80 / 378
イオリと薬師の交友録
78
しおりを挟む
ルゥリィとレーピオンという2人の薬師の力を得たイオリは、保湿剤の実験に夢中になり“日暮れの暖炉”を訪れていたヒューゴ達が心配した通り時間を忘れていた。
強い匂いの苦手な双子を気遣い、迎えに来たのはヒューゴだった。
「こちらです。」
「有難うございます。」
職員に案内された薬師工房の1室を覗き込めばイオリが真剣な顔で小鉢を見つめてる。
その表情を見れば、のめり込んでいるのが見てとれるが腹ペコの猛獣をこれ以上待たせるのも可哀想だ。
ヒューゴは致し方なしと声を掛ける。
「イオリ。そろそろ時間だぞ。」
「あれ?ヒューゴさん。どうしたんですか?」
ヒューゴに声を掛けられたイオリはキョトンとしている。
「どうしたって・・・お前。
“日暮れの暖炉”で集合っていうの忘れてるだろう?」
「あっ!!しまった!
もう、そんな時間ですか?」
「とっくに、そんな時間だ。
子供達が待ちくたびれてるぞ。」
慌てふためくイオリは側に置いてあった斜め掛け鞄を引っ捕まえた。
「ルゥリィさん。レーピオンさん。
すみません!今日は帰ります!!」
ガバッと頭を下げるイオリにルゥリィは苦笑した。
「はいよ。
気をつけて帰るといい。
ここだけの話、私も時間を忘れて家族に迷惑をかける事があるんだ。
他人事じゃないよ。」
最後にコソッと言ったルゥリィの言葉に、イオリは既視感を感じてクスッとした。
レーピオンは、この状況下だろうが、どうでも良いのか、自身の作業から目を離す事なく、手だけヒラヒラと振っている。
「こっちの実験は任せておくれ。
ちゃんと形にしておくから。」
「有難う御座います。
また、来ます!」
最終的にはヒューゴの太い腕に首を雁字搦めにされて強制的に退場させられたイオリに、他の薬師達も柔かに手を振っていた。
「それで?
上手くいってんのか?」
何だかんだ言ってもヒューゴも風呂好きな部類だ。
流石に冒険者として、過酷な場所でまで風呂に入りたいと騒ぐ程でないが、魔法のテントの快適さを味わってしまった人間の1人としては石鹸だか保湿剤だかにも興味があった。
引きずられながらもイオリは満足そうに頷いた。
「今日だけでも割と進みましたよ。
石鹸とか香油とか、元々あるものを改良していく予定です。
ルゥリィさんとレーピオンさんが実に熱心で、俺の言った拙い説明も、ご自身の豊富な知識で補ってくれるんですよ。」
「お前と気が合いそうだな。」
「はい。
話していて楽しいですよ。」
目の前の事に熱中する様子は変わらぬイオリにヒューゴも口元を緩ました。
「良かったな。だがっ。」
ヒューゴはイオリの首を絞めていた腕の力を強めた。
「時間を忘れるな!
飯は食え!
しっかり休め!
俺は母親かっ!」
叱るのをやめないヒューゴだった。
強い匂いの苦手な双子を気遣い、迎えに来たのはヒューゴだった。
「こちらです。」
「有難うございます。」
職員に案内された薬師工房の1室を覗き込めばイオリが真剣な顔で小鉢を見つめてる。
その表情を見れば、のめり込んでいるのが見てとれるが腹ペコの猛獣をこれ以上待たせるのも可哀想だ。
ヒューゴは致し方なしと声を掛ける。
「イオリ。そろそろ時間だぞ。」
「あれ?ヒューゴさん。どうしたんですか?」
ヒューゴに声を掛けられたイオリはキョトンとしている。
「どうしたって・・・お前。
“日暮れの暖炉”で集合っていうの忘れてるだろう?」
「あっ!!しまった!
もう、そんな時間ですか?」
「とっくに、そんな時間だ。
子供達が待ちくたびれてるぞ。」
慌てふためくイオリは側に置いてあった斜め掛け鞄を引っ捕まえた。
「ルゥリィさん。レーピオンさん。
すみません!今日は帰ります!!」
ガバッと頭を下げるイオリにルゥリィは苦笑した。
「はいよ。
気をつけて帰るといい。
ここだけの話、私も時間を忘れて家族に迷惑をかける事があるんだ。
他人事じゃないよ。」
最後にコソッと言ったルゥリィの言葉に、イオリは既視感を感じてクスッとした。
レーピオンは、この状況下だろうが、どうでも良いのか、自身の作業から目を離す事なく、手だけヒラヒラと振っている。
「こっちの実験は任せておくれ。
ちゃんと形にしておくから。」
「有難う御座います。
また、来ます!」
最終的にはヒューゴの太い腕に首を雁字搦めにされて強制的に退場させられたイオリに、他の薬師達も柔かに手を振っていた。
「それで?
上手くいってんのか?」
何だかんだ言ってもヒューゴも風呂好きな部類だ。
流石に冒険者として、過酷な場所でまで風呂に入りたいと騒ぐ程でないが、魔法のテントの快適さを味わってしまった人間の1人としては石鹸だか保湿剤だかにも興味があった。
引きずられながらもイオリは満足そうに頷いた。
「今日だけでも割と進みましたよ。
石鹸とか香油とか、元々あるものを改良していく予定です。
ルゥリィさんとレーピオンさんが実に熱心で、俺の言った拙い説明も、ご自身の豊富な知識で補ってくれるんですよ。」
「お前と気が合いそうだな。」
「はい。
話していて楽しいですよ。」
目の前の事に熱中する様子は変わらぬイオリにヒューゴも口元を緩ました。
「良かったな。だがっ。」
ヒューゴはイオリの首を絞めていた腕の力を強めた。
「時間を忘れるな!
飯は食え!
しっかり休め!
俺は母親かっ!」
叱るのをやめないヒューゴだった。
2,485
あなたにおすすめの小説
【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました
山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。
王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。
レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。
3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。
将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ!
「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」
ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている?
婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる
日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」
冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。
一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。
「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」
そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。
これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。
7/25男性向けHOTランキング1位
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!? 今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!
黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。
そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※
貧乏神と呼ばれて虐げられていた私でしたが、お屋敷を追い出されたあとは幼馴染のお兄様に溺愛されています
柚木ゆず
恋愛
「シャーリィっ、なにもかもお前のせいだ! この貧乏神め!!」
私には生まれつき周りの金運を下げてしまう体質があるとされ、とても裕福だったフェルティール子爵家の総資産を3分の1にしてしまった元凶と言われ続けました。
その体質にお父様達が気付いた8歳の時から――10年前から私の日常は一変し、物置部屋が自室となって社交界にも出してもらえず……。ついには今日、一切の悪影響がなく家族の縁を切れるタイミングになるや、私はお屋敷から追い出されてしまいました。
ですが、そんな私に――
「大丈夫、何も心配はいらない。俺と一緒に暮らそう」
ワズリエア子爵家の、ノラン様。大好きな幼馴染のお兄様が、手を差し伸べてくださったのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる