソフィアンナがお前達の事を愚痴っていたよ。
ほら、おいで。
久しぶりだ。話をしよう。」
頬を引き攣らせたアレックスとロジャーを子供達はニヤニヤして見上げたのであった。
1,516
あなたにおすすめの小説
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ボクは転生者!塩だけの世界で料理&領地開拓!
あんり
ファンタジー
20歳で事故に遭った下門快斗は、目を覚ますとなんと塩だけの世界に転生していた!
そこで生まれたのは、前世の記憶を持ったカイト・ブラウン・マーシュ。
塩だけの世界に、少しずつ調味料を足して…沖縄風の料理を考えたり、仲間たちと領地を発展させたり、毎日が小さな冒険でいっぱい!
でも、5歳の誕生日には王都でびっくりするような出来事が待っている。
300年前の“稀人”との出会い、王太子妃のちょっと怖い陰謀、森の魔獣たちとの出会い…ドキドキも、笑いも、ちょっぴり不思議な奇跡も、ぜんぶ一緒に味わえる異世界ローファンタジー!
家族や周りの人達に愛されながら育っていくカイト。そんなカイトの周りには、家族を中心に愛が溢れ、笑いあり、ほっこりあり、ちょっとワクワクする“グルメ&ファンタジーライフ”が今、始まる!
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~
みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。
どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。
一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。
その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。
これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。
カクヨムにもサブタイ違いで載せています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる