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王都 〜自分本位の末の終焉〜
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魔法使いの男は騎士達の手で拘束された。
トリモチの扱いに困った騎士達であったが、魔力を抑える拘束具をつけると面倒だとばかりに魔法使いの男を布で包んでしまった。
ポーションを飲んだとはいえヒューゴに貫かれた時の傷が痛むのと、流した血が多かった為に体力が奪われているのだろう。
拘束された魔法使いは喚く事なく騎士に連行されていった。
「もっと戦闘になると思っていました。」
イオリの言葉にヒューゴは肩をすくめた。
「戦闘なんてない方が良い。
そうだろう?
ただ、この屋敷には護衛の騎士がいないのが気になるな。
もっと言えば、破落戸の集団でも用意しているのかと思っていた。」
イオリが仕掛けた煙の効果か、耐えられなくなった使用人が少しづつ逃げ出してきている。
その中に騎士と呼ばれるような人間がいない事にヒューゴも首を傾げていた。
その疑問にダグスクの領主であるオーウェンが仮説を立てた。
「名を並べる貴族達は守るべき領地がないので、騎士団を持っていないのも珍しくないんです。
いても精々護衛騎士くらいでしょうか。
特に、モンストル伯爵家は王都にいますから危険な事も少なく護衛騎士は限りなく少ないのではないでしょうか?
かの人間ならば人材がいれば、それこそ魔獣の子を攫う要因としている可能性もあります。
まぁ、本当の答えは本人しか持っていないでしょうが・・・。」
オーウェンが屋敷を睨みつけるのに釣られるようにイオリ達も屋敷を見つめた。
屋敷から逃げ出してきた使用人達は、さっきの魔法使い以上に目や喉を痛めているようだ。
前が見えずに這いずっている者もいた。
それをダグスクの騎士達が軒並み引っ立てていく。
「御本人は出てきてくれそうもありませんね。
もう、煙の効果も薄れているでしょう。
我々が中に入りましょう。」
イオリがそう言うと、ダグスクの騎士団長レイナードの指示で騎士が屋敷に雪崩れ込んでいった。
屋敷に残っていた使用人達が次々と騎士達に制圧されている。
「随分と華やかな家だな。」
一緒に屋敷に入ったクォーレル伯爵は玄関を見渡すと感嘆の声を上げた。
不思議だったのは、派手な装飾でゴテゴテに飾り付けられている訳ではない事だ。
爽やかな玄関を豪華を演出しているのは花飾りぐらいだろうか。
「あんなに悪趣味な事を考える人だから、屋敷の趣味も悪いのだとばかり思っていました。」
思わずイオリの感想が口に出ると、ヒューゴも同じように頷いた。
「どちらかというとオルガ様も好みそうだ。」
2人が戸惑っていると、クォーレル伯爵が溜息を吐いた。
「要は、この屋敷自体が社交の一部なのだろう。
人からの見え方、好まれ方。
この玄関に客が入った瞬間に、どう会話をするのか・・・。
こうやって、屋敷の玄関ですら住む人間の印象与えるのだ。
自分の領域に人を引きずり込む見本と言ったところだろう。
そんな連中は本当に自分が好きな事など隠し通すことなど造作もないのさ。
全くもって王都の貴族らしいやり方だ。」
クォーレル伯爵は忌み嫌うように玄関から続く階段を見上げた。
そこには正装に身を包み、一同を見下ろす男がいた。
「ようこそ。私の屋敷へ。
私がシャムル・モンストル。
モンストル伯爵です。
今宵、訪れてくれた皆様を歓迎いたします。」
背後の窓に浮かび上がる月がシャムル・モンストルを美しく演出していた。
※※※※※ ※※※※※
いつも『続々・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂きまして有難うございます。
『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の書籍化第4弾についてお知らせさせて頂きます。
2025年10月16日(木)にて各書店に発送されます。
ただし書店や地域によって数日後ろに倒れる事があります。
それに伴いましてアルファポリス様に投稿している『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の[228話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。ご了承下さい。
引き続き『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』、その続編とお楽しみ下さい。
宜しくお願い致します。
ぽん
トリモチの扱いに困った騎士達であったが、魔力を抑える拘束具をつけると面倒だとばかりに魔法使いの男を布で包んでしまった。
ポーションを飲んだとはいえヒューゴに貫かれた時の傷が痛むのと、流した血が多かった為に体力が奪われているのだろう。
拘束された魔法使いは喚く事なく騎士に連行されていった。
「もっと戦闘になると思っていました。」
イオリの言葉にヒューゴは肩をすくめた。
「戦闘なんてない方が良い。
そうだろう?
ただ、この屋敷には護衛の騎士がいないのが気になるな。
もっと言えば、破落戸の集団でも用意しているのかと思っていた。」
イオリが仕掛けた煙の効果か、耐えられなくなった使用人が少しづつ逃げ出してきている。
その中に騎士と呼ばれるような人間がいない事にヒューゴも首を傾げていた。
その疑問にダグスクの領主であるオーウェンが仮説を立てた。
「名を並べる貴族達は守るべき領地がないので、騎士団を持っていないのも珍しくないんです。
いても精々護衛騎士くらいでしょうか。
特に、モンストル伯爵家は王都にいますから危険な事も少なく護衛騎士は限りなく少ないのではないでしょうか?
かの人間ならば人材がいれば、それこそ魔獣の子を攫う要因としている可能性もあります。
まぁ、本当の答えは本人しか持っていないでしょうが・・・。」
オーウェンが屋敷を睨みつけるのに釣られるようにイオリ達も屋敷を見つめた。
屋敷から逃げ出してきた使用人達は、さっきの魔法使い以上に目や喉を痛めているようだ。
前が見えずに這いずっている者もいた。
それをダグスクの騎士達が軒並み引っ立てていく。
「御本人は出てきてくれそうもありませんね。
もう、煙の効果も薄れているでしょう。
我々が中に入りましょう。」
イオリがそう言うと、ダグスクの騎士団長レイナードの指示で騎士が屋敷に雪崩れ込んでいった。
屋敷に残っていた使用人達が次々と騎士達に制圧されている。
「随分と華やかな家だな。」
一緒に屋敷に入ったクォーレル伯爵は玄関を見渡すと感嘆の声を上げた。
不思議だったのは、派手な装飾でゴテゴテに飾り付けられている訳ではない事だ。
爽やかな玄関を豪華を演出しているのは花飾りぐらいだろうか。
「あんなに悪趣味な事を考える人だから、屋敷の趣味も悪いのだとばかり思っていました。」
思わずイオリの感想が口に出ると、ヒューゴも同じように頷いた。
「どちらかというとオルガ様も好みそうだ。」
2人が戸惑っていると、クォーレル伯爵が溜息を吐いた。
「要は、この屋敷自体が社交の一部なのだろう。
人からの見え方、好まれ方。
この玄関に客が入った瞬間に、どう会話をするのか・・・。
こうやって、屋敷の玄関ですら住む人間の印象与えるのだ。
自分の領域に人を引きずり込む見本と言ったところだろう。
そんな連中は本当に自分が好きな事など隠し通すことなど造作もないのさ。
全くもって王都の貴族らしいやり方だ。」
クォーレル伯爵は忌み嫌うように玄関から続く階段を見上げた。
そこには正装に身を包み、一同を見下ろす男がいた。
「ようこそ。私の屋敷へ。
私がシャムル・モンストル。
モンストル伯爵です。
今宵、訪れてくれた皆様を歓迎いたします。」
背後の窓に浮かび上がる月がシャムル・モンストルを美しく演出していた。
※※※※※ ※※※※※
いつも『続々・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂きまして有難うございます。
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2025年10月16日(木)にて各書店に発送されます。
ただし書店や地域によって数日後ろに倒れる事があります。
それに伴いましてアルファポリス様に投稿している『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の[228話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。ご了承下さい。
引き続き『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』、その続編とお楽しみ下さい。
宜しくお願い致します。
ぽん
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