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王都 〜王子達の婚礼〜
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王家の婚姻の儀だというのに、参加するのは極僅かな人数だった。
王子達の父である国王と王妃。
嫁いでくる令嬢達の両親と兄弟達。
そして、近しい親戚といったところだろう。
一族などですら遠縁であれば王城で開催される晩餐会からの出席となる。
その中でも、ポーレット公爵家は今回は見届け人という立ち位置だとテオルドの従者のノアが言っていた。
そのノアを含め、従者達は壁沿いにズラリと並んでいる。
見覚えのない顔の人達は、ポートマン公爵家やリード伯爵家の従者達なのだろう。
肩骨逞しい方がポートマン公爵家の従者や騎士で、スラリとした賢そうなのがリード伯爵家の従者や騎士なのだろうと予測しイオリはクスっと笑った。
「どうした?」
小声で問いかけてくるヒューゴに、今の憶測を口にすれば、ヒューゴも可笑しそうに「クククッ」と笑った。
「騎士や従者は、その家の顔でもあるからな。
どうしたって、家の特色が濃い人材が反映されるものだよ。
恐らく、イオリの想像があっている。
特に、ポートマン公爵の従者は、その辺の騎士よりも強いと噂で聞いた事があるぞ。」
「へぇー。」
イオリが関心していると、唐突にドバーン!!と大きな音を立てて教会の扉が開かれた。
皆が「アレ?」と振り返ると、そこには仁王立ちの大男が立っていた。
「あっ・・・。」
誰もが、短い声を出した。
「あー!ヒル将軍だぁ。」
パティの無邪気な声が響き渡るまでの数秒、大人達は思考すら止まり固まっていた。
教会に堂々とやって来たのは、ポーレットの軍のトップである将軍ザックス・ヒルだった。
「何でお前が此処にいるのだ?」
頭を抱えるテオルドの言葉など無視したように当の本人はズカズカと入ってくると、ドカッと座った。
「お前は他の貴族達と同じように晩餐会からの出席と伝えておいただろう?」
「聞いとらん。」
「はぁ?」
「聞いとらんもん。」
「・・・もんって。」
困ったテオルドは、ザックス・ヒルと共に来て身を縮こませている男に説明を求める視線を送った。
それは、退官したオーブリーの後にザックス・ヒルの副官となった男だった。
騎士としても実務もこなす男の優秀さを見込んでオーブリーが指名したのだが、今だにザックス・ヒルには振り回されているらしい。
オーブリーも副官の時にはザックス・ヒルの自由で豪胆な行動に迷惑をしていたらしいが、彼女にはブリザードに吹き荒れる冷たい一睨みというワザがある。
それは、後釜に収まった男には伝授される事はなかったのだろう。
ほぼ諦めたような顔で副官は報告をした。
副官は、王家から伝達をしっかりと伝えようとした。
将軍は晩餐会からの出席である。
それを聞いたザックス・ヒルは、それ以上聞く耳を持たなくなった。
オーブリーの婚姻の儀式を楽しみにしていた将軍が晩餐会からの出席と聞いて騒ぐだろうと分かった上で報告をギリギリまで伸ばしたのも悪手だった。
それでも、王家の婚姻の儀式に直接乗り込むという暴挙にでるとは、まさか副官には想像する事すらなかったのだ。
「はぁ・・・。
分かった。苦労をかける。
外も騒がしくなってきた。
国王夫婦も参られるのだろう。
コイツは私に任せ、君は我が家の従者達と共に並んでいなさい。」
「ハッ!」
副官は解放されたと安堵したように壁際に向かって行った。
出席を認められたと思ったのだろう。
満足そうなザックス・ヒルは「フフン♪」と鼻歌を歌っている。
しかし、その後頭部をテオルドが殴る様を皆が見る事になるのだった。
いつも『続々・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂きまして有難うございます。
『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の書籍化第4弾が各書店に発送されております。
ただし書店や地域によって数日後ろに倒れる事があります。
それに伴いましてアルファポリス様に投稿している『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の[228話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。ご了承下さい。
引き続き『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』、その続編とお楽しみ下さい。
そちらの方でショートストーリーも投稿しています。是非、ご覧ください。
宜しくお願い致します。
ぽん
王子達の父である国王と王妃。
嫁いでくる令嬢達の両親と兄弟達。
そして、近しい親戚といったところだろう。
一族などですら遠縁であれば王城で開催される晩餐会からの出席となる。
その中でも、ポーレット公爵家は今回は見届け人という立ち位置だとテオルドの従者のノアが言っていた。
そのノアを含め、従者達は壁沿いにズラリと並んでいる。
見覚えのない顔の人達は、ポートマン公爵家やリード伯爵家の従者達なのだろう。
肩骨逞しい方がポートマン公爵家の従者や騎士で、スラリとした賢そうなのがリード伯爵家の従者や騎士なのだろうと予測しイオリはクスっと笑った。
「どうした?」
小声で問いかけてくるヒューゴに、今の憶測を口にすれば、ヒューゴも可笑しそうに「クククッ」と笑った。
「騎士や従者は、その家の顔でもあるからな。
どうしたって、家の特色が濃い人材が反映されるものだよ。
恐らく、イオリの想像があっている。
特に、ポートマン公爵の従者は、その辺の騎士よりも強いと噂で聞いた事があるぞ。」
「へぇー。」
イオリが関心していると、唐突にドバーン!!と大きな音を立てて教会の扉が開かれた。
皆が「アレ?」と振り返ると、そこには仁王立ちの大男が立っていた。
「あっ・・・。」
誰もが、短い声を出した。
「あー!ヒル将軍だぁ。」
パティの無邪気な声が響き渡るまでの数秒、大人達は思考すら止まり固まっていた。
教会に堂々とやって来たのは、ポーレットの軍のトップである将軍ザックス・ヒルだった。
「何でお前が此処にいるのだ?」
頭を抱えるテオルドの言葉など無視したように当の本人はズカズカと入ってくると、ドカッと座った。
「お前は他の貴族達と同じように晩餐会からの出席と伝えておいただろう?」
「聞いとらん。」
「はぁ?」
「聞いとらんもん。」
「・・・もんって。」
困ったテオルドは、ザックス・ヒルと共に来て身を縮こませている男に説明を求める視線を送った。
それは、退官したオーブリーの後にザックス・ヒルの副官となった男だった。
騎士としても実務もこなす男の優秀さを見込んでオーブリーが指名したのだが、今だにザックス・ヒルには振り回されているらしい。
オーブリーも副官の時にはザックス・ヒルの自由で豪胆な行動に迷惑をしていたらしいが、彼女にはブリザードに吹き荒れる冷たい一睨みというワザがある。
それは、後釜に収まった男には伝授される事はなかったのだろう。
ほぼ諦めたような顔で副官は報告をした。
副官は、王家から伝達をしっかりと伝えようとした。
将軍は晩餐会からの出席である。
それを聞いたザックス・ヒルは、それ以上聞く耳を持たなくなった。
オーブリーの婚姻の儀式を楽しみにしていた将軍が晩餐会からの出席と聞いて騒ぐだろうと分かった上で報告をギリギリまで伸ばしたのも悪手だった。
それでも、王家の婚姻の儀式に直接乗り込むという暴挙にでるとは、まさか副官には想像する事すらなかったのだ。
「はぁ・・・。
分かった。苦労をかける。
外も騒がしくなってきた。
国王夫婦も参られるのだろう。
コイツは私に任せ、君は我が家の従者達と共に並んでいなさい。」
「ハッ!」
副官は解放されたと安堵したように壁際に向かって行った。
出席を認められたと思ったのだろう。
満足そうなザックス・ヒルは「フフン♪」と鼻歌を歌っている。
しかし、その後頭部をテオルドが殴る様を皆が見る事になるのだった。
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宜しくお願い致します。
ぽん
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