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王城 〜予感〜
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さぁ、旅の準備だ!
と、イオリもすぐに浮かれる訳にはいかなかった。
子供達に旅の報告をした日の昼下がり、イオリは王城のいつも来ないエリアに案内されていた。
国の政を支える文官達が仕事をするという西棟を含む広い範囲の場所だ。
財務部やら外交部やら沢山の種類の部署があるらしいが、なにやら小難しくて有難い情報も途中からイオリの頭には入っていない。
「この文官達のトップが宰相であるグレン・ターナー侯爵という事になる。
その反対が騎士や軍部を預かるザックス・ヒル将軍というところかな。
まぁ、宰相の仕事の幅の広さを考えればターナー侯爵の仕事量は文官のトップだけと言うには多すぎるがな。」
腕には真っ白な毛糸玉のゼンを抱えたイオリと共に、文官達の仕事エリアを歩くのはポーレット公爵家の嫡男ニコライという、何とも目立つ様相だ。
すれ違う人達がチラチラと視線を送ってくるのは、上下真っ黒な軽装に小さな白い狼を抱えているイオリが珍しいと言うだけではなく、後ろにエドガーとフランという侍従ペアを引き連れたニコライにも興味惹かれているからだろう。
ポーレット公爵家は王弟テオルドが当主を務めているだけでも特別なのに、妻のオルガは社交会で引っ張りだこだし、息子達2人も容姿端麗な事から貴族令嬢にも大人気だった。
社交会や茶会のみならず、王城ならば何処でも女性達の羨望と期待の視線は尽きない。
嫡男ニコライは婚約したと発表されているが、どんな関係でも良しとする気骨ある女性が、今だに挑戦して来る事があるらしい。
穏やかな笑顔で断るニコライであったが、言葉自体は中々に冷たいとエドガーとフランから聞いた事がある。
ニコライへの関心が高いのは女性だけではない。
近年のポーレットの発展は王都の商業界や王城の文官達の中でも注目の的であり、単純に興味ある者や、卑しくも利益にあやかりたい者の視線が交差する事も多々だ。
滅多に王都に来ないポーレット公爵家の人間が文官達が働く西棟エリアに来る事など貴重な事だった。
本当ならば突撃して話し掛けに行きたいのだが、後方で睨みを聞かせるエドガーとフランが、それを許さない。
先程も何も知らぬふりをして、イオリとニコライの前に転がり込んできた女性がいたが、驚くイオリと違ってニコライは上手に避けていた。
慌てて振り返ったイオリは、背中を押して誘導してくれるエドガーがウンザリした顔をしているのを見て、こんな事も日常なのかと唖然としたくらいだ。
後で聞けば、その女性は何処ぞの男爵令嬢らしく王城に働きに来ているらしい。
じゃあ仕事しろよ。とも思うが、王城で働く全ての女性達は結婚相手を探しに来ている側面もあり、全ての行動に否定はできないらしい。
それでも、既婚者や婚約者のいる者に突撃するのは良しとされていないから、目撃者から話を聞いた上司からお小言を貰うだろうと怒りの血管が浮き出ていたフランが話てくれた。
王城怖い・・・。
自分は離宮・シグマと王家の私室だけ行ければ良いやと、誰もが味わう事などない何とも贅沢な事を思ったイオリであった。
「よし。着いたぞ。
この部屋だ。
既にアーベル達は到着しているそうだ。」
ニコライの合図に部屋の前に立っていた騎士が頷き、ノックして扉を開けた。
※※※※※ ※※※※※
書籍化第4巻宜しくお願いします!
コミカライズも第2巻が書籍化されました!是非、ご覧下さい。
と、イオリもすぐに浮かれる訳にはいかなかった。
子供達に旅の報告をした日の昼下がり、イオリは王城のいつも来ないエリアに案内されていた。
国の政を支える文官達が仕事をするという西棟を含む広い範囲の場所だ。
財務部やら外交部やら沢山の種類の部署があるらしいが、なにやら小難しくて有難い情報も途中からイオリの頭には入っていない。
「この文官達のトップが宰相であるグレン・ターナー侯爵という事になる。
その反対が騎士や軍部を預かるザックス・ヒル将軍というところかな。
まぁ、宰相の仕事の幅の広さを考えればターナー侯爵の仕事量は文官のトップだけと言うには多すぎるがな。」
腕には真っ白な毛糸玉のゼンを抱えたイオリと共に、文官達の仕事エリアを歩くのはポーレット公爵家の嫡男ニコライという、何とも目立つ様相だ。
すれ違う人達がチラチラと視線を送ってくるのは、上下真っ黒な軽装に小さな白い狼を抱えているイオリが珍しいと言うだけではなく、後ろにエドガーとフランという侍従ペアを引き連れたニコライにも興味惹かれているからだろう。
ポーレット公爵家は王弟テオルドが当主を務めているだけでも特別なのに、妻のオルガは社交会で引っ張りだこだし、息子達2人も容姿端麗な事から貴族令嬢にも大人気だった。
社交会や茶会のみならず、王城ならば何処でも女性達の羨望と期待の視線は尽きない。
嫡男ニコライは婚約したと発表されているが、どんな関係でも良しとする気骨ある女性が、今だに挑戦して来る事があるらしい。
穏やかな笑顔で断るニコライであったが、言葉自体は中々に冷たいとエドガーとフランから聞いた事がある。
ニコライへの関心が高いのは女性だけではない。
近年のポーレットの発展は王都の商業界や王城の文官達の中でも注目の的であり、単純に興味ある者や、卑しくも利益にあやかりたい者の視線が交差する事も多々だ。
滅多に王都に来ないポーレット公爵家の人間が文官達が働く西棟エリアに来る事など貴重な事だった。
本当ならば突撃して話し掛けに行きたいのだが、後方で睨みを聞かせるエドガーとフランが、それを許さない。
先程も何も知らぬふりをして、イオリとニコライの前に転がり込んできた女性がいたが、驚くイオリと違ってニコライは上手に避けていた。
慌てて振り返ったイオリは、背中を押して誘導してくれるエドガーがウンザリした顔をしているのを見て、こんな事も日常なのかと唖然としたくらいだ。
後で聞けば、その女性は何処ぞの男爵令嬢らしく王城に働きに来ているらしい。
じゃあ仕事しろよ。とも思うが、王城で働く全ての女性達は結婚相手を探しに来ている側面もあり、全ての行動に否定はできないらしい。
それでも、既婚者や婚約者のいる者に突撃するのは良しとされていないから、目撃者から話を聞いた上司からお小言を貰うだろうと怒りの血管が浮き出ていたフランが話てくれた。
王城怖い・・・。
自分は離宮・シグマと王家の私室だけ行ければ良いやと、誰もが味わう事などない何とも贅沢な事を思ったイオリであった。
「よし。着いたぞ。
この部屋だ。
既にアーベル達は到着しているそうだ。」
ニコライの合図に部屋の前に立っていた騎士が頷き、ノックして扉を開けた。
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