続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜王都〜

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「おじいちゃん?」

 小さなニナが扉からヒョコッと顔を出すとアーベルは待っていたように破顔した。

「来たか!」

 アクセルにより案内されてきた双子やナギ、ニナを交互に抱き締めるとアーベルは実に機嫌が良くなったようだ。

「お久しぶりです。
 約束もないのにすみません。」

 イオリが顔を出せば、ロスは笑顔で首を横に振った。

「よく会いに来てくれました。
 ご覧の通り、暇を持て余した父が煩くてね。
 長旅でしたでしょう。
 どうぞ、座って下さい。」

 イオリがリロイに薦められたソファーに座ると、ヒューゴは背後に立った。

「何をしている?ヒューゴ。
 今のお前は奴隷ではなく、立派なSランク冒険者だ。
 私達にとっては客だよ。
 さぁ、座りなさい。」

「いや・・・しかし。
 俺はイオリを主人と決めていますから・・・。
 この様な席で同席するのは・・・。」

 ロスに薦められ戸惑うヒューゴをアーベルは溜息を吐いた。

「お前は、まだそんな事を言っているのか?
 お前の覚悟は分かっているから他の場所では、そうすれば良い。
 しかし、グラトニーでは許さんぞ。
 お前はイオリさんの家族であろう?
 家族は一緒にお茶をするものだ。
 なぁ、ニナ。」

「はい!」

 元気のいいニナの返事を聞き、困った顔のヒューゴにイオリは苦笑した。

「諦めましょう。ヒューゴさん。
 ほらっ、座って。」

「そうだよ。ここだよ。」

 パティは自分の隣をポンポンと叩くとヒューゴを見上げた。

「・・・分かりました。
 失礼します。」

 アーベル、ロスが微笑むと、リロイは満足そうに頷き、若き客人達のために紅茶を入れ始めた。

「改めまして。
 お久しぶりです。
 皆さんお元気そうで何よりです。」

「あぁ。本当にお久しぶりです。
 無事の姿を見れて安心しました。」

 イオリの挨拶に会頭であるロスが答えた。

 それから、暫くは3年の間のお互いの事を語り合った。

 イオリ達は魔の森で手に入れた、珍しい石や魔獣の部位などをお土産として渡し、商人達の好奇心を刺激した。
 魔の森に足を踏み入れる事のないグラトニーの面々にとって、イオリ達の話は実に貴重なものだった。

 それに比べてグラトニーからは商売の話や家族の現状を教えてもらった。
 アンティティラのアンナが今年の初めに妊娠したと聞いた時は、流石のイオリも驚いた。

「あの、じゃじゃ馬め。
 孫もいるというのに・・・。」

 文句を言いつつもアーベルの顔は娘を心配する父のそれだった。

「母子ともに健康である事を俺も祈ります。
 何か体に良いものでもあったかな?」

 考え込むイオリにロスは思い出したように、手を打った。

「そうだ。
 アクセル。
 この間、持ち込まれた品を持ってきてくれ。
 イオリさんに見せてみよう。」

 すかさず、部屋を出ていくアクセルを見送るとイオリは首を捻った。

「なんです?」

「他国からの商人が健康食だと持ち込んできた物なんですが、苦くてね。
 使い方がイマイチなんですよ。
 勿論、砂糖も入れてみましたよ。
 しかし、そうではないらしい。
 イオリさんなら、何か知ってるんじゃないかと思ってね。」

 ロスは説明では伊織も要領が得なかった。

「・・・俺も分からないかもしれませんよ?
 流石に、範囲外の事はなんとも・・・。」

「まぁ、試してみればいい。
 覚悟してくれ。
 実に苦いのだ。」

 眉に皺を寄せるアーベルに不安を感じていると、アクセルが戻ってきた。

「これです。」

 並べられた瓶を子供達が覗きこむように見ている中、イオリは瓶の蓋を開け匂いを嗅いだ。
 黒いペースト状の物が入った瓶に鼻を近づけてみる。

「・・・!
 チョコレートだ。」

 この出会いがアースガイルに変革をもたらすとは・・・。
 この時、誰も分からなかった。
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